ジェイレン・デューレン

「ケガ人が戻ってくればさらに勢いに乗れる」

今、デトロイトのスポーツファンの関心はNFLのデトロイト・ライオンズに向かっている。49ersとのシリーズを制することができれば、球団史上初のスーパーボウル進出とあって、その熱気は最高潮に達している。一方でNBAのピストンズは冴えないシーズンを過ごしており、リーグ記録の28連敗を含む5勝40敗でリーグ最下位。現地1月27には順位が下から2番目のウィザーズにあっさり敗れた。

それから一夜明けた現地1月28日は、デトロイトでNFLの大一番が行われる。それに先立ってデーゲームで開催されたピストンズの試合の相手は、西カンファレンス首位と勢いに乗るサンダー。ピストンズへの期待は小さく、空席が目立つアリーナにはライオンズのユニフォームを着たファンが何人もいた。

オールスターのスターター入りを果たしたシェイ・ギルジャス・アレクサンダーはこの日も好調で、若きエースに引っ張られるサンダーと比べ、膝の故障を抱えるケイド・カニングハムが連戦の2試合目を欠場するピストンズとの勢いの差は明らか。ピストンズは立ち上がりからリードを許し、第1クォーターを終えて24-31とビハインドを背負った。

しかし、第2クォーターに状況は一変する。優位が予想された試合で良いスタートを切った後、ペースを落とし、攻守の強度を緩めても大丈夫だという油断がサンダーに生まれた。翌日に控える西カンファレンスの首位決戦、ティンバーウルブズの試合に早くも意識が向いたのかもしれない。逆にピストンズは、2日連続でホームのファンに醜態を晒すわけにはいかなかった。指揮官モンティ・ウィリアムズは「相手の出来には関係なく、自分たちのバスケをやろうと選手たちには話していた。ただひたすら戦う、その姿勢が見られた」と語る。

サンダーのお株を奪うようにディフェンスで集中し、ボールを奪うと素早くオフェンスへと転じたピストンズは、第2クォーターを46-30として逆転し、第3クォーターにはシェイの13得点を含むサンダーの巻き返しに遭いながらもリードを保った。先に根負けしたのはサンダーで、第3クォーター残り2分半で一度シェイをベンチに戻したのだが、そこから第3クォーター終了までに86-100とピストンズに突き放されるとシェイをコートに戻すことはなかった。

第3クォーターまでは主導権が両チームを行ったり来たりするハイスコアの展開だったが、シェイが不在となった第4クォーターはサンダーが攻めの迫力を欠き、ピストンズはセーフティリードを保つべくペースを落としたために静かな展開に。それでもファンは予想外のピストンズのパフォーマンスに大喜びで、空席が目立つ中でも声援を送り続けた。

111-95とリードした残り5分半、ジェイレン・デューレンがフリースローを得ると、ファンは「ジャレッド・ゴフ」の名前をコールした。NFLライオンズで最大のスターで、チームをスーパーボウルに導こうとしているクォーターバックは、今のデトロイトで最もリスペクトされているアスリートだ。

2年目のデューレンは22得点21リバウンドの活躍でチームを勝利に導いた。「昨日の試合では不甲斐ないプレーをしてしまったから、出だしから全力で行って、試合を通してその勢いを維持しようとした」とデューレンは言う。彼にとってはキャリア初の『20-20』だが、試合後にその感想を問われると「いずれ達成できる数字だと思っていた。むしろ僕にとっては6アシストもできたことがクールだよ」と笑い、「真面目な話、勝てたことが一番うれしい」と続けた。

勝利の瞬間、ファンはスタンディングオベーションでチームの戦いぶりを称えた。デューレンはこう語る。「今日のような勝利は自信に繋がるよ。まだケガ人がいるけど、みんな戻ってくればさらに勢いに乗れるはずだ」