アキレス腱断裂のハリバートンに「彼を誇りに思う」
『GAME7』の負けは厳しい。それがNBAファイナルとなれば、敗れた時のダメージは計り知れない。しかし、パスカル・シアカムは怒りも涙もなく、自分たちの力を出し切った実感とともに「サンダーのバスケは素晴らしかった」と優勝チームを何度も称えた。
「サンダーに流れを持っていかれるまでは、パスを回して粘り強く戦えていたと思う。上手くいかなかったけど、サンダーのプレッシャーは本当に厳しかった。それでも僕はアグレッシブにプレーしようと考え、そこでいくつかのミスがあった。でも、それは仕方ない。僕らは最後まで戦い抜いた」
しかし、話題がタイリース・ハリバートンに移ると、シアカムの口調は重くなり、「彼の無事を願った。今は彼がベストフォームを取り戻すことを願うだけだ」と語る。ハリバートンのケガは右足のアキレス腱断裂。復帰までに約1年を要し、来シーズンを棒に振る可能性が高い。
「僕は彼を誇りに思う」とシアカムは話す。「たくさんの批判を浴びて、若い選手には過酷すぎるストレスを抱えながら日々戦い続け、このプレーオフで信じられないことを成し遂げた。勝てなかったのはもちろん残念だ。彼が持てるものすべてを捧げたことを知っていたからこそ、勝ちたかった。それでも、彼が成し遂げたことを本当に誇りに思う」
シアカムは昨シーズン途中にラプターズからペイサーズにトレードされ、新たなチーム、新たなバスケで新境地を切り開いた。ハリバートンが、アンドリュー・ネムハードが、TJ・マッコネルが繰り出すハイペースなバスケにビッグマンがついていくのは簡単ではない。若くて選手層の厚いサンダーは例外として、どのチームもペイサーズの猛烈なペースに巻き込まれ、試合終盤に足が動かなくなった。
ペイサーズが奇跡的な逆転劇を連発できた最大の理由はスピードとスタミナであり、シアカムはこのプレーオフの23試合を通じて超ハイペースに合わせて走り、何度もファストブレイクの先頭を走った。彼の持つ運動量とスキルがチームのスタイルと噛み合うことで、新たな魅力が引き出された。それは彼にとってNBAファイナル進出よりも価値がある。
「数年前の僕はバスケが全く楽しくなかった。でもペイサーズにトレードされて、ここの仲間たちが僕を引っ張り上げ、バスケの楽しさを再発見させ、自信と喜びを与えてくれた。優勝できなかった以上、何を言っても慰めにしかならないかもしれないけど、バスケへの喜びを取り戻させてくれた仲間たちに心から感謝している」
もう一つ、シアカムが感謝したのは支えてくれたファンだ。「僕らはシーズンを通して『見ていて楽しいチームじゃない』と思われてきた。それが今では大きな関心を持たれているよね。それは誇りに思っていいと思う」
「NBAではスター選手がすべてで、チームのコンセプトは脇に追いやられがちだけど、僕たちは違う。力を合わせてチームとして戦えば勝てると証明できた。優勝はできなかったけど、ペイサーズのバスケが好きだと言ってくれる人がいるのは本当にありがたい」
敗れてもなお、ペイサーズは誇り高きチームだった。「僕らのやり方が、これからの時代のトレンドになることを願っているよ」と言い、シアカムはNBAファイナルの舞台から去った。