エースのハリバートンが序盤にケガ、ペイサーズは失速
運命の『GAME7』は、開始5分で3本の3ポイントシュートを決めたタイリース・ハリバートンが、その2分後にドライブに行ったところで痛めていた足を悪化させて退場する、最悪の幕開けとなりました。ペイサーズをNBAファイナルへ引き上げた立役者が不在となっては戦えないと思われましたが、ペイサーズはそう簡単には屈しませんでした。
ハリバートンが抜けるまでは鮮やかなパッシングからアウトサイドシュートを決めていましたが、サンダーがスーパースモールラインナップも駆使してプレッシャーを掛けてくると、今度はパスカル・シアカムとマイルズ・ターナーがミスマッチを突いていくインサイドアタック中心に切り替えて得点を奪っていきました。
これに対してサンダーは、ハイプレッシャーからボールを奪うのですが、カウンターからのシュート成功率が上がらず、またハーフコートオフェンスになってもシェイ・ギルジャス・アレクサンダーがキックアウトパスを出すも、前半の3ポイントシュートは18本中4本しか決まらず、得点は伸び悩みました。
ロースコアが続いた前半は、終了間際にアンドリュー・ネムハードが勝負強さを発揮する3ポイントシュートを決めたペイサーズが1点リードで折り返します。その前にもベネディクト・マサリンが1on1からのプルアップ3ポイントシュートを決めており、ペイサーズはチームで16本中8本とシュート精度で上回った前半でした。
しかし、後半が始まるとルーゲンツ・ドートがショットクロックギリギリで放り投げるように打った3ポイントシュートを決め、シェイがプルアップで続くと、さらにシェイのキックアウトからチェット・ホルムグレンとジェイレン・ウィリアムズも3ポイントシュートで続き、開始5分で9点リードとペイサーズを突き放します。
ペイサーズはファイナル通してアンストッパブルになっているTJ・マッコネルが連続8得点で対抗しますが、さすがにハリバートン不在が響き始め、パスワークからのオープンショットは減っていきます。ポイントガードを2枚並べてオフェンスを構築するのがペイサーズの特徴ですが、ネムハードとマッコネルを交代で使わざるを得ませんでした。
ペイサーズは最後までフルコートディフェンスとマサリンの強気なアタックで食らい付きましたが、ハリバートン抜きではオフェンスが単調になってしまい、プレーオフで何度も起きた奇跡の再現とはなりません。第3クォーターに築いたリードを守り切ったサンダーが103-91で勝利しました。
この試合、サンダーのスティールは14、ペイサーズのターンオーバーは21を記録しました。皮肉にもNBAファイナルを通してハリバートンの冷静な判断が、サンダーの強力なプレッシャーディフェンスを無効化していたことが明らかになった『GAME7』でもありました。偉大なポイントガードの不在がなければ、試合展開も大きく変わっていたはずです。
サンダーはシェイが29点を記録するもののフィールドゴールは27本中8本成功(29.6%)と苦しみ、その一方でヘルプディフェンスに対して早いタイミングでパスを出したことでアシストは12と、チームオフェンスを引っ張りました。この試合でサンダーの3ポイントシュートは27.5%と低調でしたが、シューティング全盛期になって久しいNBAにおいて、トレンドと異なる手法で勝ち切った若きサンダーが、新たな王者として君臨しそうです。