デイビオン・ミッチェル

指揮官も脱帽「彼の精神的な強さがあってこそだ」

第8シードを争うプレーイン、ホークスは前半に良いチャンスを作っても3ポイントシュートがリングに嫌われ、第2クォーターに最大17点差のビハインドを背負い、苦戦を強いられた。しかし、ミスが多くても下を向かず、攻撃でも守備でも果敢な挑戦を続け、第3クォーター途中からついに3ポイントシュートに当たりが出ると一気に追い付いた。2点ビハインドの第4クォーター残り11秒からは、今シーズンを通してアシストを重視してきたトレイ・ヤングが、パスの気配を出しながらのドライブレイアップを冷静に決め、106-106で延長に持ち込む。

この時点で勢いはホークスにあった。負けたらシーズン終了の一発勝負でプレッシャーも重く圧し掛かってくる。その悪い流れを断ち切ったのはデイビオン・ミッチェルだった。ジミー・バトラーを中心とする大型トレードの一部としてラプターズからヒートに移籍したキャリア4年目のミッチェルは、フィジカルの強さを生かしたタフなディフェンスが持ち味のガード。ヒートではベンチスタートではあっても、ディフェンスでチームに勢いを与える役割を担い、その激しさがヒートのチームカラーにハマって存在感を増していた。

その『守備専任』の選手が勝利の立役者となった。思い切り良く放ったプルアップジャンパーを沈めた次のポゼッションで、ヤングに強烈なプレッシャーを仕掛けてトラベリングを誘発する。続く攻撃ではタイラー・ヒーローのアシストを受けて2本連続となる3ポイントシュートを決めた。これで115-108とホークスを突き放し、6点差で迎えた残り1分からの攻めでは3ポイントシュートを外すもオフェンスリバウンドを自ら拾い、チームで回したパスが自分に戻ると続く3ポイントシュートを成功させた。残り24秒で123-114、プレーオフ進出を決定付ける大活躍だった。

ヘッドコーチを務めるエリック・スポールストラは、「競争心が強く、パッションをチームに注入してくれる選手だ」という言葉でミッチェルを評価した。「このチームには情熱を内に秘めるタイプの選手が多いけど、デイビオンは仲間たちの闘志を引き出す。今日の彼は前半は調子が良くなかった。それでも全力でプレーし続け、延長で大きな波に乗った。彼の精神的な強さがあってこそだ」

ヒートはプレーオフのファーストラウンドでキャバリアーズに挑む。「キャブズはレギュラーシーズンを通して最高のバスケをやってきたが、我々は挑戦する。選手たちには挑戦を楽しんでもらいたい」とスポールストラは言う。

今シーズンは苦労の連続だったが、様々な苦境を乗り越えてプレーオフまで来たんだ。今はこの苦境がチームにとって大事な贈り物だったと思う。選手たちにはこの3カ月でチームがどれだけ成長したかをもう一度思い出してもらいたい。そして、相手を研究しすぎて対策をやりすぎることなく、この舞台でプレーする喜びを感じながら、思い切って挑戦してほしい」