“最強の矛”の千葉Jと”最硬の盾”の琉球、両者の特長と弱点を数字で丸裸に!
この記事を開いてくれた全ての皆様、数字の沼へようこそ。 自称「日本一スタッツをとる素人」である私・しんたろうが、公式サイトのボックススコアから一歩踏み込んだ「アドバンスドスタッツ」を紹介・解説する。
それではさっそく2022-23シーズンラストゲームとなるチャンピオンシップファイナル、千葉ジェッツvs琉球ゴールデンキングスの試合展望を分析していこう。
◆今回利用するスタッツ
※各スタッツの詳細・計算式は参照記事に記載
・2FG%=2ポイントシュート決定率
・3FG%=3ポイントシュート決定率
・FT%=フリースロー決定率
・eFG%=実質シュート決定率(参照記事)
・TS%=フリースローを含むすべてのシュートの得点効率(参照記事)
・HOMEeFG%=ホームゲームにおける実質シュート決定率
・HOME2FG%=ホームゲームにおける2ポイントシュート決定率
・HOME3FG%=ホームゲームにおける3ポイントシュート決定率
・AWAYeFG%=アウェイゲームにおける実質シュート決定率
・AWAY2FG%=アウェイゲームにおける2ポイントシュート決定率
・AWAY3FG%=アウェイゲームにおける3ポイントシュート決定率 (以上6項目の参照記事)
・2PA%=2ポイントシュートを打った割合
・3PA%=3ポイントシュートを打った割合
・FTD%=フリースローを得た攻撃の割合 (以上3項目の参照記事)
・FBP%=速攻による得点割合(参照記事)
・PitP%=ペイントエリア内得点割合(参照記事)
・SCP%=セカンドチャンスにおける得点割合(参照記事)
・OR%=オフェンスリバウンド獲得率(参照記事)
・DR%=ディフェンスリバウンド獲得率(参照記事)
・TOV%=ターンオーバーになった攻撃の割合 (参照記事)
・AST%=アシストから得点になった割合(参照記事)
・AST/TOV=アシストとターンオーバーの比率 (参照記事)
・Possession=攻撃回数
・ORtg=100回攻撃した場合平均で何点取れるのかを計測したもの(参照記事)
・DRtg=100回攻撃された場合平均で何失点するのかを計測したもの(参照記事)
まずは両チームのスタッツを比較してみよう。数字が上回っているスタッツには☆をつけている。
項目 | 千葉 J | 琉球 |
2FG% | ☆55.99% | 52.06% |
3FG% | ☆34.99% | 33.84% |
FT% | 73.46% | ☆73.61% |
eFG% | ☆54.55% | 51.55% |
TS% | ☆57.70% | 55.07% |
HOMEeFG% | ☆56.00% | 52.97% |
HOME2FG% | ☆56.20% | 54.20% |
HOME3FG% | ☆36.65% | 34.12% |
AWAYeFG | ☆53.11% | 50.04% |
AWAY2FG% | ☆55.78% | 49.77% |
AWAY3FG% | ☆33.42% | 33.33% |
2ptA% | 47.02% | ☆53.76% |
3ptA% | ☆42.18% | 35.37% |
FTD% | 10.80% | ☆10.87% |
FBP% | ☆14.25% | 10.87% |
PitP% | 39.77% | ☆45.97% |
SCP% | 16.92% | ☆19.39% |
OR% | 33.93% | ☆37.45% |
DR% | 69.70% | ☆76.35% |
TOV% | 14.04% | ☆17.77% |
AST% | 51.63% | ☆55.61% |
AST/ TOV | ☆2.23 | 1.77 |
POSSESSION | ☆72.34 | 71.34 |
ORtg | ☆121.62 | 113.91 |
DRtg | 103.50 | ☆103.14 |
100回攻撃した場合平均で何点取れるのかを計測した『ORtg』でダントツリーグ1位の千葉Jと、100回攻撃された場合平均で何失点するのかを計測した『DRtg』においてリーグ1位の琉球。”最強の矛”と”最硬の盾”の戦いの行方を展望するため、両チームを分析していこう。
◆徹底した3ポイントシュート戦術を貫く千葉J
