荒尾岳

「みんな荒尾選手とプレーすることがすごく好きだと思います」

15日、千葉ジェッツはホームでレバンガ北海道と対戦。最大21点のビハインドから猛追するが、あと一歩届かずに64-70で敗れた。

試合の出だし、千葉Jは北海道の激しいプレッシャーに後手に周り、ボールムーブがない単発のシュートを繰り返して外す悪循環に陥る。対照的に北海道は、インサイドアウトによるボールが大きく動くチームオフェンスから高確率で3ポイントシュートを決める。千葉Jは第1クォーターで14-30といきなり大量リードを許し、第2クォーター中盤には20-41にまで傷口が広がる。

だが、千葉Jはここから富樫勇樹の連続3ポイントシュート成功、さらにクリストファー・スミスのブザービーターによって11点差にまで追い上げる。後半に徐々に追い上げた千葉Jは、第4クォーター残り約3分には3点差にまで肉薄した。だが猛追もここまで。最終盤にシュートを決めきれずに大逆転勝利を逃した。

千葉Jのトレヴァー・グリーソンヘッドコーチは、出遅れを敗因に挙げた。「出だしで相手のほうがアグレッシブで、シュートも入っていました。それに対してフィジカルで対抗できずに21点差がつき、自分たちで難しい試合にしてしまいました。第2クォーターの途中からは素晴らしいパフォーマンスでしたが、それを40分間継続することが大事です」

惜しくも同一カード連勝を逃した千葉Jだが、ポジティブな材料として挙げたいのが西村文男、荒尾岳の両ベテランの活躍だ。75-67で勝利した前日は、第4クォーターに西村、荒尾が出場していた時間帯で千葉Jは得失点プラス15と北海道を圧倒。このクォーターで28-16と大差をつけ、逆転勝利を収めた。

また、今日も第4クォーターになると、西村と荒尾が揃ってコートイン。2人がプレーした3分半で10点ビハインドを5点にまで縮める見事な繋ぎ役だった。グリーソンヘッドコーチは、両ベテランの貢献をこう称える。

「もっと長い時間、起用できたらいいですが、試合の流れだったり、フィジカルやインテンシティの問題もあります。2人はチームにとって大きな存在です。できればリードしている場面で使いたいところもありますが、どんな展開でも彼らは信頼できるベテランで、ロッカールームでの声がけも素晴らしいです」

荒尾は今節の2試合ともに、第4クォーターになって初めてコートインした。それまで全く試合に出ていない中、第4クォーターの緊迫した場面でいきなり起用することについては、グリーソンヘッドコーチも「(荒尾にとって)難しい使われ方だと思います」と認識している。だが、それでも「彼は究極のプロフェッショナルです」と荒尾に絶大な信頼を寄せているからこそ、指揮官は難しい起用法を選択できる。

「チームに必要なことをやってくれて、チームファーストで常にいろいろなことを考えてプレーしてくれます。また、みんな荒尾選手とプレーすることがすごく好きだと思います。今のところ、ローテーションで2クォーターにマイケル(オウ)選手、4クォーターに荒尾選手を使っています」

荒尾岳

「どんな状況でも自分の仕事を必ずやると決めている」

「今は流れが良くない時に出ることが多いと思うので、少しでも流れを変えられるように。これは今、チームが苦しい状況なので僕だけでなく、ベンチメンバー全員が思っていることです。なんとかスタートメンバーを助けようという気持ちでやっています」

このようにベンチメンバーの意識について語った荒尾本人は、自身の役割については次のように考えている。「攻撃力がある選手がたくさんいるので、彼らのためにスクリーンをかけることです。ディフェンスでは外国籍選手のところで、なるべくリバウンドを取られないようにすること。ファウルをうまく使って繋いでいけたらいいなと思っています」

4クォーターからの起用という難しい使われ方についても「今シーズンは後半から出ることが多いので、メンタル的に慣れてきた部分はあります」とコメント。「昔はもっと途中出場からすぐに動けたとも思ったりもしますが、ストレングスコーチと話して、なるべく良いパフォーマンスがすぐに出せるよう意識しています」としっかり準備できている。

そして、指揮官が絶賛する高いプロ意識、周囲へのサポートについては「あまり深くは考えていないです」と謙遜しつつ、何よりも苦しんでいる選手に寄り添うことを重視していると言う。「一番意識しているのは、苦しい時に下を向いてしまう選手が出てきたら早く気づいて声がけをすることです。自分が若い時、そういう状況で声をかけてもらえたことで切り替えがうまくできるようになったからです」

現在、千葉Jはジョン・ムーニー、ディー・ジェイ・ホグとリーグ随一のインサイドコンビが揃って故障離脱中という非常事態だ。彼らと同じビッグマンの荒尾としては、少しでも彼らの穴埋めをしなければ、とプレッシャーを感じずにはいられない状況だが、「どんな状況でも自分の仕事を必ずやると決めているので、そこで気持ちがあせったりすることはないです」と強い決意を見せる。「外国籍ビッグマンが休んでいる時こそ、より勝ちたい気持ちが自分の中ではあります。今は『あと2、3勝できた』という思いがあります」

荒尾は「みんなが言葉にするわけではないですけど、負けず嫌いだからこそチームに貢献したい、必ず勝ちたいという思いを持っていると感じます」と締めくくった。メンバーが揃わず苦しい状況が続く千葉Jだが、『困った時の荒尾頼み』として、コート内外で大ベテランの存在感はより大きくなっている。