レバノン国民

アジアカップでは大会随一の熱狂的ファンが詰め掛ける

『FIBA アジアカップ 2025』でバスケットボール男子日本代表は、レバノン代表に大敗を喫し大会を終えたのは記憶に新しい。これまで日本バスケットボール界にとって、レバノンはアジアを代表する強豪という認識を持っていても、長らく国際大会で対戦することもなく接点が少ない印象だった。

しかし、今秋から開幕するBリーグではアジア枠の対象国にレバノンが新しく追加された。その結果、B1では今回のアジアカップに出場したセルジオ・エル ダーウィッチ(仙台89ERS)、アリ・メザー(秋田ノーザンハピネッツ)、オマール・ジャマレディン(川崎ブレイブサンダース)。B2にはカリム・エゼディン(横浜エクセレンス)、ナイム・ラバイ(鹿児島レブナイズ)と、一気に5選手がプレーすることになった。

日本は、11月24日から開幕する『FIBA ワールドカップ 2027 アジア予選』において、1次ラウンドで中国、韓国、チャイニーズ・タイペイと同じグループBに組み込まれた。ここで上位3位までに入り、2次ラウンド進出を果たすと、レバノン、カタール、サウジアラビア、インドで構成されるグループBの上位3チームと対戦。現在のチーム状況から見て、2次ラウンドに進んだ際にはレバノンと激突することが有力視されている。そのようなことから、レバノンバスケ界との関わりが一気に増大している傾向にある。

今大会を取材していたレバノン出身のジャド・アルハジ記者に、代表でプレーした3名がどんな選手か尋ねると、次のように教えてくれた。「セルジオはリーダーであり、オールラウンダーです。オマールはアスレチックな能力が高く、ディフェンスも得意。アリはプレーメーカーで、ハッスルプレーが持ち味です」

また、レバノンの選手たちのBリーグ挑戦を「彼らにとって良い経験となり、(世界のバスケットボール市場において)露出が増えることになります」と好意的にとらえている。レバノンもバスケットボール人気は高いが「Bリーグは、レバノン国内のリーグと比較して、収容人数が多いアリーナを持つクラブが多数存在します。レバノンでも5000人規模のアリーナをホームゲームとして利用するチームはありますが、限られています。Bリーグはチーム数も多くてより規模が大きなプロフェッショナルリーグで、地域に密着している印象です。スタジアムの演出などエンターテインメント性も上だと思います」

そしてアジアカップにおいて、レバノンファンはフィリピンと並び出場チームで随一の熱狂的なファンが詰めかけていた。フィリピンの場合はサウジアラビアに出稼ぎに出ている人たちが多く、その人たちが会場に詰めかけていた模様。だがアルバジ記者によると、レバノンファンの大半は本国から応援に駆けつけてきた人々だという。太鼓を叩く人のリズムにあわせ、試合中はずっと大きな声で選手たちをサポート。チームが勢いに乗るプレーをすると盛り上がり、ハッスルプレーにも惜しみなく声援を送るなど、選手たちがより盛り上げてほしいタイミングで応援の熱が高まっていた。まさにバスケットボールを良く知る応援団であり、さらに女性や子供も多く世代、性別ともバラエティーに富んでいたのも印象的だった。ワールドカップ予選にてレバノンのホームで試合を行った場合、この応援団で会場が満員となる環境は過酷なこと間違いない。

今大会のレバノンは、日本における河村勇輝と同じく絶対的なエースガードのワエル・アラクジが不在だった。その中で日本は大敗を喫したように、本当に手強い相手だった。だからこそ現役の代表選手たちがBリーグに参戦し、彼らと日常的に戦えるのは日本バスケ界にとっても大きなプラスだ。新シーズンのBリーグで、レバノン出身の5選手がどんなインパクトを与えてくれるのか、より楽しみになるアジアカップとなった。