セミファイナルの分析記事でもご紹介したが、千葉Jはリーグナンバー2の3ポイントシュートチームであり、リーグで最も2ポイントシュートを打たないチームであり、ペイントエリア内の得点割合『PitP%』がリーグで最も低いチーム。さらに、積極的にオフェンスリバウンドを獲得するチームなのでセカンドチャンスの得点割合『SCP%』も高い。ゴール周りで獲得するオフェンスリバウンドと『SCP』が多いにも関わらず『PitP%』が低いということは、セカンドチャンスからフリースローで効率よく得点していることの表れ。この点は留意しておく必要があるだろう。
また、千葉Jはホームゲームに強みを持ち、ホームでのフィールドゴールの得点効率が高い。ファイナルの会場は中立地の横浜アリーナなのでアウェイスタッツに注目すると、2ポイントシュートはそこまで変化はないものの、得点の主軸を担う3ポイントシュートの成功率が3パーセント以上減少する傾向がある点にも注意する必要がある。
その他特徴的なスタッツは、リーグで最も低いアシスト割合だろう。3ポイントシュートは元来キックアウトなどのアシストから生まれることが多いシュート。それにもかかわらずこのスタッツが低いということから、ドライブからのプルアップ3ポイントシュートが多いという予想が導き出され、個人で打開できる選手がそろっているチームであることがわかる。
◆リーグ1のオフェンスリバウンド力を誇る琉球
こちらもセミファイナルの分析記事で紹介したとおり、琉球はリーグナンバーワンのオフェンスリバウンド獲得率を誇るチーム。そこからのセカンドチャンスにおける得点割合『SCP%』についてもリーグ1位を記録しており、フリースローを得た攻撃の割合『FTD%』もリーグ上位。また、『3ptA%』を見てみると、リーグ前半ではリーグ20位と低い数値であったものの、現在は試合平均3本ほど増え、リーグ平均とほぼ同等となっている。『FTD%』の減少はみられないため、2ポイントシュートのイメージが強いチームだが、ファーストショットはむしろ3ポイントシュートが多い傾向がある。
千葉Jのオフェンスと比較すると、『2ptA%』、『OR%』、『SCP%』『DR%』とインサイドに関係するスタッツで分がある。『AST%』についても琉球が高くなっている。 アウェイスタッツは3ポイントシュートこそ0.8パーセント減少であるものの、揺れが少ないはずの2ポイントシュートが4.5%も減少している点は気になるところだ。
直接対決時とシーズン平均の数字を比較することで見えてくるもの
ここからは直接対決時のアドバンスドスタッツと、シーズン平均のそれがどれくらい異なっているかを見ていこう。今シーズン、両チームはホームと中立地開催で3試合を戦い、戦績は千葉J2勝、琉球1勝であった。
◆千葉J
項目 | シーズン平均 | vs琉球平均 | 差分 |
2FG% | 55.99% | 49.97% | -6.03% |
3FG% | 34.99% | 41.93% | 6.94% |
FT% | 73.46% | 83.33% | 9.87% |
eFG% | 54.55% | 56.41% | 1.86% |
TS% | 57.70% | 59.48% | 1.78% |
HOMEeFG% | 56.00% | 57.18% | 1.18% |
HOME2FG% | 56.20% | 48.39% | -7.82% |
HOME3FG% | 36.65% | 44.15% | 7.50% |
AWAYeFG | 53.11% | 54.86% | 1.76% |
AWAY2FG% | 55.78% | 53.13% | -2.66% |
AWAY3FG% | 33.42% | 37.50% | 4.08% |
2ptA% | 47.02% | 44.34% | -2.67% |
3ptA% | 42.18% | 46.38% | 4.20% |
FTD% | 10.80% | 9.27% | -1.53% |
FBP% | 14.25% | 5.94% | -8.31% |
PitP% | 39.77% | 27.34% | -12.43% |
SCP% | 16.92% | 10.58% | -6.35% |
ORB% | 33.93% | 28.10% | -5.83% |
DRB% | 69.70% | 62.63% | -7.07% |
