
富山グラウジーズは、りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 B2リーグ戦を38勝22敗のB2東地区2位で終え『りそなグループ B2 PLAYOFFS 2024-25』(以下、プレーオフ)のクォーターファイナルでベルテックス静岡と対戦する。5月3日に迫ったプレーオフに向けて、現在のチーム状況や意気込みを宇都直輝に聞いた。
「全員が主体的に速い展開を作っていくのが重要」
──今シーズンはダビー・ゴメスヘッドコーチを新たに迎え入れ、外国籍選手と帰化選手も総替えでスタートしました。ここまでのチームの仕上がりを教えてください。
B1復帰を目指して始まったシーズンです。ダビー体制に変わって大変なこともありましたが、しっかり右肩上がりにチームは仕上がってきました。選手も変わりましたが、熟練度が増してきたと感じています。先日TK(トーマス・ケネディ)が欠場したときも、TKなしの戦い方が経験できて勉強になりました。プレーオフに向けていろんな戦い方ができている感触があります。
──プレーオフに向けての伸びしろと課題を教えてください。
チームとしてアウトサイドシュートのアテンプトが伸びればと思います。うちはゴール下が強くてディフェンスが収縮しやすいので、本来3ポイントシュートをもっと簡単に打てるはずです。アウトサイドの得点が伸びれば、もっと楽に2点が取れるようになるんじゃないかなと。もちろん僕も打たなきゃいけないですし、シューター陣もさらにしっかり打てるようになってほしいです。
──富山は2ポイントシュートの得点割合はB2トップクラスですが、3ポイントシュートは最下位です。3ポイントシュートのアテンプトを伸ばすためには何が必要ですか?
ダビーはシュートの精度に関して強く言うヘッドコーチです。それは僕たちをプロフェッショナルとして認めてくれるからこそではあるんですが、選手はメンタルを強く持って打たないといけません。ビビって打たないとドツボにハマっていくので、ある意味『怒られてもいいや』ぐらいの思い切りは必要です。
──ゴメスヘッドコーチが就任して、今まで以上にトランジションが強調されています。宇都選手もボールプッシュする場面が増えてやりやすいのではないでしょうか。
やりやすいですね。ただ、レギュラーシーズン終盤になって、一人ひとりがトランジションに対して主体的じゃなくなる時はチームがうまくいかないと気づきました。熊本ヴォルターズ戦(4月12日、13日)の1戦目は僕がそこまでプッシュしなかったんですが、2戦目は主体的にプッシュしていくことで良い流れが作れました。ウチは実力のある選手が揃っているからこそ、全員が主体的に速い展開を作っていくことがすごく重要だと感じています。
──おっしゃる通り、熊本との第2戦はファストブレイクに加えてセカンドチャンスでの得点も多く、富山の良いところが詰まったような試合でした。
シンプルに熊本さんが強かったので最終的な点差はそこまで開きませんでしたが、良い展開のバスケットができました。速い展開に持っていくために僕らがあの試合で1番意識していたのはリバウンド。リバウンドで負けてしまうと速い展開に持っていけないので、ディフェンスを一生懸命頑張ってリバウンドをとって、「さあオフェンススタート」と全員で意識できたことが結果に繋がりました。

「自分1人で富山を背負わなくてもいい」
──宇都選手は現在33歳。プロキャリアとしては中堅に入っていますが、バスケットボールに対する考え方やアプローチは変わりましたか?
ルーキーの時にはトヨタ自動車(現在のアルバルク東京)で「強いチームってこうなのか」と学びました。2016-17シーズンに富山に来て主力になって、弱い時期も勝てる時期もいろんなことを経験してきましたが、自分的には今が1番バスケットボールがうまいかなと思います。何をするにしても余裕を持てていますし、アウトサイドシュートは得意ではないですがその他のプレーの引き出しは多くなっています。
──若手の選手も増えました。チームメートに対してアプローチしていることはありますか?
