文=小永吉陽子 写真提供=日本バスケットボール協会

39点差の大敗から徐々に点差を縮めて手応えをつかんだオーストラリアとの3連戦が終わり、日本は次なるステップアップのために欧州に乗り込んだ。12人の五輪出場メンバーを決める欧州遠征の強化ポイントを探る。

欧州の強豪に2連勝! 各国の強化体制はいかに?

チームの組織力を高めるため、そして、リオ行きの12名をかけたメンバー選考のため、ヨーロッパで熾烈な争いが繰り広げられている。5月22日から6月6日まで、フランスとベラルーシが戦いの地だ。

遠征の前半はフランスにて、フランスとセルビアと対戦。後半はベラルーシに移動してベラルーシ、トルコ、ニュージーランドと対戦する。フランス、ベラルーシ、トルコ、ニュージーランドは6月13日に開幕する「オリンピック世界最終予選」(OQT)の出場国であり、セルビアはヨーロッパ女王としてすでに五輪切符をつかんでいる。実戦経験を積むには申し分のない強豪国ばかりだ。

フランス遠征での日本は、ロンドン五輪準優勝のフランスと、ヨーロッパ女王のセルビアから連勝を収めた。国名だけ聞けば、この勝利は快挙と言っていい。


5月26日の試合結果
日本代表 70 67 フランス代表
5月27日の試合結果
日本代表 87 62 セルビア代表

フランスには70-67で逆転勝利を飾った。栗原三佳が5本の3ポイントシュートを要所で決め、インサイドの間宮佑圭が19点、髙田真希が18点と奮闘し、内外角が機能した。ヨーロッパ女王のセルビアに対しては、後半に走力が爆発。全員出場で15本もの3ポイントを50%(30本中)の高確率で決めて87-62と突き放した。日本はどこが成長しているのだろうか──。その前に両国の強化状況を説明したい。

ヨーロッパは4月中旬にユーロカップが終了している。その優勝チームである「ブールジュ」に数名の代表選手が所属しているフランス代表は、5月中旬から強化を開始。5月26日の日本戦が初の強化試合だった(先日、来日したオーストラリア代表にもブールジュ所属の選手が1名おり、ユーロカップ直後のため来日しなかった)。また主力センターのサンドリン・グルダも調整中のため日本戦には出場していない。

オリンピックの出場権を持っているセルビアは、本番までに約2カ月の強化というスケジュールを組んでいるため、フランスに来る直前にチームの集合されたばかり。ヨーロッパ選手権MVPのアナ・ダボビッチと得点源のソーニャ・ペトロピッチはWNBA参戦中のため不在で、アナ・ダボビッチの姉で妹と2ガードを組むミリカ・ダボビッチもまだ代表に合流していない。日本も渡嘉敷来夢がいないじゃないか――という声が聞こえそうだが、どちらの国も始動間もない時期のコンディションであることは理解しておきたい。

だからと言って、日本の勝利が色褪せるわけではない。とくに、フランス相手に逆転勝利を飾ったことは、強豪相手に勝ち方を覚える意味でも大きな収穫だ。生命線となる3ポイントを決めるためにはインサイドとアウトサイドの連携が必要であり、その流れを作るためには脚力を生かした攻防が効くことを改めて確信した。日本は日本の強化プランにそって、着実に前進しているのだ。

フランス戦でチームハイの19点、6リバウンドを記録し勝利に貢献したセンターの間宮。

日本は諸外国と同じ準備では足りない

欧州遠征で見えてくることは、諸外国と日本の準備の違いだ。ここで各国の強化体制について触れておきたい。

遡ること8年前。オリンピックの直前に世界最終予選(OQT)が採用されたこの年は、OQTで出場権を得たチームが、本番の舞台で軒並みスタミナ切れという現象を起こしていた。2カ月間で国際大会を2つこなすことは心身ともにハードであり、ピーキングコントロールは非常に難しい。こうした教訓があるからなのか、4年前のOQTではヨーロッパ勢はどこか余力を残しながら戦っていた。顕著な例がフランスだ。

ロンドン五輪で銀メダルに輝いた時のフランスには勢いがあり、その姿は6月のOQTとはまるで別人だった。OQTでのフランスは主力選手のプレータイムを調整しながらオリンピックの出場権を手に入れていたのだ。ロンドン五輪で5位にランクしたトルコも同様だった。

こうした戦い方はフランスもトルコも戦力が充実しているからこそできる成功例であるが、激戦地帯のヨーロッパは常に切磋琢磨することで、対応力を磨いている。

例えば、初のヨーロッパ女王に君臨したセルビアにしても、昨年のヨーロッパ選手権では3敗(7勝)しながら勝負どころの試合に勝ち、チャンピオンにのぼり詰めた。高さやスピードが武器の国、やられたらやり返すタフネスさがある国、修正力がある国――欧州勢はこうした様々なタイプのチームとやり合って修羅場の経験を積む。またクラブチームの所属も各国にちらばっているため、選手個々の適応力もある。

対して日本は渡嘉敷来夢がWNBAで奮闘しているが、国内での競争が非常に少ない。日本が国際大会で勝ち切れない差はそこにある。本来ならば、国内リーグから見直さなければならないが、アンダーカテゴリーを含む代表強化で力を付けていくしかないのが現状だ。

日本は今回、過去に苦しんだOQTには出場せずに、4カ月間という準備期間を得た。早い時期にオーストラリアと試合を組む計画を立てたのは「本番では高さへの対抗が当たり前になるように」(内海知秀ヘッドコーチ)との意図からだ。同じことを代表歴6年目の間宮佑圭も言う。「欧米選手のうまい体の使い方や、当たりの強さに早く慣れることが必要で、その戦い方を体に染み込ませるまでやらないといけません」

日本は国内での経験値が不足している分、チーム形成に時間を要することを全員が理解している。相手がどんな状況であろうと、戦い慣れすることが欧州遠征での目的だ。

試合勘も選手層の強化も必要。やることだらけの欧州遠征

チームは成長している。ただし、本番の舞台ではフランスもセルビアもギアを一段階上げてくるし、研究されることは、過去の数々の敗戦が物語っている。次の段階として対応策を練ることが長年の課題だ。

そうした状況を打開するためにも、今回は戦術的な対策として、2次合宿にてWNBAでヘッドコーチ歴のあるコーリー・ゲインズを招聘し、カッティングを多くした連動性あるオフェンスの構築に取り組んでいる。

また欧州遠征前からはディフェンス強化が本格的に始まっている。オーストラリア戦ではローテーションが乱れて大量失点を許してしまったため、この遠征ではゾーンディフェンスを試しながら、組織的に守ることがテーマだ。さらには、12人のロスター入りをかけてベンチメンバーのアピールも必要となる。「慣れから当たり前へ」と「体に染み込ませるまで」を急ピッチに進める日本のチャレンジは止まる暇がない。

フランス、ベラルーシ遠征から帰国後、リオ五輪に出場する12名が決定する。

リオ五輪の登録メンバー12人を決めるサバイバルレースの最中ではあるが、チームの雰囲気は良さそうだ。