
3人の2ウェイ契約選手の奮闘でウォリアーズを撃破
NBAドラフトでより良い順位の指名権を得るためにわざと負けるタンキングは、チーム強化の戦略としてアリなのかナシなのか。そんな議論が過熱するNBAにおいて、ジャズは堂々とタンキングをしている。今年のドラフトが豊作と言われる以上に、1巡目指名権は9位以下だとサンダーに譲渡されるとあって、他のチーム以上に負けることに意味がある。
現地3月9日のウォリアーズ戦、私服でベンチ裏にいたのは肩の手術ですでにシーズン終了となっているウォーカー・ケスラーだけではない。エースのラウリ・マルカネンも期待のルーキーのエース・ベイリーも、ベテランセンターのユスフ・ヌルキッチも欠場していた。
接戦の第4クォーターで、残された主力であるキヤンテ・ジョージはプレーせず、ブライス・センサボーも3分半しかプレーしないという疑わしい選手起用もあった。しかし、フロントが中長期的視点で負けることを願ったとしても、ヘッドコーチのウィル・ハーディが負けるための采配としたとは考えたくない。ボックススコアを見ただけでは不可解なこの選手起用にも理由があった。ベンチ組がスタメンより勢いがあったのだ。
とは言え、ケガ人が多すぎてベンチの層は薄い。大ベテランのケビン・ラブを除く3人はいずれも2ウェイ契約の選手。オスカー・シブエは3年目、イライジャ・ハークレスは2年目だが、ブレイク・ヒンソンは26歳ながら1カ月前にNBAデビューを飾ったばかりだ。
その3人が、ウォリアーズとの接戦を制する原動力になるのだからバスケは分からない。ジブエは20分の出場で10得点8リバウンドを記録。控えとしては十分な数字だが、実際はドレイモンド・グリーンやギー・サントスを相手にティップでボールを繋ぐ場面も多く、スタッツ以上にハッスルが目立った。ハークレスは24分の出場で16得点6アシスト。こちらも数字以上に執拗なディフェンス、オフェンスで攻め手を見いだせない時に仕掛けてフリースローで得点を繋ぐなど渋い働きを見せた。
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— Utah Jazz (@utahjazz) March 10, 2026
3人の中で最も経験の浅いヒンソンは、28分の出場で12得点を記録。同点の残り30秒でグリーンのシュートチェックをモノともせずに3ポイントシュートを決めきり、接戦を勝ちへと持っていった。
「シュートが僕の仕事だ。自分の仕事をしたまでだよ」とヒンソンは語る。彼はこの日がNBAでの8試合目。経験のない彼がすでに2桁得点を5度記録できたのは、主力を欠くジャズでチャンスが回って来るからだ。「ようやくチームに馴染んできた。僕が知らないことに気を配り、忘れていれば丁寧に教えてくれるチームメートにはいくら感謝しても足りないよ」
今回の活躍は、かつて傘下のGリーグチームでプレーしていたウォリアーズへの恩返しでもある。「あそこでの経験がなければ、今の僕はない。コートの中でも外でも、僕の選手としてのキャリアだけでなく人生において、非常に重要な学びを与えてくれた」
「僕はGリーグにいる時も、こうしてNBAにいる時も、すべての経験から学びを得ようとしている。こうしてチャンスを得られて本当にうれしいんだ」
下積みが長かっただけに、今こうしてNBAのコートで自分の力を発揮できているのは何より喜ばしいこと。ヒンソンにとって2ウェイ契約の仲間は大きな存在だ。「EJ(ハークレス)とオスカーと3人揃って活躍できるのは誇らしい。僕らは小さな家族みたいなもので、誰もがみんなの成功を願っている。僕も彼らの活躍を本当にうれしく思っているよ」
指揮官ウィル・ハーディは、こんな言葉で2ウェイ契約の3人を称えた。「我々がどのような人材をチームに求めているか、3人を見れば分かってもらえると思う。プレースタイルはそれぞれ異なるが、全員がチーム優先で物事を考え、そして勝つことにこだわっている」
思いがけぬ勝利にフロントは苦い顔をしているかもしれないが、ホームのデルタ・センターに集まった1万8000人の観客が喜ぶ姿を見れば、気持ちは変わるはずだ。チームはまたも勝てないシーズンを過ごし、主力の多くが欠場し、この試合ではステフィン・カリーを見ることもできない。それでも彼らはアリーナに足を運び、熱心に応援した。2ウェイ契約の3人は自らのキャリアを切り開くために奮闘して結果を出し、ファンの期待に応えた。