コービー・ホワイト

2週連続で週間最優秀選手に、この間は29.3得点

レギュラーシーズン終盤戦、ブルズはプレーイン・トーナメントを少しでも有利に戦うべく順位争いを繰り広げている。

今シーズン開幕前にデマー・デローザンが退団したブルズは、今シーズンもなかなか結果を出せなかった。1月末の時点で20勝28敗、プレーオフには進出できても、そこで上を目指す見通しが立たない状況を受けて、ザック・ラビーンを放出。『ビッグ3』の残る一人となったニコラ・ブーチェビッチは攻守を支えるタイプで、新たにチームを引っ張る選手が必要だった。

そこで台頭したのがコービー・ホワイトだ。2019年のNBAドラフト1巡目7位でブルズに加入したホワイトは、ルーキーイヤーから優れた才能を見せていたが、身体の小ささと人の良さで損をして正当な評価を勝ち取れずにいた。

サイズがないのは仕方ないが、NBAという過酷な競争社会においてホワイトの優しさは弱点になる。彼はしばしば自分をアピールすべきチャンスを他の選手へと譲ってきた。泥臭い仕事に回り、チームを支える姿勢は大切だが、今のパフォーマンスを見れば『主役』向きなのは間違いない。

ホワイトがNBAで必要とされる冷酷さを身に着けたわけではない。デローザンが抜け、ラビーンが抜けたブルズで、彼は言わば『ところてん方式』でオフェンスのNo.1オプションになり、結果として眠っていたポテンシャルを引き出した。

今シーズンここまで33.3分の出場で20.3得点、3.6リバウンド、4.4アシストを記録。それでも2シーズン途中から突如として得点を伸ばしている。1月末までの42試合で20得点超えは19試合と半分以下だったが、2月以降の24試合では19試合で20得点超えを記録。3月10日から16日、17日から23日の2週連続で東カンファレンスの週間最優秀選手に選出され、この期間のスタッツは29.3得点とリーグトップレベルだ。

「前向きに生きていれば道はひらけるものさ」

『Chicago Sports Network』の取材に応じたホワイトは「数字が物語っている通り、今はキャリアベストのプレーができている」と語るが、その後は謙虚な言葉が続いた。「好調の理由はただ自由に、自信を持ってプレーできていることだと思う。それはチームメートやコーチが僕を信頼し、後押ししてくれるおかげだ。みんなが支えてくれると感じるからこそ、思い切ってプレーできる」

ブルズを率いるビリー・ドノバンは、6年目の彼がリーダーシップを発揮し始めたことを称賛しているが、彼自身にリーダーとしての意識はあまりない。「僕は3人兄弟の末っ子だからね」とホワイトは笑い、こう続けた。「チームは家族のようなもので、みんなで支え合っている。ウチの家族はみんな信仰心が篤く、常にポジティブな意識を持って支え合っている。それが僕のスタイルにもなっているんだ。何事も遅すぎることはない。世の中には嫌なことがたくさんあるけど、前向きに生きていれば道はひらけるものさ。信仰に頼り、日々の練習に打ち込み、試合で全力を尽くしていれば、いずれ自分の思うような展開になると思ってきた。そうやって出る結果が何であれ、それは神が与えてくださるものだし、僕はそれを信じる」

ブルズは長らく勝てていない。チーム作りが右往左往した結果、ホワイトは25歳にして今のチームで一番の古株となった。「数年前にこの状況は全く想像できなかったね。でも、すべての出来事には理由があり、神がそうお考えになったんだろう。僕はこのチームが大好きだし、本当に自分の家族と思えるほど居心地が良い」

「でも、居心地の良さに甘えていちゃいけないとも思う」とホワイトは意識の変化を語る。「今まで僕はリーダーシップを発揮するような場面でも発言しなかった。でも、今はその立場にいて、発言することが信頼に応える行動だと思う。僕は長い時間をかけて成長してきた。そのすべての経験が今の僕を支えている

ホワイトと同様にジョシュ・ギディーもブルズに加入し、重要な役割を与えられたことで素晴らしいパフォーマンスを見せている。ブルズを長い低迷期から救い出すのは、これから全盛期を迎える2人かもしれない。