「小さいチームでも勝てることを証明したい」

ウインターカップは全国から様々な個性を持ったチームが集まる。その中でも他のチームとは一線を画す組織力を披露したのが九州学院だった。個の打開力に頼ることなく、5人が阿吽の呼吸で連動することで守備のズレを作り出し、次々にオープンシュートを放つセットオフェンスを展開。また、ディフェンスにおいても相手の強みをチームでしっかりと守る質の高いプレーが光っていた。

3回戦の鳥取城北戦でも攻守に渡って九州学院は、自分たちの持ち味を発揮した。終了間際に劇的な3ポイントシュートをくらい76-77と痛恨の逆転負けを喫したが、留学生不在で190cm以上の選手がいないチームがインターハイ王者と互角の勝負を演じた。

18得点4アシスト3スティールと攻守で活躍した背番号4の山口幹太は「留学生がいなく、身長が小さいチームでも勝てることを証明したいと戦ってきました。自分たちの目標であったメインコート(ベスト8進出)を超えることができなかったのはとても悔しいです。目の前に勝利があったところかひっくり返されてしまいましたが、一つひとつのミスが最後に響いてしまったと思います」と試合を振り返る。

17得点を挙げた背番号9の井上智稀は、この試合でバスケット・カウントを獲得した後、フリースローを下手投げで放ったが、これは大会前に負傷した右手の影響によるもの。「1回戦は右手でシュートを打ちましたが、悪化してしまい昨日の2回戦や今日は左手でシュートを打ったり、フリースローも下から打ちました」と明かす井上は、「ケガをしましたが、周りの方たちのおかげで試合に出られるようにしてもらいました。勝ちたかったですし、勝てる試合を落としたのがすごく悔しいです」と続けた。

悔しさが一番にあるにせよ、高校生チームとしては頭一つ抜けたクオリティで見る者をうならせたセットプレーについて山本は手応えを語る。「セットプレーは何十種類もあって、やっぱり覚えるのはきつかったですが、チームメートと一緒に頑張ってやってこられました。毎日練習して完成度を高めたセットプレーを、この大会で発揮できたかなと思います」

井上もこう振り返る。「オフェンスだけでなく、ディフェンスもいろいろとルールがあってミスをしたらすぐに修正を繰り返してみんな覚えていく感じでした。留学生がいなくて高さの不利を補うためにいろいろとやることはありました。その中でシュートを決め切る、リバウンドを取り切るためにメンタル面も鍛えられました」

「この悔しさを大学でぶつけていきたい」

2人が語るように、様々なセットプレーは一朝一夕で会得できるものではない。だからこそ、九州学院の選手たちは強い気持ちを持って大会に臨んでいた。「インターハイは1回戦で負けてしまい、そこから死にものぐるいで練習をしてきたのでウインターカップは簡単に負けられない。『なんのためにこんなきつい練習をしてきたんだ』と思って挑みましたが、負けてしまって悔しいです」と山本は語るが、彼らの洗練された組織プレーは多くのバスケットボールファンの心に響いたはずだ。

チーム全体の結束力も九州学院の武器の一つだが、特に山本と井上は中学時代も長崎ヴェルカU15で一緒にプレーをした。中学3年時にはJr.ウインターカップに出場し、2回戦で準優勝した横浜ビー・コルセアーズU15に惜しくも3点差で敗れる好チームだった。井上は山本について「幹太とは小学校時代は同じ地区で戦うライバルでした。そこからずっと負けたくない存在で、今は本当に頼れるシューターです」と語る。

山本は井上との関係をこう振り返る。「ずっと一緒にいて井上がどんなプレーをしたいのかわかる仲です。その上で、彼は個人のスキルが高いし、自分にない運動能力もあってどうしたら井上に勝てるかなというライバル意識もありました。井上と同じ高校で3年間できたことは自分にとって本当に大きかったです」

九州学院のバスケットボールは高校生らしからぬ洗練されたモノだったが、この質の高いチームバスケは高校生らしい濃密な絆によって生み出された。本人たちは結果に満足していないだろうが、全国の舞台において留学生がいない、身長が小さいチームでも勝てる術があることをしっかりと証明し、グッドルーザーとして強烈な印象を残したチームだった。

最後に山本は「大学でもプレーを続けます。自分の武器であるシュート力を生かして、この悔しさを大学でぶつけていきたいと思います」と語ってくれた。優れたバスケットボールIQを身につけた九州学院の選手たちが、次のステージでどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。