吉井裕鷹

ホーバスHC「良いエネルギーを出してくれました」

男子バスケットボール日本代表は86日、『FIBAアジアカップ2025』初戦でシリアと対戦。前半にリードを許す苦しいスタートとなったが、後半は攻守で圧倒して99-68で大勝した。

日本は立ち上がり、堅いディフェンスで先手を取る。しかし、第2クォーターに入るとシリアのエース、ケロン・デシールズに個人技から連続得点を許し、流れを変えられる。さらに不用意なターンオーバーを連発、ボールムーブに欠けた単調なシュートを打っては外し、トランジションからイージーシュートで失点を重ねるという最も避けたい展開となり、前半を9点ビハインドで終えた。

それでも日本は第3クォーターの立ち上がり、怒涛の10-0のランで試合の主導権を取り戻す。守ってはシリアの得点源デシールズを徹底マークで封じ込め、手詰まりとなった相手のパスミスを誘発。第2クォーターと真逆の展開で一気に逆転すると、そのまま地力の差を見せつけて最後は圧勝した。

トム・ホーバスヘッドコーチは、「後半、選手たちは落ち着いてプレーできました」と振り返り、「吉井が出だしから良いエネルギーを出してくれました」と称えた。

指揮官が言及したように、第3クォーターの流れを引き寄せる原動力となったのが吉井裕鷹だ。後半最初のポゼッションで3ポイントシュートを決めたと思いきや、スティールを奪って速攻からレイアップ、再び長距離砲を沈めて8連続得点をマーク。攻守に渡るアグレッシブなプレーで勢いをもたらした。

吉井裕鷹

「後半のバスケを常に続けないといけない」

この試合、吉井は269秒のプレータイムで3ポイントシュート3本中3本成功の17得点。さらに5アシスト4リバウンド2スティールと大活躍だった。

「前半はひどいターンオーバーなどからイージーなレイアップを決められすぎていたので、悪い流れを切りたいなと思いました。後半の最初にうまくいったのがよかったです」

このように吉井は試合を振り返った。

自身の活躍については、普段から意識している「良い状況が来るまで適当なシュートやパスはしない」ということを徹底。チャンスでしっかり決め切る質の高いプレーでチームを苦境から救えたことについては「前半はそもそも出場時間が少なく、あまりシュートのタイミングがなかったです。後半に関しての手応えは多少あります。初戦でチームに火をつけられたことは良かったです」と、安堵した様子だった。

日本に限らず、大会初日は強豪国が予想外に苦戦するケースが目立っている。吉井も言い訳にするつもりはないが、初戦ならではの難しさがあったと明かす。

「ニュージーランドがイラクに後半途中まで苦戦。ヨルダンがオーバータイムでインドに勝ち、中国もサウジアラビアに接戦と初戦の難しさはあったと思います。世界ランキングが低い相手のほうがハングリーにやってきて、そこでパンチをくらってしまうところがありました」

ただ、日本は最終的には地力通りの力を発揮し、30点以上点差を開けて勝利したことは評価すべきポイントだ。そして「前半のような感じではダメです。後半のバスケを常に続けないといけません」と語る吉井を始め、誰1人として内容に満足はしていない。

明日の第2戦はグループリーグ最大の難敵であるイラン。シリア戦で得た教訓と自信をしっかりと生かし、勝って決勝トーナメント進出を決めたい。そのためには、イランの特徴であるフィジカルに負けない吉井の力強いプレーが必要だ。