梅木千夏

Wリーグファイナル、デンソーが悲願の初優勝に王手

デンソーアイリスと富士通レッドウェーブのWリーグファイナル、4月12日の第3戦はデンソーが76-53の快勝を収めた。初戦を落とした後の連勝で2勝1敗とし、悲願の初優勝に王手をかけた。

3試合目で相手の手の内が分かっており、前半はともにハーフコートオフェンスでズレを作ることができない中、デンソーは大黒柱の髙田真希がタフショットを次々と決めて前半だけで17得点を挙げ、2桁のリードを奪う。後半に富士通が猛追を見せるが、デンソーは守備で我慢することで相手に主導権を渡さず、第4クォーターは24-7のビッグクォーターを作り出した。

デンソーは髙田がフィールドゴール13本中10本成功の24得点とオフェンスを牽引したが、最大の勝因となったのはディフェンスで、そこで活躍が目立ったのは梅木千夏だ。ベンチスタートから25分4秒のプレータイムで5得点2リバウンド2アシストに加え4スティールを記録した。

梅木は、こう試合を振り返る。「試合の流れで苦しい時もあれば、乗れている時もありました。良い時を長く、悪い時を早く断ち切れることを意識していました。チームでコートの内外で声をかけ続けたのが勝てた要因だと思います」

この悪い流れを断ち切る象徴的なプレーが、梅木のスティールだった。第3クォーター残り44秒、デンソーは1点差にまで追い上げられたが、直後に川井麻衣が3ポイントシュートを成功させ、続くポゼッションでスティールに成功した梅木がトランジションに持ち込み、髙田のレイアップをアシスト。第3クォーターの最後に主導権を取り戻したことが富士通の集中を失わせ、勝敗を分ける要因となった。

梅木千夏

「少しでも相手のリズムを断ち切って、崩せたら」

梅木は今シーズン開幕前にトヨタ自動車アンテロープスから加入し、頼りになるベンチメンバーとして攻守にエナジーを与えている。「3ポイントシュートやドライブと思われがちですが、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールを取ることなどを自分の仕事として一番大事にしています。そこはオフェンスよりも集中しています」と梅木は注目されやすいオフェンスではなくディフェンスが『自分の仕事』だと強調する。

このファイナルでも一番に意識するのはディフェンスだ。「ガードに好きなようにやらせたら富士通の流れができてしまいます。ボールマンについた時は少しでも相手のリズムを断ち切って、崩せたらという気持ちで守っていました」

梅木はトヨタ自動車で2度のファイナルを経験しているが、3年前は出場なし、2年前は3試合で計18分の出場のみ。だが今は「シックスマンとして流れを変えるのはトヨタ自動車で学んだことなので感謝しています」と古巣での経験を糧に成長した姿を見せている。

24歳にしてキャリアで初めて主力として大舞台を迎えており、「ヘッドコーチが私のことを信頼して使ってくださっている時間帯は、緊張せずに自分の仕事をやらないといけない、と強い気持ちでコートに立っています」と、堂々としたプレーを見せている。

デンソーは赤穂ひまわりが、「片足でプレーしているような状態」と指揮官ヴラディミール・ヴクサノヴィッチが語る状態で万全とは程遠い。その状況を受けてステップアップする梅木は69-67と競り勝った第2戦でも13得点2アシスト2スティールと活躍。セミファイナルのシャンソン化粧品シャンソンVマジック戦でも勝った2試合はともに2桁得点と、プレーオフでのXファクターになっている。

明日の第4戦、このままデンソーが勝ち切るためには梅木の攻守に渡るエナジー満点のプレーが欠かない。