
「試合をコントロールし、守備でエナジーを与えた」
4月23日、アルバルク東京はアウェーで宇都宮ブレックスと対戦した。A東京は立ち上がりから強度が高く連携の取れたディフェンスを見せ、リーグ屈指の爆発力を誇る宇都宮を前半わずか18失点に抑える。しかし、第3クォーターの立ち上がりに簡単に連続3ポイントシュートを許すと、そこから一気に崩れてこの10分間で29失点。第4クォーターはなんとか守備を立て直したが、ここ一番の決定力で違いを見せつけられ55-61の逆転負けを喫した。
A東京の指揮官デイニアス・アドマイティスは、「重要なのはバスケットボールの試合が30分ではなく40分であることです」と、第3クォーターの急ブレーキを悔いた。「メンタルタフネスを欠いた第3クォーターに、一気に持っていかれました。40分を通して戦わないといけないです」
それでも中心選手のテーブス海、現在3ポイントシュート好調の福澤晃平と、ポイントガードをこなす2人を欠く苦しい台所事情で、これまで出場機会が少ない岡本飛竜がステップアップしたのは収穫だった。
この試合、岡本はシーズンハイの22分24秒のプレータイムを記録。宇都宮の激しいプレッシャーディフェンスに対して堅実なプレーを続け、出場時間の得失点差は+2と見事な内容だった。アドマイティヘッドコーチも「とても良かったです。チーム全体でターンオーバー19は大きな問題ですが、彼のターンオーバーは0です。試合をコントロールし、守備でエナジーを与えてくれました」と、岡本のプレーを絶賛した。
岡本は次のように試合を振り返る。「アドコーチが何をしたいのか、これまでプレータイムが少ない中でも耳を傾け、チームとしての狙いを遂行することを意識しました。それが前半の18失点に繋がったと思いますし、自分の良さも少しは出せたと思います」
「ディフェンス面で違いを出せることが自分の強みなので、守備で爪痕を残そうと思っていました。オフェンスはチームオフェンスをしっかり遂行する。ポイントガードとして、ターンオーバーはシーズンを通して気をつけていることです」

「どんなチャンスも必ずつかもうと準備していました」
チームとしての狙いを遂行する、という言葉通りのプレーができたことは、先発した大倉颯太よりプレータイムが長く、クラッチタイムを任されたことが証明している。だが、岡本に満足感はない。「試合に出てもっと改善できる部分をつかめたことが、いつもと違うところです。この経験を生かしてもっと良い準備をしていきたい。やりきったみたいな気持ちはありません」
岡本はここまで22試合出場、プレータイムは平均4.4分と出番を得られず、出場してもガベージタイムということも珍しくなかった。32歳とベテランの彼にとって簡単な状況ではないが、「どんなチャンスも必ずつかもうと準備をしていました」と、いつ来るか分からないチャンスのためにハードワークを続けていた。
そこには彼のブレない信念がある。「試合に出られない日々は決して良いモノではありません。いろいろな葛藤があっても自分のケツを叩いて、ネガティブな気持ちに勝っていかないといけない。与えられた環境の中でより良い日々を積み重ねることしか、自分にできる道はないです」
4月16日のシーホース三河戦で3ポイントシュート4本を決めた福澤に続いて今回の岡本と、ベテランのステップアップは昨シーズンのA東京にはなかった武器だ。逆境から這い上がった彼らの勢いをチャンピオンシップの起爆剤として活用できるか注目したい。