もちろんリーダーシップは取ろうとしていますが、日頃の発言はキャプテンの藤永佳昭やダビーに任せています。ダビーは常にチームを引っ張ってくれますし、藤永はミスして落ち込んでる選手に声をかけて意識を上げようとしてくれるので。僕がやらなきゃいけないのはコート上でのリーダーシップですね。バスケIQがそれほど高くない選手もいれば、自信があってプライドが高い選手もいる。一人ひとりに合わせたアプローチで、その選手にとっての「良い兄貴になろう」と思っています。
──その結果、チームが変わったなと感じることはありますか?
これまでは「自分が富山グラウジーズを背負って頑張るぞ!」みたいな感じでしたが、今はみんなを頼って、自分1人で背負う必要はないなと思えるようになりました。チームメートとの関係性もよくなっていますし、チームの雰囲気も良い感じになってるかなと。おかげで自分も余裕を持てるようになりました。あまり気負いすぎなくて良いですし、チームメートを信じて頼るからこその良いプレーができていると思います。
──良い意味でエゴが少なくなったでしょうか。
今までもチームメートを頼っていなかったわけではないんですけど、これまでは全部のマークを自分に寄せてからシューターにパス出して「どうぞ打ってください」って感じでした。今はとりあえずポンっとパスして「お好きにどうぞ」みたいな時もあります。エゴがなさすぎて自分が何もせず試合に負けてしまうこともあったので、その塩梅がすごい重要ですね。もちろん行き過ぎてもダメだし、行かなくてもダメ。終盤になってバランスが取れるようになってきました。

「富山グラウジーズは僕のバスケ人生そのもの」
──プレーオフの初戦は、ゴメスヘッドコーチが出場停止でベンチにいません。影響はありますか?
もちろん影響はありますが、戦い方は変わりません。60試合戦ってきた中で、やらなければいけないことや、やってはいけないことはチームに浸透しています。ダビーいるいないに関わらず、いつも通りの戦いをしていくだけです。
──B2は最終節まで最終順位が決まらないほど混戦となっています。プレーオフを勝ち抜くためには何が必要だと考えていますか?
ダビーもずっと言っていますが、フィジカルなディフェンスと常に戦う姿勢を持つことです。ただ力任せにやるのではなく、自分たちからしっかりコンタクトしにいって、相手を好き勝手に動かせないことが重要になってきます。そんなフィジカルなディフェンスから、とにかく速く攻めることが自分たちのやりたいことなので、ティップオフの瞬間からそれをいかにできるかが重要です。
──富山は2026-27シーズンからのB.LEAGUE PREMIER参入は決定しているものの、実力でB1昇格を勝ち取れるのは今回が最後のチャンスです。
富山に来た時から、ずっと富山でてっぺんを目指して頑張る気持ちでやってきました。1度、富山を離れて戻ってきたときも同じ気持ちでしたが、結局チームをB1に残すことができなかったので、絶対にB1へ戻りたいという気持ちがあります。しっかり自分の持てる力を発揮して、お世話になった会社の人やスポンサーの方、ファンの皆さんに恩返ししたいです。チームをB1に復帰させたいという気持ちは、チームの中でも1番強いかなと思います。
──キャリアの大部分を富山で過ごし、残留プレーオフやチャンピオンシップ進出、降格などさまざまなことを経験しました。宇都選手にとって富山グラウジーズはどんな存在ですか?
僕のバスケ人生そのものと言っても過言ではないぐらいに、いろんな経験をさせてもらいました。「自分=富山グラウジーズ」と言えるぐらいの感じにはなってきています。バンビシャス奈良でプレーしていた時も、グラウジーズのことだけはずっと気にかけていました。
──最後にプレーオフへの意気込みと応援してくださる方へのメッセージをお願いします。
言い方は悪いですけど、もう何をしてでも勝ちたいし、どんな手を使ってでも勝ちに行って、目標であるB1復帰へ目がけてただただ全力で戦っていきます。もし自分が調子が悪くてベンチにいたとしても、いつも以上にチームを盛り上げて全力で声を出しますし、コートに立ったら1分1秒ムダにしないように全力で走り回ります。富山のファンの皆さんはめちゃくちゃ熱くて、いつも助かっています。B1復帰に向けて皆さんと戦っていきたいので、引き続き応援をお願いします。