パスカル・シアカム

アデトクンボの得点は許してもアシストは許さず

プレーオフのファーストラウンド初戦、ペイサーズはバックスに117-98で完勝した。高さと強さのバックスに対し、ペイサーズはスピードとバランスの良さで対抗。前半を67-43と上回ったペイサーズに良いリズムをもたらしたのはアンドリュー・ネムハードだ。

ペイサーズはトップスピードに乗りながら精度の高いトランジションオフェンスが売りで、タイリース・ハリバートンが象徴する縦一直線のスピードに対して、ネムハードは縦横無尽にコートを駆け回るのが持ち味。ペイサーズの主力では得点力の低いネムハードがオフェンスの舵取り役を担うことにバックスの守備は翻弄された。前半のネムハードはフィールドゴール8本中7本成功でチームトップの15得点、さらに2アシストでオフェンスを引っ張った。

ディフェンスではヤニス・アデトクンボ対策が効果的に決まった。デイミアン・リラードが戦線離脱してから、バックスのハンドラー役はアデトクンボが担い、毎試合のように2桁アシストを記録するようになった。もちろん本職のポイントガードではないが、彼自身の強力なアタックでディフェンスを引き付けてのキックアウトが機能していた。これに対してペイサーズはアデトクンボのアタックによる2点シュートを許容する代わりに、キックアウトから他の選手にワイドオープンを許さないディフェンスを徹底した。

その結果、前半でアデトクンボは11本中7本のフィールドゴールを決めて19得点を挙げたものの、アシストはわずか1。このディフェンスは後半も徹底され、アデトクンボは後半も17得点を挙げたが、アシストは0だった。試合を通じてアデトクンボが36得点1アシストを挙げた一方で、カイル・クーズマとトーリアン・プリンスの先発2人が無得点とオフェンスは湿りっぱなしだった。

シアカム「初戦に勝ったけど、シリーズは長い」

アデトクンボを苦しめたもう一つの要素が15本中8本しか決められなかったフリースローだ。ゲインブリッジ・フィールドハウスに詰めかけた1万7000人の観客が、彼がフリースローラインに立つたびに声を揃えて秒数をカウントする。アデトクンボはフリースローが得意ではなく、しかも打つルーティーンに時間がかかるため、常に既定の10秒ギリギリ。観客の声がプレッシャーとなりフリースローが決まらず、アデトクンボは常にストレスを抱えることになった。

チームハイの25得点、さらには7リバウンド2アシストを記録したパスカル・シアカムもまた、アデトクンボをマークし、チームプレーの中で攻守に存在感を示すことで勝利に大きく貢献した。そのシアカムは「ゲームプランにおける自分の役割をこなし、仲間とコミュニケーションを取りながらチームとして戦うことができた」と、チームプレーの勝利を強調する。

「98点に抑えることができたけど、僕たちのやりたいディフェンスが完璧にやれたわけじゃない。ヤニスのアタックは強力すぎて、できる限りの努力をするしかないけど、バックスの3ポイントシュートは今日は当たらなかっただけで、フリーで打たれた場面もあった。初戦に勝ったけど、シリーズは長い。今日の映像から学んでもっと良いディフェンスをしなきゃいけない」

ヘッドコーチのリック・カーライルは、選手たちの集中力とエネルギーを称えながらも「まだ初戦を終えただけ」と気を引き締める。「バックスはプレーオフの経験がウチよりずっと多い。デイム(リラード)復帰の可能性も高いと聞いている。この先に何が起きるか分からない」

リラードは3月下旬に深部静脈血栓症で戦線離脱となった。一般的には治療に6カ月近くを要するが、プレーオフを前に血栓は消え、すでに治療を終えたという。第1戦には間に合わなかったが、コンディションが整い次第プレーを再開する見込みだ。