古川宏一郎

「次はスポーツに関心のある40代をどう取り込むか」

──実際にバスケ界に入ってみて、その印象はいかがでしょうか。

協会とリーグが一体になって様々な取り組みがされているというのは、他のスポーツと比較して特筆すべき点だと思います。また、新しいプロリーグとして順調に成長してきていますが、今後の成長にも大きな可能性を感じます。2019年にはワールドカップに21年ぶりに自力での出場権を獲得しました。来年の東京オリンピックは45年ぶりの出場です。2023年には3カ国共催ながら自国開催のワールドカップがあって、2026年はBリーグの10周年、2030年はJBAの100周年と、数年おきに大きなイベントがあることは成長の大きな要因になります。

──ここからBリーグのファンを増やすため、どんな層を狙ってアプローチをしていきますか?

ファンを増やしていくには、まずは認知関心度を上げていくことが必要になります。入場者数は伸びていますが、認知関心がそこまで伸びていないのがBリーグの課題でもあります。ファンベースが大きくなるのと入場者数が伸びるのは、最初の段階では少し時差が生まれるものだと思っています。今は全体の傾向として、最初に好きになってくれた方々がリピーターになって全体の入場者数増を支えていただいているという構図になっています。

Jリーグだと自分と同じ世代、40代の男性が圧倒的に多くて、それは高校生や大学生の時にJリーグがスタートしてそのまま応援している人たちに支えられており、若年層、女性層の新規ファンの取り込みが課題で、その層を取り込めているBリーグがうらやましいと思って見ていました。Bリーグに来て思うのは、逆にその40代のファン層をつかんでいるJリーグの強みです。まず絶対数としての人数が多いし、金銭的に余裕がある人も多く、家族連れで来てくれる人たちもいる。そして年齢的にもあと15年はスタジアムに足を運んでくれます。もちろん若い世代のファン層は誰が見ても欲しい層ですし、Bリーグの強みとしても維持しなければなりませんが、ファンの拡大を考えた時、次はスポーツに関心のある40代をどう取り込んでいくかを考えなければいけません。

現在、人はテレビ、新聞に加え、スマホやパソコンなどいろんなメディアに1日10時間ぐらい接していて、広告、プロモーションとして1万通のメッセージを受け取っていると言われます。それだけの情報に接していると、ほとんどはノイズとして処理されることになり、自分が興味関心があるものだけしか届かない状況です。興味関心がないものた、積極的に情報として追いかけていないものを認識してもらうきっかけとしては、友人や同僚といった周りの人たちから「これ面白いよ」と推薦してもらうことが多いようです。

──ただリーグとしては、ファンがインフルエンサーの役割をしてくれるのを祈って待つわけにはいかないですよね。

私もタレントやインフルエンサーの方々を起用してきたこともありますが、必ずしも期待通りの効果を常に得ることができたわけではありませんでした。ファンの方々は本当に自分たちも好きなんだ、という説得力があります。今バスケを好きな人たちが周りの人たちに「バスケって面白いよ」ともっと発信していく、ファンの人たちにインフルエンサーになってもらうための仕掛け、取り組みが必要になります。そのために他の人にも共有したいと思えるような話題を作り、耳に残るようなコピー、伝えやすいメッセージを開発して発信していくことが大事だと思っています。そして、共感してもらうためにBリーグの商品価値であったり、他のスポーツとは違うユニークな価値を定義、言語化して、ファンになってもらいたい人たちにメッセージを発信していくためにも、そのためのブランディングが大事になります。