
日本経済大は新人インカレで東海大や白鷗大を撃破して初優勝を成し遂げた。地方大学として初となる快挙の中心にいた児玉ジュニアとボディアン・ブーバカー・ベノイット(通称ブノワ)に大会を振り返ってもらった。
「リスペクトを持つことはお金よりも大事」
──高校時代の児玉選手は福岡第一でプレータイムを得るのに苦労して、良いところをあまり出せませんでした。そこから新人インカレMVP受賞への転機は何だったのですか?
児玉 高校の時は少しずつ上手くなっている実感はありましたが、メンタルが全然ダメでした。国体で片峯聡太コーチからも「良いプレーヤーになれる」とずっと言ってもらってキャプテンも任されたのですが、試合に出ると緊張もあるしネガティブ思考に支配されてしまって、シュートも入らないしドリブルもつけなくなってしまいました。でも、それでメンタルに興味を持つようになって、図書室でメンタルの本を5冊ぐらい借りていろいろ読んで、少しずつ変わっていきました。
──具体的にはどんな考え方をするようになったのですか?
児玉 僕は緊張がすごく悪いものだと思っていて、「緊張したくない」と思っていました。でも緊張とプレーはまた別で、練習で身に着けたことは緊張していてもできます。それを本で知った時に吹っ切れたというか、緊張していても「自分のプレーをすれば大丈夫」と思えるようになって、そこから試合で足が動くようになり、シュートも入るようになりました。
──ブノワ選手も去年はケガがあって、柳ヶ浦での高校バスケをあまり良い形では終えられませんでした。関東の大学に行く留学生が多く、ブノワ選手にもオファーはあったであろう中で、日本経済大へ行くことを決めた理由は何ですか?
ブノワ 関東と関西の大学からもオファーはありましたが、アキさん(片桐章光コーチ)は直接高校に来て「ブノワが欲しい」と言ってくれました。他の大学とは電話で話すだけで、会いに来てくれたのはアキさんだけでした。直接会いに来ることは、セネガルではリスペクトを意味します。関東の大学は強いからと周囲の人には勧められましたが、僕はリスペクトを持つことはお金よりも大事だと両親から教わっています。

「できなかったことの方が心に残っています」
──今回の新人インカレ優勝で達成感は得られましたか?
児玉 優勝できてMVPも取らせてもらいましたが、達成感は全然ありません。全部できたわけじゃないし、僕の中ではできなかったことの方が心に残っています。今はそれを映像を見ながら整理しているところですが、できなかったことを一つずつなくしていきたいです。試合中に前のめりになって周囲が見えなくなったり、ディフェンスでも簡単にファウルをしてしまったりギャンブルになったり、そういう状況での判断力を向上させたいです。あとはフィジカルなど基礎の部分ももっと上げていきたいですし、やることがいっぱいあります。
──具体的にどんなやり方で改善していきますか?
児玉 自分だけでは分からないことばかりなので、アキさんに質問したり、アキさんに言われたことを自分なりに考えて修正したり、学生コーチの手が空いているようなら聞きにいったりしています。
──ブノワ選手はどうでしょうか?
ブノワ 僕はまだ身体が弱いし、新人インカレでは3ポイントシュートがあまり入らなかった。ディフェンスでも日本人とか留学生とか関係なく守れるようになりたいです。1対1でも2対2でも、逆サイドのブロックも全部やれるように。そうなればBリーグでもプレーできると思っています。でも、一番の目標は日本一になることです。今年の4月にアキさんも「日本一になりたい」と言っていました。新人インカレでは日本一になれましたが、次はインカレで日本一になりたいです。でもそれは僕だけではできないので、全員で勝ち取りたい。そのためにもまずはウエイトトレーニングを頑張って、足をもっと動かせるようになりたいです。
──児玉選手と同じように、やることがいっぱいありますね。
ブノワ 僕のスタイルは他の留学生と違って、センターだけじゃなくフォワードもできます。ポイントガードの代わりにボールプッシュもできます。関東には良いプレーヤーがいます。それでも自分が一番オールラウンドなプレーヤーだと思っているので、もっと上手くなるために毎日、全体練習の前にハンドリング練習をして、その後に外角のシューティング、そしてポストプレーと、すべての練習を行なっています。

「一日一日しっかりと練習をして日本一を目指す」
──1学年上にはジョンソン選手(オヌワジェ・ニニオリシェ・ジョンソン・メレ)がいます。お互いに切磋琢磨している中で、彼に負けないという気持ちはありますか?
ブノワ 一緒に戦う先輩なので……。
児玉 ジョンソンを超えるんじゃなくて、お前はジョンソンとはタイプが違うよ。お前はお前、ジョンソンはジョンソンで、お互いに良いところを引き出していくんだろ?
ブノワ そうですね! 僕はジョンソンに比べて小さいと言われることがありますが、コートに立ったらそんなことは考えません。どんな相手でも守れるし、リバウンドでも負けない。新人インカレの準決勝と決勝では足が攣っていましたが、それでも戦い続けることができました。シュートもできるしパスもできる。ボールを持てば相手は下がるので、そこで1対1もできます。周りを助けるようなプレーもできます。そういった自分らしいプレーを心掛けてチームをサポートしながら、同時にチームを引っ張っていくような存在になれたら、インカレ優勝も夢ではないです。
──自分の理想像から考えて、今の自分の力は何%ぐらいですか?
児玉 30%ぐらいですね。
ブノワ 僕は10%。理想にはまだまだ遠いです。
──つまり、まだまだ伸びしろだらけですね。最後に、新人インカレ優勝で日本経済大に興味を持ったバスケファンにメッセージをお願いします。
児玉 日本経済大はディフェンスのチームで、練習からディフェンスを重視しています。チームディフェンスも個人のディフェンスも、チームみんなでカバーして戦っています。日本経済大はサイズがありませんが、東海大のように才能ある選手やシュートが入る選手、大きい選手をみんなで守る姿を見てほしいです。
ブノワ これからは追われる立場になり、どの相手も僕たちを対策してくると思います。それに負けないように、自分たちは一日一日しっかりと練習をして日本一を目指すので、応援してください。