
「最初から最後までリバウンドの意識が良かった」
4月14日、Wリーグファイナルの最終決戦となるゲーム5が行われ、富士通レッドウェーブが75-60でデンソーアイリスに快勝。シリーズ通算3勝2敗で、昨シーズンに続くWリーグ連覇に加え、皇后杯に続くシーズン2冠の偉業を成し遂げた。
試合の立ち上がりから、富士通は積極的なドライブを繰り出し、相手のファウルを誘うことで得点を重ねる。逆に守っては、デンソーのペイントアタックを封じていき、前半で11点のリードを奪う。
後半に入ると、デンソーの外角シュートが入り始めることで第4クォーター序盤には6点差にまで縮められる。だが、富士通は最後まで強度の高いディフェンスを続け、デンソーにゴール下でのレイアップなどイージーシュートをほとんど打たせず悪い流れをすぐに断ち切る。そして自分たちは司令塔の町田瑠唯を中心にゴール下へのドライブからのキックアウトによるオープンシュートなど、見事なチームオフェンスを展開することで、すぐに2桁リードへと突き放す。こうして終始、ペースを握り続けた富士通が頂点に立った。
3戦先勝方式となった今回のファイナル、富士通は初戦を制したが、第2戦、第3戦と連敗し先に王手をかけられる。特に第3戦は53-76の完敗だったが、ここからチームの根幹である守備を立て直し、第4戦では64-35の堅守で圧勝して流れを奪い返し、今日の勝利へと繋げた。
富士通の攻守の要であり、キャプテンを務める宮澤夕貴は、「今日は最初から最後までリバウンドの意識が良くて、それが数字にも表れました。ディフェンスも昨日に比べると良くなかったですが、全体を通しては悪くなかったのが勝因だと思います」と試合を総括する。
第4戦の終了後、宮澤は第5戦の鍵としてターンオーバーとリバウンドを挙げていた。ターンオーバーは富士通が12、デンソーは9と互角だったが、リバウンド数は富士通がオフェンスリバウンドの22-12を含め49-28と圧倒したことが最大の勝因となった。
これで宮澤は、11連覇の古巣ENEOSサンフラワーズ時代と合わせ、2チームで中心選手として連覇を達成。これはWリーグの長い歴史を彩っていた多くのスター選手たちも成し遂げていない偉業だ。だが、宮澤本人は、「連覇にすごく特別感がある訳ではないです」と感想を語る。

「全員がステップアップして本当に良いチームに」
チームの栄光を常に追い求めている宮澤が大きな満足感を得ているのはチームの成長だ。今シーズンで富士通4年目となる宮澤は、次の思いを持って加入した。「私は連覇するために何が必要なのか、連覇する大変さをENEOSで学びました。次、私が富士通に来て何がしたいとなった時、富士通は素晴らしいヘッドコーチがいて、素晴らしいバスケットをします。私に何ができるとなったら気持ちの問題、何を頑張ればいいのかを伝えるところだと思っていました」
そして富士通に勝者のマインドが確立されていることへの手応えを語る。「今年、私は何か特別なことをしたわけではありません。チームが勝ち方を分かっていますし、全体として何をやればいいのかを分かっています。試合に出ているメンバーだけでなく、ベンチメンバーを含めた全員がステップアップして本当に良いチームになったと思います」
このチーム全体での成長については、町田も大きな自信を見せる。「試合に出ていないメンバーも毎日、練習を必死にやってくれました。自分たちの役割をみんなが見つけ、個人の気持ちを押し殺してチームのためにやってくれていました。そこが絶対に今シーズンのチームを強くした理由だと思います」
第5戦、宮澤は13得点9リバウンド4アシストを記録。ファイナル5試合の平均でも12得点、8.2リバウンド、3.8アシスト、3ポイントシュート成功率42.3%と、攻守に渡って安定したプレーを見せた。だが、本人は優勝会見において「個人としてはデンソーさんのローテーションが早くて中々、3ポイントを打つチャンスがなかったです。その中でも自分にできることを試合を通してできたと思いますが、今日に限らずイージーシュート、ターンオーバーのところなど修正点はたくさんあると感じたファイナルでした」と語るなど、全く満足していない。
この宮澤の自分への厳しさ、飽くなき向上心は、間違いなくチーム全体の意識の高さを引き上げるのに大きく貢献している。今、Wリーグで最も勝利の女神に愛されている宮澤の下、富士通はリーグ連覇、皇后杯との2冠達成を成し遂げ王朝を樹立した。