田中こころ

WNBAのトップチームとの対戦「もっとボコボコにされると思った」

今年の9月にベルリン(ドイツ)で開催される『FIBA 女子ワールドカップ2026』に向けて本格的に強化を始めた女子日本代表において、最も注目を集めているのが田中こころだ。

現在20歳の田中は173cmのポイントガードで、桜花学園在学中の2021年にはインターハイとウインターカップの2冠に輝き、ENEOSサンフラワーズに加入した。2025年に行われた『FIBA女子アジアカップ2025』ではチームを準優勝に導く活躍を見せ、大会ベスト5に選出された。そして、WNBAドラフトでヴァルキリーズから3巡目全体38位で指名された。

チームのマネージャーとともにドラフトを見ていたという田中は「すごくうれしい気持ちと、本当に自分かなって思うぐらいすごく驚きました」と、その時の様子を振り返る。それでも結果的にWNBA挑戦を辞退し、日本でプレーすることを選んだ。

「ワールドカップも9月にありますし、Wリーグでもっと個人として結果を出したいっていう気持ちもあるので。もう1年しっかり日本で修行をしていろんなことを吸収して、英語も含めて1年勉強期間というか。来年以降から向こうでやるという風に考えています」

ENEOSでの田中は今シーズンで引退した宮崎早織の2番手で、Wリーグプレミアでは28試合に出場し、平均20.5分のプレータイムで5.7得点、2.0リバウンド、2.5アシストと突出したスタッツを残していない。しかし、代表では先発起用され、貴重な得点源として活躍している。

田中は言う。「チームではセカンドで出させてもらっていたんですけど、代表ではずっとスタートで出させてもらっています。最初からエンジン全開で自分の持ち味もそうですけど、周りを生かすプレーもやらなきゃいけないという覚悟を持ってやっています。試合をする時はワクワクした気持ちでやっているんですけど、代表ではベテランの方たちと一緒にできますし、また違った楽しさがあります。まずは日本のファンの皆さんの前でしっかりと結果を出し、自分の実力を見せつけてから向こうに行ってやれればいいなと思ったので、それが最終決断になりました」

前述の通り、田中の最大の武器は得点力であり、どんな時でも受け身にならないアグレッシブさが魅力だ。コーリー・ゲインズヘッドコーチも「彼女は着実で安定感があり、チームを助けてくれる存在です。物怖じしない性格も素晴らしい」と太鼓判を押す。

「ペイントエリア内に切り込んで得点する力があり、これは日本の課題であるインサイドでのフィニッシュにおいて大きな武器になります。彼女のサイズでポイントガードやシューティングガードができることは、我々にとって非常に重要です。WNBAにドラフトされたのも、そうした資質が評価されたからでしょう。(トレーニングキャンプでの)フェニックス・マーキュリー戦でも彼女はそれを見せました。ペイントへ仕掛け、3ポイントを沈め、積極的にアタックしました。WNBA選手を相手にしてもまったく怯むことなく、いつも通りのプレーを見せてくれました。その一貫性こそが彼女の特別な点です」

アメリカトレーニングキャンプではエーシズに78-94、マーキュリーに60-86といずれも敗れた。文字通り世界トップクラスのチームとの対戦を経て「普通のレイアップやシュートではやっていけないことを本当に肌で感じた」と田中は振り返るが、それと同時に「正直、もっとボコボコにされると思っていました」と言い、想定以上にやれる手ごたえも得た。

「個人的に通用した部分は数個ありましたし、『やれるな』って本当に思いました。そんなに世界は甘くないですけど、やれる部分は一つでもあるなと思ったので、そこはこれからの自信に繋がったと思います。アジアでもワールドカップでも、スピードだったり自分のクイックで打てるシュート力は通用した部分ではありました。全然ダメだったところも何個かはありますけど、それをあまり考えすぎないで、自分の通用した部分をもっと磨いていけたらいいなと思っています」

このネガティブなことに捉われず、良いところに目を向けるポジティブシンキングが田中の最大の武器なのかもしれない。「『チームを勝たせられるガード』になることが今年の目標」という田中は、明日のラトビア戦で自身の存在価値を日本に知らしめてくれるはずだ。