29得点12リバウンド、最後の10得点をすべて挙げる
12月14日に行われた皇后杯の準決勝では、アイシンウイングスが渡嘉敷来夢の決勝点によりトヨタ自動車アンテロープスとの最後までもつれる激闘を58-56で制した。
試合の立ち上がり、渡嘉敷が第1クォーターだけで10得点とゴール下を制圧することでアイシンが21-16と主導権を握る。しかし、第2クォーターに入ると、トヨタ自動車の前から激しくプレッシャーをかけるディフェンスにガード陣が苦しみ、オフェンスが停滞。そしてトヨタ自動車の山本麻衣、安間志織にタフショットを決められ、32-33と差が付かないまま前半を終えた。
後半に入っても互いに相手のディフェンスを切り崩せず、ロースコアの我慢比べの展開が続く。第4クォーター残り35秒で56-56の同点、トヨタ自動車のポゼッションで、安間のシュートが外れた後のルーズボールがエンドラインを割り、一度はトヨタ自動車のボールとコールされるが、アイシンの近藤京が弾いたボールがトヨタ自動車の選手に当たってアウト・オブ・バウンズになったと見たアイシンの梅嵜英毅ヘッドコーチは、コーチングチャレンジを実施。これが功を奏し、アイシンボールに判定が変わる。
そして迎えた残り4.6秒、アイシンが選択したオフェンスは、サイドラインからスローインする吉田亜沙美が、他の選手が外に開いてゴール下にいる渡嘉敷に小細工なしでパスを投げるシンプルなもの。渡嘉敷は一度ゴール下を外したものの、すかさずプットバックで押し込んでアイシンが競り勝った。
この試合、渡嘉敷は「しんどいですが下がるという選択肢はありません」と40分のフル出場でフィールドゴール16本中12本成功の29得点、さらには12リバウンドを記録。決勝点を含めアイシンの最後の10得点を挙げる圧巻の勝負強さを見せた。
勝因を渡嘉敷はこう語る。「やっぱり一番は近藤選手がルーズボールに飛び込み、梅嵜さんがコーチングチャレンジをコールしてくれたこと。あとは最後、スタッフとチームメートが自分に得点を任せてくれた。みんなが自分を信じてくれた結果です」
「トヨタさんはすごく気持ちが強かったですが、自分たちも声を出して誰一人下を向くことなく戦い続けたことでこういう結果になったと率直に思います」
「自分の力を120%、140%へと引き上げてくれる」
吉田亜沙美は決勝点の場面で出したパスをこう振り返る。「ここで逆転したらめっちゃカッコ良いですし、絶対にパスを取ってくれると思っていました。タイムアウトの時、タク(渡嘉敷)が裏パスでも良いと言ってくれ、あそこに投げれば取ってくれるのは分かっていたので、投げやすかったです」
渡嘉敷本人は「シンプルにトヨタさんは前を閉めてくるので、裏に行って4秒あるから好きに使えと言われました」と説明する。
そして、次のように安堵している。「ラッキー、行けるなと思ったら後ろからブロックに飛んできた選手がいて、力が入ってシュートを外してしまいましたが、その後でリバウンドを取って決めれば誰も文句は言わないだろうと(笑)。ここで外したら自分がアイシンに来た意味は何なのかとなるところで、本当に決めきれて良かったです」
今シーズン開幕前、渡嘉敷は2010-11シーズンから在籍し、数々の栄光を勝ち取ったENEOSサンフワラーズからアイシンへの移籍を決めた。ENEOSと違って成功体験の乏しい若い選手たちを牽引し、移籍1年目にしてこれまで皇后杯ベスト8が最高成績だったチームをいきなり決勝へと導いた。大きく環境が変わる中でも、傑出した支配力を発揮しているのは驚異的だ。
同じくENEOSから加入した桜花学園からの盟友、岡本彩也花とともに渡嘉敷の大きな支えになっているのは、ENEOSや日本代表でも一緒に戦ってきた吉田だ。2020年以来となる吉田との共闘に、渡嘉敷は「自分を信じてパスを出し続けてくれるところは変わってないなと思います」と笑顔を見せ、岡本と吉田への絶大な信頼を強調する。
「自分の力を100%から120%、140%へと引き上げてくれるのは吉田さんだったり、ずっと一緒にプレーをしている岡本のパスだと思います。その期待には絶対に応えたいです」
決勝の相手は、昨シーズンのWリーグ王者で、今シーズンもここまでレギュラーシーズン1位の大本命、富士通レッドウェーブだ。ちなみに両チームは12月7日、8日とWリーグで対戦し、富士通が88-45、67-51と連勝している。だが、今のアイシンにはこれまでにない勢いがある。アップセットのためには若手のステップアップが不可欠の中、渡嘉敷は「若手はシンプルに思い切りやってくれればいいです」と言い切る。
「初めてのファイナルの舞台を経験することで、個人としてもチームとして成長できます。ファイナルを楽しんでほしい、空いたら思いっきりシュートを打つ、行けると思ったら行ってほしいです。ミスを恐れたらプレーできないです。ミスをしたらベテランがカバーすればいいだけです」
富士通の有利は間違いないが、渡嘉敷がいることで、アイシンの『番狂せ』も十分にあり得ると感じずにはいられない。
バスケ #皇后杯 準決勝 第2試合#アイシンウィングス × #トヨタ自動車アンテロープス
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アイシン 1 #渡嘉敷来夢
勝ち越しゴールをねじ込む!!!
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— NHKスポーツ (@nhk_sports) December 14, 2024