齋藤拓実

文・写真=鈴木栄一

「チームも個人としても結果を出せたのは良かった」

11月7日、アルバルク東京は序盤から秋田ノーザンハピネッツを100-55で圧倒し、連敗を3で止めた。攻守で秋田に力の差を見せつけた試合で大きなインパクトを残した一人が齋藤拓実で、17得点7アシスト2スティールを記録した。

大学界随一の司令塔として昨シーズン途中に特別指定選手で加入した齋藤だが、同じポジションの安藤誓哉、小島元基と実績十分な同じポジションの2人に昨シーズンは割って入ることができず、わずか9試合の出場に終わった。しかし、今シーズンは小島の故障という要因はあるにせよ、7日終了時点ですでに8試合出場しており、着実に経験を積んでいる。

「個人としてもチームにしても、連敗中なので何が何でも勝ちに行く。そういう姿勢でしっかり臨めました」と語る齋藤は、自身のパフォーマンスについて「誓哉さんが流れを作ってくれたおかげで、ボールをしっかり動かしてクリエイトできました」と総括する。

「まだまだ細かいところを探って行くとミスがあります。ただ、結果がすべてであり、今日はチームも個人としても結果を出せたのは良かったです」と続けている。

また、齋藤個人としては、前の試合である3日に行われた琉球ゴールデンキングス戦からの見事なカムバックとなったことも大きい。この琉球戦、脳震盪の疑いで途中退場した小島に代わり、接戦の残り数分という勝負どころでコートに立っていた。このしびれる場面でも物怖じすることなく積極的にアタックし、残り1分半に1点差とする得点を決める。しかし残り1分、決まれば逆転となるレイアップをノーマークの状態で落とし、直後には自分のマッチアップ相手となる岸本隆一をオープンにしてしまい痛恨の3ポイントシュートを決められる苦汁を味わった。

「3連敗となった試合、大事な時間帯で出してもらっていて僕のせいで負けたといってもおかしくないくらいです。オフェンスで決めきれない自分の実力もそうですが、その後のディフェンスで3ポイントシュートを決められたのが何よりもダメだったという反省でした。そういった中で次の試合に臨むにあたって、特にアシスタントコーチ、先輩方がアドバイスをくれたので、下を向く時間がありましたけど切り替えで今日はプレーできました」

齋藤拓実

「スピードを生かしながらアシスト、点数を残す」

このようにいろいろな意味でBリーガーとして最も濃密だった琉球戦を振り返った齋藤だが、こういった経験の積み重ねが確実に成長の糧となっている。「今は元基さんがケガしている時のバックアップですけど、試合を重ねるごとに感覚は分かってきています。最初に比べると自分でも徐々にチームにフィットしていると思います」

安藤、小島との過酷なチーム内競争からプレータイムを勝ち取るためには、自分の個性をよりアピールしていくことが必要と考える。「安藤選手、小島選手はどちらかというと似ているタイプだと思っています。その中でやはり違う特徴を出していかないとローテーションに食い込めない。僕の持ち味であるスピードをうまく生かしながらアシスト、点数を残していきたいです」

リーグ屈指のタレント集団であるA東京だが、一方で日本代表には複数の選手が常に招集されており、常に万全のチーム状態を維持して試合を迎えられるわけではない。近々でいえば、12月1日、2日に実施される天皇杯の2次ラウンドでは田中大貴、馬場雄大、竹内譲次がワールドカップ予選で日本代表に招集されるのがほぼ確実で、3人の不在が響きベスト8を前に散った昨年の雪辱を果たすためには、齋藤のさらなるステップアップが必要となってくる。