テリー・ロジアー

アンドリュー・ウィギンズもモチベーションを得られず

テリー・ロジアーはヒートの構想から外れてしまった。2024年1月のトレードで、ヒートは高給取りのベテランとなったカイル・ラウリーを放出してロジアーを獲得。2027年の1巡目指名権をホーネッツに譲渡しており、この時点ではロジアーに大きな期待を寄せていた。

指名権こそ手放したが、サラリーの総額を下げた上でペイントアタックの弱さという課題を解消できるロジアーは素晴らしい補強のはずだった。しかし、ボールを持って自由にプレーできる環境を失ったことで、ホーネッツでのシーズン前半はキャリアハイの23.2だったロジアーの平均得点は16.4へと急降下。キャリア10年目の昨シーズン、彼はさらに存在感を失い、先発さえも外れて得点は10.6まで落ち込んだ。オフェンスで持ち味を発揮できないとディフェンスの弱さが必要以上に浮き彫りにされるヒートにおいて、彼は浮上のきっかけをつかめずにいる。

また、コート外でのトラブルにも巻き込まれた。ラプターズのジョンタイ・ポーターがオンラインベッティングに絡んでNBAのレギュレーション違反を犯したのと同じ疑いで、ロジアーも捜査対象となっていた。ホーネッツ時代に出場した試合で、彼の個人スタッツに対するオンラインベッティングで『通常では考えられない賭け金の動き』があったためだが、2023年時点で彼への疑いは晴れ、FBIの捜査はいまだ続いているが彼は捜査対象から外れている。

スポーツベッティングの不正関与容疑が、コート上のパフォーマンスにマイナスの影響を与えたのだとしても、ロジアーは自分自身の力でコート上での信頼回復を成し遂げなければならない。ただ、彼の立場は不安定なままだ。

ヒートは、ロジアーと1巡目指名権を譲渡してマーカス・スマートを獲得するウィザーズとのトレードを拒否したという。ロジアーを獲得するために1巡目指名権を放出し、ロジアーを引き取らせるためにまた1巡目指名権を手離すことはできない、という判断だろう。

1年前の時点でロジアーはタイラー・ヒーローと組むコンボガードの一人と見なされていたが、今はそのポジションにノーマン・パウエルが入り、ガードの3番手はデイビオン・ミッチェル、さらに1巡目20位指名のカスパラス・ヤクチョニスも加わって、ロジアーの居場所はなくなっている。今のヒートにとってロジアーは整理対象となってしまった。

アンドリュー・ウィギンズも昨シーズン途中にジミー・バトラーのトレードの対価としてヒートにやって来たが、優勝の功労者として扱われたウォリアーズを離れた後でモチベーションを見いだせていない様子で、本来のパフォーマンスを発揮できずにいる。新シーズンの年俸はウィギンズが2800万ドル(約42億円)、ロジアーは2660万ドル(約40億円)。バム・アデバヨとヒーローに続いてチームで3番目と4番目の年俸を得る2人が絶不調のままでは、ヒートが浮上することはない。

『バトラー問題』に振り回される混乱期は過ぎ去ったが、競争力が維持できていないのがヒートの現状だ。2026年には自前の1巡目指名権を保持しており、来年オフにはキャップスペースが大きく空く。そう簡単にタンクを選択するチームではないが、ここから何らかのテコ入れを行うか、あるいは『再建の1年』になるのか。ヒートは岐路に立っている。