文=三上太 写真=Getty Images

最大16点のリードも、終盤に押し切られて一歩及ばず

リオ五輪予選ラウンド第4戦は、国際強化試合で対戦したオーストラリアが相手。世界ランキング2位のオーストラリアに対して、世界ランキング16位の日本は序盤からトランジション・バスケットで互角以上の展開を見せた。第4ピリオド残り8分30秒にはこの試合最大の16点差にまでリードを広げたが、そこからオーストラリアの高さを生かしたバスケットに反撃され、逆転負けを喫した。悔しい敗戦となったオーストラリア戦の日本選手を独自に評価する。

渡嘉敷来夢
オーストラリアのセンター、203センチのエリザベス・キャンベージに対してよく守り、ボールを奪うと一転して日本の先頭を走った。そのスピードにキャンベージはついていけず、彼女のみならず、オーストラリア代表にもフラストレーションを溜めさせた。
ハーフコートオフェンスでも、ピック&ダイブやドライブ、ミドルシュートを確実に沈め、前半だけで17得点6リバウンドをマーク。エースの本領を発揮した。後半はやや失速し、6得点2リバウンドに終わってしまったが、ディフェンスで貢献。前半までとはいかないまでも、後半の体力的、精神的に苦しい場面でシュートを決めきる力を求めたい。

本川紗奈生
敗れはしたが、今日のゲームの裏MVPと言っても過言ではない働きをした。ようやく本来の持ち味であるドライブを連発。たとえブロックされても、またシュートが入らなくても、その姿勢を貫いたところが日本の勢いにつながった。 相手にゴールアタックを意識させることで渡嘉敷とのピック&ダイブや、速攻からノールックパスで栗原の3ポイントシュートを演出。またWNBAで2度のMVPを獲得したことのあるペニー・テイラーからオフェンスファウルを取るなどディフェンス面でも足を動かし続けた。

栗原三佳
相変わらず厳しいマークを受け、ブロックされる場面もあったが、それでも自らの役割である3ポイントシュートを8本中6本決めたのはさすがの一言。速攻でも自らのシュートポイントまで走り切ったことが、シュートチャンスにつながった。第1ピリオドに見せたドライブからのフローター気味のシュートも好判断だった。 また渡嘉敷と並ぶリバウンド8本を、すべてディフェンスリバウンドで稼いでいる点も高評価。ニュートラルのボールへの意識が高く、日本の速攻の起点として欠かせない働きだった。

町田瑠唯
チームメートの持ち味を引き出しながら、数少ないチャンスの中でドライブを決めるなど、11分の出場で6ポイント8アシストは、ポイントガードのバックアップとして十分な働き。またこの試合の日本の最大リード16点差にしたドライブから、すぐに渡嘉敷とのダブルチームで相手のターンオーバーを誘ったディフェンスなど、守備の面でもチームに貢献した。

プレータイムは決して長くないが、コートに入るとすぐさまメリハリのあるオフェンスで存在感を発揮。大会を通じて良いプレーを続けている。

吉田亜沙美
状況をよく判断し、渡嘉敷、間宮、高田のインサイド陣の得点シーンを引き出すなど、両チームトップの11アシストを記録した。また最初の得点となるドライブを始め、渡嘉敷との2対2から決めたジャンプシュート、2点差に詰める3ポイントシュートと、最後まで積極的な攻撃姿勢を見せた。第2ピリオドにオーストラリアのアンスポーツマンライクファウルを引き出したのも、吉田のスティールが起点だった。 ただし5つのターンオーバーはマイナスポイント。格上に勝つためにはチーム全体でチャレンジしつつ、ポイントガードの良い判断と、より精度の高いプレイが求められる。

髙田真希
ディフェンスにおいては体を張り続け、タイミング良くダブルチームに行くなど、チームに貢献。オフェンスでも得意のミドルシュートに加え、203センチのキャンベージを引っ張り出してからのドライブなど、積極的かつ正確な判断で10得点を挙げた。またミスマッチの渡嘉敷に正確なアシストを送るなど、シックスマンとしての役割を十分に果たした。

冷静に状況を判断しつつ、積極性も保ってプレーした髙田。得点だけでなく攻守にチームを支えた。

間宮佑圭
序盤こそ吉田とのコンビプレイや速攻で幸先のよいスタートを切ったが、ミドルシュートを決め切れず、さらにファウルもかさみ苦しんだ。後半に入ってもシュートタッチが戻らず、ベンチで戦況を見つめる時間が長かった。

近藤楓
トルコ戦ほどの活躍は見せられなかったが、それでもコートに入ると積極的に3ポイントシュートを狙った点は評価できる。ただ約10分の出場で、打ったシュートがその1本だけというのは今後の課題か。それでもドライブから、高田のリフトに合わせてアシストを送るなど、勢いの中で冷静さを保っていた。

長岡萌映子
出場は第2ピリオドの3分だけに留まったため、評価できる点は少ない。唯一の評価点は、ペニー・テイラーに対してしっかりとディフェンスし、そのシュートを狂わせたところ。短いプレイタイムでも何か一つでも爪痕を残すことで、今後につなげたい。


最終的にはオーストラリアの高さに押し切られたが、足を使った速い展開と組織的なディフェンス、3ポイントシュート、そして渡嘉敷来夢の能力の高さをうまく使い分ける日本のバスケットが世界で通用することを証明できた。
それだけに終盤、相手のチェンジングディフェンスに対応できず、得点が止まったことが悔やまれる。40分というゲームタイムをどう使っていくか。常に国際舞台の高いレベルで戦ってきたオーストラリアとの差は、そのあたりかもしれない。
決勝トーナメント進出は決めたが、オーストラリア戦で感じた手応えと反省点を次のフランス戦で生かしてもらいたい。日本のバスケットを40分間貫くことができれば、予選ラウンド3位通過を勝ち取る可能性は十分にある。

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