アイソレーションを強いる好守が良い攻撃に繋がる
ティンバーウルブズはチームの象徴だったカール・アンソニー・タウンズを放出し、失われたバランスを取り戻すのに苦労した末、プレーオフのストレートインとなる6位に何とか滑り込んだ。このファーストラウンドを迎えるにあたり、ルカ・ドンチッチの加入を機に浮上し、中位グループから3位へと抜け出したレイカーズが優位と見られるのは当然だった。
それでもウルブズは、サンズとナゲッツを撃破してカンファレンスファイナルへと勝ち進んだ1年前を思い起こさせる強さを見せた。激しく、かつ抜け目のないディフェンスに、相手の弱点を的確に突くオフェンス。そしてレイカーズは、このウルブズの攻守に対抗できなかった。
立ち上がりからドンチッチが繰り出すレイカーズの攻めが機能し、ドンチッチと八村塁の得点でレイカーズが優位に立ったが、試合が進むにつれてウルブズの攻守が上回る。ウルブズのディフェンスはドンチッチがボールを手離すように仕向け、チームオフェンスの繋がりを断つ。するとレイカーズはドンチッチ、レブロン・ジェームズ、オースティン・リーブスが代わる代わる1対1で攻める形に。ここにもきっちりディフェンスが寄せており、彼らの個人技で鮮やかな得点が決まることもあったが、確率は低く抑えられた。
良い守備は良い攻撃に繋がる。それを体現するウルブズの象徴がジェイデン・マクダニエルズで、本職の守備はもちろん攻撃に転じればフィールドゴール13本中11本成功の25得点と活躍。その一方でレイカーズは、1対1で崩しきれないまま3ポイントシュートを打ち、そのリバウンドから速攻を食らう。誰が誰をマークするかの判断に時間がかかり、コミュニケーションミスも重なって、速攻からワイドオープンのチャンスを簡単に、そして次々と作られた。
ウルブズの3ポイントシュートは試合を通じて42本中21本成功。50%の確率で決められたのでは、いくらオフェンスが強力でも取り返せない。ファストブレイクによる得点はレイカーズの6に対しウルブズは25。アシストはレイカーズの15に対してウルブズが29と大きな差が開いた。
そして今シーズンも、プレーオフになるとウルブズのセカンドユニットは大きな強みとなる。ナズ・リードとニキール・アレクサンダー・ウォーカー、ドンテ・ディビンチェンゾは攻守に集中したプレーを見せた。ルディ・ゴベアが前半からファウルトラブルとなったが、2番手のリードが攻守にハッスルし、23得点5リバウンド2アシスト2ブロックを記録。レイカーズに対するサイズの有利を最大限に生かした。それはリードだけではなく、マクダニエルズも「ヘイズがベンチにいる時は、一番背が高いのは僕だった。リムプロテクターがいなければそこを突くだけだ」と語っている。
「レイカーズが勝つと信じているだろうけど……」
第4クォーター残り3分に23点差でレイカーズが主力をベンチに下げるまで、ウルブズは攻守に高いインテンシティを維持し、最終スコア117-95で初戦での勝利を収めた。
タウンズがいなくなったウルブズは、守備的で激しく戦うスタイルをさらに突き詰めた。華やかさはないが堅実で、相手の長所を消し、短所は徹底的に突く。エースのアンソニー・エドワーズも今シーズンは派手なプレーを減らし、今まで以上にハードワークを徹底するようになった。エドワーズはオフェンスでは相手の注意を引き付けてパスを出し、マクダニエルズやリードにイージーシュートのチャンスを提供した。一度は足が攣ってベンチに下がったが、応急処置を済ませるとコートに戻り、それまでと変わらぬ攻守の強度を出し続け、35分のプレーで22得点8リバウンド9アシストを記録した。
「素晴らしいメンバーが揃っているんだ。お互いを理解するのに時間はかかったけど、今はもう大丈夫だ」と試合後のエドワーズは語る。レイカーズの勢いを止めた守備については「できるだけ身体を使い、クォーターの早い段階でボーナスを与えないこと。ルカもレブロンもフリースローでリズムに乗るからね。特に後半はそれが上手くいって、相手を勢いに乗らせなかったと思う」
レイカーズは華やかなスター選手を擁する人気チームで、ウルブズは地味な田舎クラブ。自分たちよりもレイカーズを応援するバスケファンが多いことをエドワーズは「分かっているけど、別にメッセージはない」と言う。「みんなまだ僕らじゃなくレイカーズが勝つと信じているだろうけど、それでいいよ。僕らは僕らでベストを尽くすだけさ」