シェイ・ギルジャス・アレクサンダー

「ああいった姿を見るのはつらくて、心が痛んだ」

サンダーはNBAファイナルでの『GAME7』を制して、46年ぶり、オクラホマシティに移転した後では初のNBA優勝を決めた。優勝会見でのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーに、チームメートと一緒の表彰式で見せていた弾ける笑顔はなかったが、いつものクールな表情に穏やかさが混じり、戦いが終わったことを感じさせた。

「正直なところ、実感が沸かない。子供の頃に夢見たことを僕は実現させた。そのことを本当にうれしく思っている。そして、ここまで来るのを助けてくれた、僕の味方でいてくれたすべての人に感謝したい。そういった人たちなしでは成し遂げられなかった」

29得点12アシストで勝利の立役者となり、ファイナルMVPにも選出された。シーズンMVPと得点王も含めて個人の栄誉を総ナメした形だが、彼はやはり個人タイトルに無頓着だった。「僕らは勝利だけを優先してきた。開幕戦から、45試合目でも105試合目でも、ずっとチームが勝つことを優先してきた。優勝できたのはそのおかげだと思う」と彼は言う。

『GAME7』は開始7分でペイサーズのエース、タイリース・ハリバートンがケガでコートを去る予想外の展開となった。「ああいった姿を見るのはつらくて、心が痛んだ。人生最大の試合を戦っている時にあんなことが起きるのは、不運だしフェアじゃないけど、競争は時としてフェアではないものだ。僕はただ残念で、彼に『大丈夫か』と声を掛けた。大丈夫ではなかったけど、彼の将来は輝かしいものだと思うし、回復を心から祈っている」

ハリバートンの離脱はペイサーズに大きな痛手となったが、それでサンダーが簡単に勝てたわけではない。ペイサーズは混乱しながらも闘志を高め、今まで以上にチームが結束してサンダーに対抗した。前半を終えてペイサーズが1点リード。シェイは16得点を挙げていたもののフィールドゴール12本中5本成功(41.7%)とシュートタッチが良いわけではなく、チームも同じくシュートに当たりが来なかった。

だが、サンダーは第3クォーターを34-20と圧倒する。後半開始3分半、マイルズ・ターナーに3ポイントシュートを決められた直後にシェイが決め返し、そこからチェット・ホルムグレン、ジェイレン・ウィリアムズ、再びホルムグレンと3ポイントシュートを立て続けに決めたが、これはすべてシェイのアシストによるもの。ここで得たリードを守り切ってサンダーは勝利することになる。

シェイは試合を通じて29得点、フィールドゴールは27本中8本成功(29.6%)と効率が良かったとは言い難いが、12アシストでターンオーバーはわずか1と、自らのドライブでダブルチームを引き寄せてのパスで違いを作り出した。

「第6戦ではアシストよりターンオーバーが多かった」とシェイは言う(2アシスト、ターンオーバー8を記録)。「それは僕らの勝利の勝ち筋じゃない。僕がスペースを使うにしても、相手が僕にスペースを使わせない時にはオープンになるチームメートを使うにしても、勝つために正しい判断をしようとした。それを十分にやり遂げられたと思う」

すべてを勝ち取った実感が沸くのは、まだまだ先だろう。それでも彼は「肩の荷が下りてストレスから解放された気分だ」と、安堵の笑みとともに勝利を噛み締めた。