デビン・ブッカー

方針転換は避けられず、デュラントもブッカーも放出?

現地4月9日、サンズはサンダーに112-125で敗れて8連敗。レギュラーシーズンを2試合残して10位との差が3ゲームとなり、プレーオフ進出の可能性が潰えた。

デビン・ブッカーとケビン・デュラント、ブラッドリー・ビールの『ビッグ3』は結局機能しなかった。ビールはチームのために控えを受け入れたが、スターの輝きは取り戻せないままだった。デュラントはウォリアーズへのトレード交渉があり、本人が拒否したことで移籍は成立しなかったが、その後はモチベーションを失ってしまったように見える。そしてブッカーは今シーズンも孤軍奮闘を続けたが、エースとしてプレーオフ進出を逃した責任の一端を背負わなければならない。

『ビッグ3』に1億5000万ドル(約230億円)の年俸を支払っている以上、総年俸にNBAで最も高額な2億2070万ドル(約330億円)を費やしてもサポートキャストは質も量も不足していた。それを巧みに使いこなすために招聘されたマイク・ブーデンフォルツァーは、80試合を費やして33通りの先発ラインナップを試すも最善の形を見つけ出せなかった。

サンダー戦に負けた後、記者からは「来シーズンもこのチームの指揮を執れると思うか」との質問が投げかけられた。「我々は敗退したばかりで、フロントとはまだ何の会話もしていない」というのがブーデンフォルツァーの答えだ。

我慢を知らないサンズ首脳陣がどんな決断を下すかは、いずれ分かるだろう。だが、予想されるのはモチベーションを失ったデュラントの放出であり、その先にはブッカーの退団さえあり得る。

今の市場のトレンドではデュラントほどの実績があっても36歳でケガの多い選手は好まれず、その市場価値はサンズが獲得した2023年2月から大幅に下落しており、大掛かりな再編のために使える最大の資産はブッカーだ。2031年までドラフト指名権をすべて手放し、セカンドエプロンを下回るまでのサラリー削減にも迫られている状況で、小手先のチーム再編は意味を持たない。

サンズが動かなくても、ブッカーがトレードを要求する可能性もある。2015年の入団から10年間、ドアマットであれ優勝候補であれブッカーは不平を漏らすことなくサンズを引っ張ってきたが、今後もそうとは限らない。『バブル』で飛躍のきっかけをつかむまでの時期、まだ若手だった彼にはエースの重責を担う自体に価値があった。しかし、今の彼はオールスター選出4回、金メダルを2つ持つスーパースターだ。チームが再び勝てるようになるまで、彼はどれだけ待てばいいのか。ビールの契約から解放される2027年まで? あるいは2031年?

「開幕からの好調で自分たちの力を過信してしまった」

サンダーに敗れた試合後、ブッカーは落胆の色を隠せないままこう語った。「少しずつ悪くなっていった。シーズンを通してそんな感じだった。良いプレーができた試合もあって、僕はそこに希望を持ったし、他の選手もそれは同じだと思うけど……」

トレードデッドライン時点での勝率は5割だったが、その後は10勝20敗と失速。中位からずるずると後退し、プレーインにも手が届かなくなった。直近の8連敗の相手が上位チームばかりだったように、後半戦のスケジュールはかなり厳しかった。しかし、そこだけではなく前半戦にも問題があったとブッカーは考えている。

「開幕から8勝1敗と好調で、そこで自分たちの力を過信してしまった。勝っても負けても学び続ける。そうやって小さなことを積み重ねるのが大事で、やれた時期もあったけど、ずっとそうじゃなきゃいけない」

ブッカーが初めてのプレーオフを経験したのが2020-21シーズン。翌2021-22シーズンに球団記録となる64勝を挙げたが、そこからサンズは下降線をたどり始めた。4年ぶりにプレーオフを逃した今、チームは再出発を強いられる。成功のサイクルで最初のステップとなったのは、2019-20シーズンの『バブル』での8戦全勝だった。

「ずっと頭にあるよ。僕はその時期を見てきたからね。さっきも言った通りで、勝敗に一喜一憂せずに日々努力を積み重ねるしかない」とブッカーは言い、当時との違いとして「もっと声を出して、自分の意志をチームメートに伝えたい。そういうリーダーシップを発揮するつもりだ」と語った。

すかさず記者から「その声はクラブの上層部にも向けられるのか?」との質問が飛ぶ。ブッカーは答えた。「全員だ」