安定感あるガードの補強がアデトクンボを納得させる?
アミア・コフィーはクリッパーズとの3年1100万ドル(約17億円)の契約が満了を迎えた。2019年のNBAドラフトで指名を受けられず、2ウェイ契約でクリッパーズに加入。3年目には69試合に出場して30試合では先発も務めるブレイクを果たし、標準契約を勝ち取った。
この6シーズン、クリッパーズはロスターが様々に入れ替わり、チームの好不調も激しかったが、コフィーは長身とウイングスパン、フットワークを生かした粘り強いディフェンスに加え、キャリア通算38.4%の3ポイントシュートで、チームを支え続けてきた。
派手ではないが、どんな試合展開でもチームに貢献できるロールプレーヤーは重宝されるもので、今オフもクリッパーズに残留すると思われたが、クリッパーズはベテラン最低年俸額で契約できるロスターの最後の1枠をクリス・ポールに使った。かつての『ロブ・シティ』に君臨した司令塔の帰還は、ジェームズ・ハーデンに続くハンドラーという戦力の面とはまた異なる価値がある。
こうしてフリーエージェント市場に出たコフィーは、バックスとトレーニングキャンプ契約を結んだ。昨シーズンのコフィーは72試合に出場し、24.3分のプレーで9.7得点、3ポイントシュート成功率は40.9%を記録。守備でのハードワークも考慮すれば、多くのチームが欲しがる人材だ。クリッパーズの判断が遅かったために新チーム探しで後手を踏むことになったが、このまま彼がバックスのロスター枠を勝ち取るのは間違いなさそうだ。
指揮官ドック・リバースはかつてクリッパーズを率いていた時期に、2ウェイ契約の若手だったコフィーの才能を見いだして育てたコーチだ。またデイミアン・リラードが去ったバックスで先発ポイントガードを務めると予想されるケビン・ポーターJr.は、昨シーズン前半はクリッパーズでコフィーとバックコートコンビを組み、息の合った連携を見せていた。コフィーはクリッパーズ以外のチームで初めてプレーすることになるが、指揮官リバースと相棒ポーターJr.の存在は、チームへの順応を大きく助けるはずだ。
その一方で3年目を迎えるアンドレ・ジャクソンJr.の立場が微妙になっている。バックスは7月に設定されていた彼の3年目の契約保証日を新シーズンの開幕まで延長した。リズムに乗れば攻守に素晴らしいパフォーマンスを見せるものの、とにかく安定感に欠けるジャクソンJr.を外し、抜群の安定感を持つコフィーを加えることは理にかなっている。
ジャクソンJr.はまだ23歳で成長の余地は大きいが、バックスのフロントとしては来年オフには契約問題が浮上するヤニス・アデトクンボを納得させるチームを作り上げるのが最優先で、リラードが退団したガードのポジションで若手の成長を待っていられない。現状では『机上の計算』でしかないものの、コフィーは今のバックスに完璧にフィットする補強になりそうだ。