簡単なミスを連発も、それ以上に好プレーを披露
ナゲッツはプレーオフ初戦のクリッパーズ戦で苦戦を強いられたが、オーバータイムにもつれる接戦を112-110で制した。
序盤はクリッパーズが優勢だった。ニコラ・ヨキッチはイビチャ・ズバッツのフィジカルな守備に苦しみ、ジャマール・マレーのシュートタッチも良くなかった。3番目のオプションであるマイケル・ポーターJr.はチームに最初の得点をもたらす3ポイントシュートを決めたが、それ以降は全く目立たず。得点を取れない以前にヨキッチを助けるスペーシングもできず、試合終盤はベンチから戦況を見守ることとなった。
第2クォーターに最大15点のビハインドを背負ったナゲッツに巻き返しのエネルギーをもたらしたのはラッセル・ウェストブルックだ。サンダーの王様だった彼はベテランになるとジャーニーマンとしてのキャリアを余儀なくされ、昨シーズンを過ごしたクリッパーズでも重要な役割は与えられなかったが、今シーズンは層の薄いナゲッツのセカンドユニットで攻守に重要な役割を与えられ、シックスマンとして復活を遂げていた。
しかし、キャリアはままならないもの。マイケル・マローンが解任されると、その理由の一つが若手を起用せずにベテランに頼る戦い方にあるとされ、これは実質的なウェストブルックへの批判だった。実際にレギュラーシーズン最後の3試合で彼のプレータイムは減った。
それでも大事なプレーオフの初戦で、主力の一人であるポーターJr.が使えないとなった状況で、新たに指揮を執るデイビッド・アデルマンが頼ったのはウェストブルックだった。
ウェストブルックはいつも通り攻守にパワー全開でプレーし、簡単なミスも連発したがそれ以上に好プレーも見せた。追い付けそうで追い付けない第4クォーター、残り3分半でナゲッツにリードをもたらしたのは、オフェンスリバウンドを奪ってゴール下をねじ込んだウェストブルックの力強いプレーだった。第4クォーター残り30秒からの攻めでも、クリッパーズ守備陣にマークを外された彼がコーナースリーを決めて98-96とクリッパーズを突き放している。
「試合は長距離レース、最後に勝たなきゃいけない」
ここで決着をつけることはできなかったが、オーバータイムでもウェストブルックの奮闘は続いた。残り1分を切ったところでジェームズ・ハーデンからカワイ・レナードに出すインバウンズパスを狙い、カワイのターンオーバーを誘発している。
ナゲッツは層の薄さが災いし、ポーターJr.を除く先発の4人のプレータイムが45分から48分と非常に長くなったが、ウェストブルックの奮起が彼らの士気も煽り立てた。延長の残り2分、クリスチャン・ブラウンがコート外にダイブしてポゼッションを繋ぐビッグプレーがあり、第4クォーターには3本、延長では4本のオフェンスリバウンドをもぎ取ることで、勝利を引き寄せた。
「ラスはいつだってラスなんだ」と指揮官アデルマンはウェストブルックを称賛する。クリッパーズを率いるタロン・ルーは「ターンオーバーが20もあっては勝てない」と嘆いたが、アデルマンはそのきっかけがウェストブルックだと語る。「彼が無理にボールを奪わなくても、常に激しく動き回って相手にプレッシャーを与え続けた結果として多くのターンオーバーが起きたんだ」
ヨキッチは29得点9リバウンド12アシストを記録。スタッツは十分であってもズバッツのマークに苦戦し、マレーとのピック&ロールも対策されて効果的にチャンスを作れたわけではない。しかし、ヨキッチの活躍ばかりが突出する試合はチームバスケが機能していないことを意味する。
全員で激しく戦ったことにヨキッチは満足し、「CB(ブラウン)のダイブ、AG(アーロン・ゴードン)のオフェンスリバウンド。僕らがやらなきゃいけないのは、ボックススコアに残らないような小さなプレーだ」と語り、こう続けた。
「ラスは簡単なレイアップを外すシーンもあったけど、大事な場面で3ポイントシュートを決めた。トランジションで良い仕事をしたし、攻守にアグレッシブで、重要なオフェンスリバウンドもあった。試合は長距離レースみたいなもので、最後に勝たなきゃいけない。彼はそれができるプレーヤーなんだ」
誰よりもアグレッシブで、誰よりもプレーオフの雰囲気を楽しんだウェストブルックはこう語った。「多くの人がシュートを外したところに注目するけど、プレーオフでは勝敗がすべてだ。シュートを何本決めたか、何本外したかは関係ない。ディフェンスでもオフェンスでも、勝つためのプレーをするんだ」