「身体全部を使ってボールをもぎ取るんだ」
ステフィン・カリーとジミー・バトラー。ウォリアーズの強力ワンツーパンチは、それぞれがプレーオフのシビアな局面で強みを発揮してきた。若手中心のロケッツにはない要素である『実績』が、ファーストラウンド初戦の勝敗を分けた。
バトラーは「僕たちはまだ若いけどね」と言い、冗談めかした笑みを浮かべた。42分のプレーで25得点7リバウンド6アシスト5スティールを記録した彼は、クラッチタイムに連続得点を決める勝負強さを披露し、何とか詰め寄ろうとするロケッツの望みを断ち切った。
カリーも流石のパフォーマンスを見せた。3ポイントシュートが警戒されていればドライブで、あるいはオフボールから切れ味鋭いカットインでゴール下に飛び込み、サイズとフィジカルを補うシュートテクニックで得点を重ねた。そして、反撃を試みるロケッツが勢いを上げようとするたびに3ポイントシュートを沈め、その出鼻をくじいた。
立ち上がりこそロケッツが勢いで上回ったが、第2クォーターをわずか13得点に抑えられて形勢逆転。その後はウォリアーズが終始リードを保った。ロケッツは最大23点のビハインドから1ポゼッション差まで詰め寄ったものの、そこでカリーとバトラーのクラッチ力にねじ伏せられた。
「ロケッツはフィジカルに戦う素晴らしいチームだ。でも僕たちはどんな挑戦からも逃げず、力には力で対抗した。まあ、少しは技術も加えた感じかな」とバトラーは笑う。
「この試合がフィジカルな勝負になるのは分かっていたから、強烈なプレッシャーにも上手く対処できた。フィジカルではロケッツが有利と見られているようだが、僕らはただサイズがないだけで、闘志は盛んだし、フィジカルな戦いに耐えられる。今日見た通りで、激しい攻防の中で下手にテクニックに頼るんじゃなく、身体全部を使ってボールをもぎ取るんだ」
バトラーの言う通り、ディフェンスの激しさと執拗さはロケッツを上回るレベルで、それが失点をわずか85得点に抑えた要因だった。粘り強く身体を寄せてプレッシャーをかけ、腕を伸ばし、ディフレクションを狙う。レギュラーシーズンとは桁違いに執拗な守備にロケッツの選手たちはストレスが溜まり、ミスを連発した。スティーブン・アダムスとアルペラン・シェングンを筆頭に各ポジションで高さで勝るはずが、オフェンスリバウンドを取っても次の瞬間にボールを手で引っ掛けられ、そこを別の選手に拾われて速攻を浴びる場面もあった。
「移籍して来てから様々なことが上手く進んでいる」
そのディフェンスがウォリアーズ優位の状況を作り、そして勝負どころのオフェンスでは個々のタレントのクラッチ力が炸裂した。その2つの要素が噛み合ったウォリアーズの攻守は、まさに隙のないものだった。
バトラーは「自信はある」と上機嫌で語る。「移籍して来てから様々なことが上手く進んでいて、少なくとも自分たちが相当強いチームであることは分かっているよ」
このシリーズは『若さと経験の対決』という構図になっているが、ウォリアーズでも22歳のブランディン・ポジェムスキーとモーゼス・ムーディーが先発を務め、要所で攻守に重要な働きを見せた。「プレーオフで彼らのような若手をどう引っ張るか」と質問されたバトラーは「彼らは引っ張らなくても大丈夫」と答えた。「2人とも僕がここに来た時から高いレベルでプレーしていて、自分がスポットライトを浴びるプレーオフの舞台でプレーすべき存在だと十分に分かっているよ」
そして、ロケッツが健闘しても勝てなかった理由が『若さ』であることを語った。「彼らも緊張を感じていたんだろうね。バスケは流れのスポーツで、試合の流れが行ったり来たりする。その中で大事なのは冷静さを保つこと。シーズンを通してやってきたプレーを信じること。彼らは僕らのバスケを研究してきたけど、それはこっちも同じ。だから相手に流れがいった時間帯も『大丈夫だ』と感じられた」
東カンファレンスのチームでの在籍が長かったバトラーにとって、ヒューストンでプレーオフを戦うことには特別な意味があった。彼はこの地で生まれ育っている。「子供の頃は試合のチケットを買う金銭的余裕がなかったから、ここで試合を見たことはない。でも、高校時代の友人や知り合いはいて、彼らの前でプレーできるのは僕にとっては特別なことさ。あと何日か滞在するから、まだ何人かと再会できると思う」