後半にディフェンスの強度を上げてリードを奪う
琉球ゴールデンキングスが、チャンピオンシップのクォーターファイナル第3戦で富山グラウジーズと激突。チームの生命線である堅守を取り戻して86-77で勝利し、3シーズン連続となるセミファイナル進出を決めた。
第1クォーター序盤、富山はジュリアン・マブンガの連続得点で流れをつかむと、マブンガのパスからジョシュア・スミスがゴール下で決めるホットラインによって12-5と先行する。その後、富山は凡ミスから連続得点を許すが、前田悟の3ポイントシュートなどでリードを維持していく。だが、琉球は残り約5分からコートに入った今村佳太が持ち前の爆発力でリズムよくシュートを決めていく。最後はハーフコート付近からのブーザービーターを沈め、このクォーターだけで11得点をマークし、琉球が22-20とひっくり返した。
第2クォーターに入ると、琉球は守備のプレッシャーを強め、富山にタフショットを打たせて得点を許さない。ただ、琉球もオープンショットを作り出すが、決めきれずに膠着状態となる。それでも、オフィシャルタイムアウト明け、富山のゾーンディフェンスに対して今村が外から射抜くと、直後にはジャック・クーリーがゴール下でバスケット・カウントと、内と外でバランスよく得点することで42-34と突き放して前半を終える。
前日、琉球は第3クォーターの開始3分で岡田侑大に11得点を許すなど、後半に守備が崩壊したことで大敗を喫した。それだけに後半の立ち上がりに注目が集まったが、琉球は同じ過ちを犯さなかった。
「ハーフタイムで、僕は一言もしゃべっていないです。ロッカールームに入った瞬間、岸本(隆一)選手、並里(成)選手、クーリー選手が『昨日の第3クォーターを思い出してしっかり入ろう』とみんなに声をかけていました。それ以上、僕は何も言う必要はなかったです」
琉球の藤田弘輝ヘッドコーチがこう振り返ったように、琉球は選手一人ひとりが集中して、守備のプレッシャーを一段と強めることで富山に反撃の隙を与えなかった。その結果、このクォーターで20-10と圧倒して、リードを18点にまで広げることに成功。
第4クォーターに入っても琉球は、この試合で27得点を挙げた今村を軸に主導権を握り続ける。終盤、オール日本人選手の富山が前からプレッシャーをかけてターンオーバーを連続で奪い、残り2分の時点では17点もあった琉球のリードが、残り15秒には4点差にまで縮まったが富山の追い上げもここまでで、琉球が逃げ切った。
「選手全員がディフェンスをやる姿勢を見せてくれました」
試合後の会見で藤田ヘッドコーチは「勝ちが決まった後、素直に言うと本当にホッとしました」と安堵の表情を見せる。「沖縄の人たちの思いは常に実感していますし、『沖縄を元気に』という目的を持ってキングスは活動しています。もちろん勝ち負けを100%コントロールできるわけではないですが、勝って沖縄の皆さんを喜ばせたい。負けたらたくさんの人ががっかりすると考えていましたし、強い覚悟を持って臨みました」
そして、次のように勝因を語った。「自分たちがやってきたことをやるしかない。自分たちを信じてオフェンスもディフェンスも我慢してゲームプランをやり続けた結果が、今日の勝利だと思います」
この試合、オフェンス面を牽引したのは今村だが、ディフェンスの良い流れを生み出したのは田代直希と牧隼利だった。「選手全員がディフェンスをやる姿勢を見せてくれました」と称える指揮官だが、この2人のスタッツに残らない貢献度を評価する。
「田代選手はドライブが本当に速い宇都(直輝)選手にひるまずに前からプレッシャーをかけて防いでくれました。牧選手も第3クォーターの入りでファウルになってしまいましたが、岡田選手に対して絶対にやられないという気迫の入ったディフェンスを見せてくれた。そういった部分で彼らの果たしてくれた役割は本当に大きかったと思います」
初のファイナル進出へ向け、琉球は週末にホームで千葉ジェッツを迎え撃つ。千葉とはレギュラーシーズン終盤の4月28日と5月5日に対戦したが、ともに敗れている。ただ、琉球は28日の時点で西地区優勝を決めていたのに対し、千葉は東地区2位確保で負けられない状況と両チームの置かれている立場には大きな違いがあった。
千葉は過去2シーズン連続でファイナル進出中と琉球を上回る実績を残すBリーグ屈指の強豪であり、千葉有利の声は少なくない。ただ、琉球には沖縄アリーナという大きなホームコートアドバンテージがある。たとえ声は出せなくても、選手にとって大きな力となることは、今回のクォーターファイナルが実証している。
「僕たちがしっかり我慢を続けることができれば必ずチャンスはあります」
指揮官が語るように、自分たちのなすべきことを貫き通せば、琉球にも勝機は必ず巡ってくる。
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