TOV% | 14.04% | 13.09% | -0.95% |
AST% | 51.63% | 54.91% | 3.28% |
AST/ TOV | 2.23 | 2.22 | -0.01 |
POSSESSION | 72.34 | 69.01 | -3.32 |
ORtg | 121.62 | 121.58 | -0.04 |
DRtg | 103.50 | 115.52 | 12.02 |
◆琉球
項目 | シーズン平均 | vs千葉平均 | 差分 |
2FG% | 52.06% | 57.92% | 5.86% |
3FG% | 33.84% | 33.27% | -0.58% |
FT% | 73.61% | 58.67% | -14.94% |
eFG% | 51.55% | 53.43% | 1.87% |
TS% | 55.07% | 54.72% | -0.35% |
HOMEeFG% | 52.97% | – | – |
HOME2FG% | 54.20% | – | – |
HOME3FG% | 34.12% | – | – |
AWAYeFG | 50.04% | 53.43% | 3.38% |
AWAY2FG% | 49.77% | 57.92% | 8.16% |
AWAY3FG% | 33.33% | 33.27% | -0.07% |
2ptA% | 53.76% | 46.01% | -7.75% |
3ptA% | 35.37% | 40.96% | 5.59% |
FTD% | 10.87% | 13.03% | 2.16% |
FBP% | 10.87% | 7.95% | -2.92% |
PitP% | 45.97% | 40.31% | -5.66% |
SCP% | 19.39% | 23.42% | 4.03% |
ORB% | 37.45% | 37.37% | -0.08% |
DRB% | 76.35% | 71.90% | -4.45% |
TOV% | 17.77% | 16.32% | -1.45% |
AST% | 55.61% | 50.09% | -5.52% |
AST/ TOV | 1.77 | 1.82 | 0.05 |
POSSESSION | 71.34 | 69.01 | -2.33 |
ORtg | 113.91 | 115.52 | 1.61 |
DRtg | 103.14 | 121.58 | 18.44 |
千葉Jは『3ptA%』と『AST%』がシーズン平均より上昇しているため、キックアウトパスからの3ポイントシュートが増えていると予想され、その決定率はシーズン平均を大きく上回っている。 逆に『2ptA%』とその決定率は下降しており、琉球のインサイドの固さがうかがえる。シュートに関するスタッツは全体的に好成績であるが、『OR%』や速攻による得点割合『FBP%』の減少と展開のスローペース化が起こっている。
対して琉球は、千葉Jと同様に『3ptA%』が上昇してるものの『3FG%』に若干の減少がみられるが、『2FG%』が上昇しているため『eFG%』で換算すると1.87%の上昇となる。『OR%』は高い水準を維持しており、『PitP%』は下がっているが、『SCP%』は23%まで向上している。これは『FTD%』の上昇が一役買っているからだろう。攻撃においては琉球のストロングポイントが生かされORtgが上昇しているが、琉球の心臓ともいえるディフェンスで千葉Jの3ポイントシュートを抑えられておらず、『DRtg』はプラス18と危険水域である。
これらのスタッツから、CSファイナルで注目すべきポイントは以下の3点に絞られるだろう。
・琉球が千葉Jの3ポイントシュート成功率を30パーセント台に抑えられるのか
・琉球が苦手とするアウェイゲームにおいて、シーズン平均と同等の決定率でショットを決められるか
・千葉Jが琉球のセカンドチャンスを防ぐことができるか
◆注目選手
今村佳太 (琉球)
CSに入ってから3ポイントシュートが絶好調。53パーセントの決定率で平均4本を決めている。千葉Jは琉球に3ポイントシュートを打たせる傾向にあるため、今村選手の3ポイントシュートが勝敗の鍵を握るだろう。さらに千葉Jのヴィック・ロー、クリストファー・スミスとのマッチアップが予想されるため、ディフェンスにおいてもこのシリーズで注目すべき選手といえる。