岸本隆一

Bリーグの10年、最初と最後の試合でプレーする唯一の選手に

5月16日、琉球ゴールデンキングスは名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのチャンピオンシップセミファイナルのゲーム2に90-74と快勝し、5年連続のファイナル進出を決めた。

試合の立ち上がり、琉球は名古屋Dの激しいディフェンスに苦しみ第1クォーターだけで6ターンオーバーを献上し、スムーズなオフェンスを展開できない。しかし、ハッスルバックを徹底するなど、集中力を切らさないディフェンスによって速攻からの失点を防いでいく。そして岸本隆一が要所で3ポイントシュートを沈めることで主導権を渡さなかった。その後も琉球はチャンピオンシップに入って切れ味鋭いドライブを続けるデイミアン・ドットソンを軸にインサイドで得点を重ねることで突き放すが、名古屋Dも古巣対決に燃える今村佳太の連続得点で食い下がる。

後半に入り、琉球はフィジカルバトルを制すだけでなく、名古屋Dのトラップディフェンスにも慣れて冷静な対応ができるように。こうして相手にビッグランを与えないことで、自分たちのペースに持ち込んだ。そして攻守でアグレッシブなプレーを見せる琉球に対し、名古屋Dは徐々に遂行力が落ちていった。危なげない試合運びを見せた琉球が、前日に続いての連勝でシリーズを制した。

琉球の大黒柱である岸本は、3ポイントシュート4本成功を含む15得点4リバウンド4アシスト2スティールと攻守に渡る活躍。これでシーホース三河戦を合わせたチャンピオンシップ全4試合で3ポイントシュートを3本以上成功させた。本日も第3クォーター終了間際に、リードを15点へと広げるオフバランスのタフスリーを決めるなど、試合の流れに大きな影響を与える勝負強さを見せた。

岸本は「ホームでしっかり勝ててファイナル行きを決められて、すごく充実した気持ちです。ただ、本当にここがゴールではないので、もう1回気を引き締めてファイナルに向けて準備をしていきたいです」と総括する。

これで岸本は10年前の歴史的開幕戦でコートに立ち、来季からBプレミアと新たなフォーマットに変わる前の最後の試合であるファイナルでもコートに立つ唯一の選手となった。この事に岸本は、「Bリーグ開幕の最初の試合と、Bプレミアになる前の今のBリーグとしての最後の試合でプレーできるのは、これも何かの縁なんだろうと感じています」と語る。

岸本隆一

「何よりも地元の子どもたちにとって自分がどうあるべきか意識してきた」

10年前の琉球は、NBLに比べて選手のタレント力で劣ると見られていたbjリーグに所属していたため、『雑草軍団』と評されるアンダードッグの存在だった。そこから5年連続ファイナル進出の実績が示すように、この10年間でリーグ随一の常習軍団と見事なステップアップを遂げ、一つの歴史の終わりとなる大舞台に駒を進めた。この素晴らしいプロセスのすべてを知る岸本だからこそ、次の想いを持ってコートに立つ。

「Bリーグ開幕の時と今では、自分たちの見られ方も少しずつ変わってきたと思います。そこに至るまでには本当にたくさんの人たちが力を尽くしてくれた結果が今に繋がっています。個人的には変わってはいけないこと、変えないといけないことについて、常に自問自答しながらここまで来ました。ファイナルに必要以上に感情的になることはないと思います。ただ、今までのBリーグの歴史の中でもキングスに関わってきた人たちが報われるようなファイナルになったらいいと思います」

この試合には、クラブ主観試合では最多となる8,827人が集まった。その中には少なくない数のバスケ少年、少女がいたはずだ。サンロッカーズ渋谷のジャン・ローレンス・ハーパージュニア、琉球の崎濱秀斗のように、岸本のプレーに大きな影響を受け、プロとなった沖縄出身の選手たちが今日の観客から生まれても驚きではない。

「僕らが存在する意味は、応援してくれている方々のおかげだと思っています。個人的には何よりも地元の子どもたちにとって自分がどうあるべきか意識してきたつもりです。今日に限らず、これまでの戦いから何か感じてくれたらうれしいです」

こう語る岸本は、さらに未来の琉球を背負う可能性を持った原石への想いを続ける。「最近は小学生と触れ合う機会も少なくなっていますが、特に沖縄の子どもたちにはもっと生意気になってほしい。僕は割とそういうタイプだったので、今のキングスを見ていて『いや、俺だってこれくらいできるし、もっとすごくなれる』と思ってもらえるのが、地元にプロチームがある良さだと思います」

「何年後になるかわからないけど、『あの時のCSを見ていました』という子どもたちが、このコートに立ってプレーする。そういうサイクルができて、どんどん繋いでほしいです。そして沖縄にとってより良い組織、存在であり続けてほしいです」

岸本はいろいろな想いを胸に秘めてファイナルに臨む。昨シーズンはケガでプレーできず味方に声援を送ることしかできなかった苦い経験も踏まえ、次のように意気込んだ。「今シーズン、積み重ねたものをまずは来週のファイナルにぶつけたい。そして昨年はケガで出られなかったので、純粋にプレーできる喜びを噛み締めてプレーしたいです。良くも悪くも何があるのかわからないですが、自分たちにとって望まないことでも力に変えられるように、しっかり気を引き締めて準備をしていきたいです」