先輩と後輩、ライバルだった過去を経て、日の丸の下に集結
「メダルへの挑戦」をスローガンにリオで戦うバスケットボール女子日本代表は、ベラルーシとブラジルを破る好スタートを切った。スピードに乗った選手たちが連動し、オフェンスでもディフェンスでも足を使って積極的にプレーする「走るバスケ」を掲げ、世界の強豪を相手に堂々たる戦いを演じている。
日本代表の12人は、今大会に至るまでに様々なところで敵として対戦したり、共闘したりしてきた。その「歴史」を読み解くことで、AKATSUKI FIVEをより知ることができるはずだ。
日本代表の主力を輩出するのがJX-ENEOSサンフラワーズだ。スターターの3人を含む4選手(吉田、間宮、渡嘉敷、宮澤)がサンフラワーズの選手であり、内海知秀ヘッドコーチはこのチームの出身。さらにはコーチとして内海監督を補佐するトム・ホーバスはサンフラワーズの現ヘッドコーチだ。
WNBAに挑戦している渡嘉敷が、大会直前の合流でも何とかチームにフィットできているのは、サンフラワーズでもホットラインを組む司令塔の吉田、ツインタワーを形成する間宮と息が合っているからだ。当然ながら、サンフラワーズ所属の4選手の連携は出来上がっており、日本代表のバスケの根幹と言うべき部分を形成している。
内海は2012年に代表ヘッドコーチに就任する前、11年間に渡りJXの指揮を執っていた。吉田は2006年の入団から内海の指導を受けており、その関係はもう10年になる。
4年前、ロンドン五輪のOQT(世界最終予選)に敗れた後、吉田が立ち直る力となったのは、「選手である以上、前に進み続けてほしい」という内海の言葉だった。吉田はこれを「Never Stop」と置き換え、座右の銘にしている。
内海はリオ五輪へと至る挑戦のスタートとなる昨年春のチーム編成で、絶対的な存在だった大神雄子から吉田への世代交代を行った。キャプテンになった吉田はチームを引っ張り、アジアを勝ち抜いてリオ五輪の舞台に立っている。
先日、インターハイ5連覇と全国60勝を成し遂げた桜花学園。髙田、渡嘉敷、三好はそのOGだ。3人ともに2歳違いで、髙田が3年生の時に渡嘉敷が1年、渡嘉敷が3年の時に三好が1年と、桜花学園の伝統を受け継いでいる。名指導者である井上眞一へのリスペクトは3者に共通するところ。徹底的にファンダメンタルにこだわる桜花学園のスタイルを、3人は体現している。
髙田、間宮、渡嘉敷。それぞれ1歳違いの3人は、高校時代にしのぎを削ったライバルだった。時は桜花学園と東京成徳の『二強時代』。髙田と渡嘉敷は桜花学園の、間宮は東京成徳のエースとして、当時は互いを強く意識しながら、タイトルを懸けた対戦を繰り返した。名門の看板を背負って切磋琢磨した3人は代表チームのインサイド陣を組み、リオでの大きな武器となっている。
桜花学園と東京成徳の二強時代の後にやって来たのが札幌山の手の一強時代だった。本川と町田の代で高校3冠を達成。長岡も2年生ポイントゲッターとして活躍した。
札幌山の手は前年のウインターカップ3位で注目されたが、本川と町田が3年生になった2010年は質の高いバスケでハイスコアをたたき出し、3冠を達成。インターハイ優勝、ウインターカップ優勝、そして3冠と「北海道初」の連続であり、このチームの印象は北海道のバスケファンに強く残っている。
同級生の3人。本川と町田が卒業した翌年、長岡がエースとなった札幌山の手に挑んだのが、宮澤の金沢総合高校と三好の桜花学園高校だった。3冠最初のインターハイで札幌山の手は準決勝で敗退。宮澤が引っ張る金沢総合が優勝した。その後、長岡が高校3年生で初選出された代表との掛け持ちに苦労しながらも、札幌山の手を2冠に導いている。
三好は無冠に終わったが、渡嘉敷卒業後、2年間優勝から遠ざかった名門を牽引し、現在の5連覇に至るチームの基礎を築いた。
現在の代表チームでただ2人の関西人。栗原は大阪出身、近藤は愛媛出身。2歳違いの2人は大阪人間科学大学からトヨタ自動車アンテロープスと同じ道を進んでいる。日本代表の生命線である3ポイントシュートを、トヨタ自動車のシューター2人が託されている。
28歳の2人、吉田と王が現在の若い日本代表チームの最年長。その下の髙田、栗原は平成元年生まれ。つまり吉田と王だけが「昭和」生まれとなる。ミニバス時代から全国的に注目されていた吉田と、スカウトされて岐阜女子高校に入学した時点では全くの無名だった王のキャリアは対照的だが、スタンスは違えど最年長として代表チームをまとめている。
野球界の「ひまわりと月見草」と言えば長嶋茂雄と野村克也。これをAKATSUKI FIVEに当てはめるなら、前述の吉田と王もいるが、やはり1991年生まれの同級生、渡嘉敷と近藤だろう。
渡嘉敷は高校時代からビッグタイトルを総なめにし、サンフラワーズでも圧倒的な実力を見せ、WNBAにも挑戦するなど華やかなキャリアを歩む。一方の近藤はチームとしても個人としてもビッグタイトルとは無縁でありながら、地道な努力を重ねて五輪メンバー入りを果たし、リオの舞台でも評価を高めている。奇しくも近藤の座右の銘は、新居浜商高で近藤を育てた恩師、窪田夕子(元シャンソン化粧品)の教えである「雑草魂」だ。
[指揮官の全選手紹介]リオ五輪で世界に挑むバスケットボール女子日本代表12名
リオ五輪を戦う女子バスケ日本代表12選手、今に至る『関係性』を探る
vol.1 吉田亜沙美 NEVER STOP――キャプテンは進み続ける
vol.2 間宮佑圭 史上最強のインサイド陣を支える『我慢』の女!
vol.3 本川紗奈生 勝ち気な切り込み隊長、故障を乗り越えリオに挑む
vol.4 髙田真希 最強のシックスマン、リオで輝け!
vol.5 栗原三佳 修行の先につかんだリオでの『爽快シュート』
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