リラードの1億1300万ドルの契約を5年分割で支払う
現地7月1日、バックスは驚くべき決定を次々と下した。7シーズン在籍した優勝メンバーのブルック・ロペスがフリーエージェントとなり、クリッパーズへの移籍を決めたことが、そのきっかけになった。
ボビー・ポーティス、トーリアン・プリンス、ケビン・ポーターJr.とギャリー・トレント・Jr.の残留を決めた後、フリーエージェントのギャリー・ハリスとジェリコ・シムズと契約。パット・カナートンと2巡目指名権2つを譲渡し、ホーネッツからヴァシリエ・ミチッチを獲得するトレードを行った。
これだけなら数は多くてもインパクトには欠けるが、バックスはマイルズ・ターナーと4年1億700万ドル(約160億円)の契約を結び、さらにはデイミアン・リラードの解雇という驚くべき行動に出た。
ターナーは2015年のNBAドラフトで1巡目11位指名を受けて以来、ペイサーズ一筋で10年のキャリアを送ってきた。今シーズンに25年ぶりのNBAファイナル進出を果たしたペイサーズにおいて、エースはタイリース・ハリバートンでも、勝てない時期を支えてきたターナーが精神的支柱だった。ファンからも絶大な支持を受けるターナーは、今回の躍進について「僕たちの結束の強さが、このチームを特別なものにしているんだ」と語っており、新契約を得て残留するものだと思われていた。
しかし、NBAファイナルの『GAME7』でハリバートンがアキレス腱断裂の大ケガを負い、新シーズンに優勝争いのできる可能性が下がったことで、ペイサーズは20年ぶりにラグジュアリータックスを払うことを渋り、ターナーへの提示は4年9500万ドル(約140億円)に留まったと『Indy Star』は報じている。そしてバックスは、それを上回るオファーを提示して、ターナーを心変わりさせた。
バックスもサラリーキャップに余裕はなく、このオファーを出せるはずはないのだが、左アキレス腱断裂で長期欠場となるデイミアン・リラードを解雇するという手段で、ターナー獲得を実現させた。
リラードはプレーオフ初戦のペイサーズ戦が始まってすぐに、アキレス腱断裂の大ケガを負った。3月末に発覚した右ふくらはぎの深部静脈血栓症から回復し、急ピッチで復帰した矢先の悲劇だった。彼とバックスの契約は1億1300万ドル(約170億円)を残しており、それを2030年までの5年分割で支払うことで彼を解雇し、さらにカナートンを放出することでサラリーキャップを空けた。
どのチームも数百万ドルの余裕を作るのに四苦八苦している中、バックスは今後5シーズン、毎年2200万ドル(約33億円)を負担してまで、ロペスの穴をターナーで埋めることを決めた。これはヤニス・アデトクンボから「競争力のないチームであれば去る」とのプレッシャーを掛けられてきた結果だ。アデトクンボのモチベーションを維持するには、ロペスに代わるタレントが必要だった。