「頼れるエブリン、後輩がいることで全部、自分でやらなくてもいい」
『第92回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会』の決勝でENEOSサンフラワーズは、デンソーアイリスを76-62で撃破し、通算28度目の栄冠となった。
今シーズン限りでの現役引退を表明している宮崎早織はこの試合で16得点7アシスト4リバウンドと、中心選手の役割を果たし王座奪還をもたらした。ENEOSにとって今回の皇后杯優勝は、2014年から10連覇を達成して以来となる優勝だ。2大会の空白を経て女王の座を取り戻した訳だが、宮崎は「これまでと優勝の意味合いは全然違います」と語る。
それも当然で、今回の優勝メンバーは皇后杯の10連覇、Wリーグ11連覇の黄金時代を支えた渡嘉敷来夢、岡本彩也花に宮澤夕貴といったベテラン選手たちが全員いない中でつかんだモノ。他チームで優勝経験のある馬瓜エブリンはいるが、宮崎と今シーズンのキャプテンである星杏璃を除く選手たちは、ENEOSで複数のタイトル獲得に主力として貢献した経験がない面々だ。
宮崎は「新しいメンバーでこうやって優勝ができたことは本当にうれしいです。そして星は今年で7年目になりますけど、7年間一緒にやり続けられた仲間と一緒に皇后杯で優勝できたことは私にとって特別です」と笑顔を見せる。
大幅な若返りを図って臨んだ昨シーズンのENEOSは、皇后杯で47大会続いていたベスト4進出を逃すと、Wリーグでもプレーオフでセミファイナル敗退と悔しい結果に。宮崎はチームリーダーとして誰よりもこの結果を重く受け止めた。だが、今シーズンからオフコートでも親交の厚い馬瓜が加入し、星がチームリーダーとして着実にステップアップしたことで、コート内外での負担が大きく減ったと明かす。「エブリンがいることは心強いです。頼れる人がいて私自身も楽になっています。そして星の存在が本当に大きいです。今シーズン、彼女の成長を感じられています。頼れるエブリン、後輩がいることで全部、自分でやらなくてもいいですし、なによりも楽しいです」

「みんなの『私が勝利に貢献する』という覚悟が見られた」
今のENEOSは宮崎に馬瓜、星に加え日本代表で得点源となっている田中こころが、メインプレーヤーとして注目されることが多い。準決勝の勝利後の会見で、宮崎に若手をどのように引っ張っていきたいかを質問すると次のように語っていた。
「良い意味で、私がやるべきことは目の前の試合に集中して勝ちに行くことです。若い子たちがコートに出て良い顔でプレーできるように声がけをすることはできますが、どんな思いで、どうやって勝ちたいのかは彼女たちの心が決めることです。彼女たちが挫けそうになった時、心が折れそうになった時、しっかりと手を差しのべて『大丈夫だよ』と声をかけ続けてあげる。それが決勝でしてあげられることです。あとは私とエブリンが背中で引っ張ることで、チームが良い方向に行ってくれたらいいなと思います」
決勝での宮崎は有言実行していた。オフェンスでは最後まで積極的なアタックを仕掛け、守備ではずっと激しいプレッシャーをかけ続け、チームを牽引した。そして、若い選手たちも大舞台で萎縮することなく、しっかりと宮崎の期待に応えた。宮崎は言う。
「(ベスト8の)日立ハイテク戦、(ベスト4の)トヨタ自動車戦と三田(七南)がすごく頑張ってくれました。(梅沢カディシャ)樹奈は見えないところでリバウンドをタフに頑張ってくれました。(プレッチェル)アシュテン、(オコエ)桃仁花のリバウンドにもすごく感謝しています。八木(悠香)とこころは、本当に素晴らしい選手がENEOSに入ってくれてうれしいです。八木は当たり前のことを当たり前にやり続けてくれて、これは目立たないことですが本当にチームを救ってくれています」
「みんなの『私がやる、私が勝利に貢献する』という覚悟がこの大会を通して見られたと思っています。こうして若い子たちが成長を続けてくれたことが、優勝に繋がってくれました」
世代交代を経ての優勝は、ENEOSの新時代の到来を示すモノとなった。そして、皇后杯優勝で満足することはなく、ここからWリーグでの王座奪還を目指していく。現在、ENEOSは上位4チームがプレーオフに進める中で、4位のトヨタ紡織と2ゲーム差の5位と苦しい状況だが、リーグ再開の1月24日、25日はトヨタ紡織との直接対決と十分に巻き返し可能だ。今回の皇后杯制覇が大きな勢いをもたらす中、宮崎のラストダンスはここからクライマックスへ向けさらに盛り上がっていく。
