
4月22日、富士通レッドウェーブ所属の林咲希が、福岡市内の中学校で開催された『KAGOスクール福岡』のクリニックにゲスト参加した。小学校4年生から中学3年生までの男女という幅広いカテゴリーを対象に、笑顔あふれるクリニックが実施された。
福岡県糸島市出身の林は、毎年帰省をするタイミングで子どもたちと触れ合う機会を設けている。自身の母校に赴いたり、福岡県だけでなく九州地方のその他県でもクリニックを行うという彼女に、クリニック活動で大切にしていること、新しい環境でバスケットをする上で大事にしてきたことについて語ってもらった。
「バスケットは楽しむことが一番」
──クリニック活動を行うようになったきっかけを教えてください。
帰省した時に身体を動かしたいと思って母校に行って一緒にプレーしたことがあったのですが、その時に在校生がすごく喜んでくれたことです。その後、出身ミニバスに顔を出した時も子どもたちが楽しんでくれて、それを見ていた知人からクリニックを開催することを勧められました。私は子どもたちの笑顔を見るのが好きで、技術を習得してもらうことよりも、バスケットをもっと楽しんでほしいという気持ちでクリニックをやっています。
──今日の円陣でも「エンジョイ!」と声がけをされていましたね。
そうですね。私はバスケットがすごく好きで、楽しむことが一番だと思っています。
──今回のクリニックは、小学校4年生から中学3年生と幅広いカテゴリーが対象でしたが、気をつけて臨んだことはありますか?
ちょうど良いところを探すことを考えていました。ハンドリングもそうですが、パスもシュートも大事な土台の部分をまず教えるということを基本スタンスにして、子どもたちのレベルが高ければ技術的な部分をプラスしますし、逆にそうでもなければ楽しんでもらえるメニューに切り替えますね。基本的には「土台から伸ばしていくことが大事だよ」ということを伝えられるように気をつけています。今回のクリニックで大半を占めていたKAGOの子どもたちはレベルも高かったので技術的な部分もプラスしました。
──特に今回はシュートに入るステップの一歩目の重要性を強調していました。
今日はカテゴリーがバラバラだったので、共通するその部分を意識しようと思っていました。
──メニューは事前に組み立てるのでしょうか?
はい。私はコーチではなく選手なので、メニューの組み立てはすごく難しいです。『何がいいかな』と考えて、1週間ぐらい前からソワソワしています(笑)。
──伝えることの難しさは感じますか?
感じますね。特に小学生は分からないこともたくさんあると思うので、大事なことは何回も伝えるということを意識してやっていますし、『伝われ!』と思いながらやっています(笑)。
──クリニック中は終始、子どもたちに声がけをしている姿が印象的でした。
私も高校生の時に先輩から話しかけてもらえたりするとすごくうれしかったので、気にかけて一人ひとりに喋りかけることを意識しながらクリニックを行っています。

「自分を見失わずに『自分の色』を出していってほしい」
──ご自身がプレーするときにも声がけは意識していますか?
していますね。プレー中はどうしても試合に出るメンバーとよく話すことが多くなりますが、ベンチメンバーであったり、試合に出ていない子たちとも喋ることでヒントを得ることがあります。その子たちの意見を聞いて、「今どう思ってる?」とか「どんな感じ?」と声をかけることでチームの一員であることを意識付けて、チーム全体が良いメンタリティでやれるようにしています。
──コミュニケーションを大事にされているのですね。
はい。バスケットをする上で一番の中心になっていますね。
──進学や社会人と必ず環境の変化があります。その中で大事にしていたことはなんでしょうか?
まずは自分なりにチームを分析するようにして、そのチームで何が足りていないのか、どこにウィークポイントがあるのかを考えて、声がけすることを意識していました。だからと言って新チームになった時にリーダーシップを発揮しようと考えていたわけではなく、『新しい流れを持っていく役割』を遂行するようにしていましたね。
同じメンバーでずっとやっていると、成長の幅と言いますか、練習の雰囲気などの変化が小さくなってきてしまいます。外から良いものを持っていけば(成長する)余白が生まれるし、悪いものを持っていったらダメになる。リーダーシップを取るというよりも、良いところが出るようにコミュニケーションをしっかり取ることで解決しようと思ってたので、どんどんズカズカと入っていきましたね(笑)。
──ちょうど今の時期は新学期を迎えて、中には小学生から中学生と環境の変化があった子どもたちもいます。環境の変化を経験している林選手から、子どもたちに伝えたいこと、大事にしてほしいことはありますか?
自分を見失わずに『自分の色』を出していってほしいですね。部活動の話になってしまいますが、私は先輩たちに対して引き気味で話しかけづらいと思いながらも、心の中では勝ちたいという気持ちもあって、苦しかった記憶があります。だから自分からどんどん話しかけて思いを伝えていき、自分に自信を持って進んでほしいと思います。そして何より明るく過ごしてほしいなと思います。
──陽の力が良い方向に導いてくれるのですね。
そうですね。でもそれが強くなりすぎてしまって、周りがすごく絡みづらくなった時期もありました。
──逆にですか?
中学の時、勝ちたい気持ちが強すぎて、周りがついてこられなくて『私一人で頑張ろう』という状態に陥ってしまって……頑張り方を間違えていました。『私一人で頑張ればいいや』と思っていたのを『みんなと一緒に勝ちたいんだよね』と喋りかけるようになったら、みんなが一緒に頑張ってやってくれたので。一人で頑張るんじゃなくて周りの人も巻き込みながら頑張ってやることが重要だと痛感しました。自分から話しかけることはすごく勇気がいることですが、絶対に行動してくれる子はいるので、話しかけることは大事だと思います。
──それに気づいたのは、何がきっかけだったのでしょうか?
姉の言葉でした。姉が練習に来てくれることがあって、その時に「あんただけ頑張ってもダメじゃない?」と。「自分だけが良くて、あんただけワーッてやってるから、もうちょっと周りを見てやってみたら?」と言われたのがきっかけですね。それから考えが変わって周りを巻き込むようになっていったら、周りの人にしか見えないことや気づかないことを言ってもらえるようになって良い方向に進みました。
──だから今も周りの人やサブメンバー、試合に出られない選手にも話を聞くのですね。
そうですね。私も試合に出られない時期も多かったのでその気持ちも分かるし、やっぱりみんなで楽しくやりたいということが芯にあるので、コミュニケーションを取ることは大事にしています。