
「誰かがいないというのは、正直ただの言い訳」
B1は第27節を終了して、チャンピオンシップ進出を懸けた戦いはさらに熾烈を極める状況になっている。その一方でこの戦いから脱落し、残りのシーズンを消化するだけに充てなくてはいけないチームが現れているのも現実だ。今シーズンは昇降格がなく、来シーズンから始まる『Bプレミア』は現行のレギュレーションから大きく変わり、来シーズンに繋げる戦いをするのも困難だ。モチベーションを保つことが難しい状況下でも人知れず、目の前の試合に真剣に向き合う選手がいる。京都ハンナリーズの古川孝敏だ。
京都は、開幕戦に勝利するも、チームの得点源だったアンジェロ・カロイアロが第2節を終えたタイミングで右三角線維軟骨複合体損傷、尺骨茎状突起骨挫傷でインジュアリーリスト入り。年末には、入れ替わるような形でインサイドの要であるチャールズ・ジャクソンが右大腿部筋間血腫でインジュアリーリストに登録され、年内の成績を7勝21敗の西地区最下位で折り返した。しかし、年を明けてからは順位を一つ上げ、直近の10試合では6勝4敗と勝ち越している。戦力が整わなかったことに関して古川は「誰かがいないというのは、正直ただの言い訳だと僕は思います」と、一蹴した。
「前半戦はひどい状況の中で、ポジティブにいなければならなかったです。ですが、やっぱりとらえ方を履き違えて『負け慣れする』というのは非常に良くないと思っていました。どんな状況でも、自分たちがどのように戦わなくてはいけないのかというのを、みんなが意識しながらやらなきゃいけないと思っていました」
そう振り返るように、チーム全体の意識改革が直近の成績に繋がった。「勝てないというのは、非常にタフな状況で辛かったですが、そのしんどかった経験があって、今に生かされてきている部分もあるのかなと思います」
負け癖からの脱却に成功しつつある。チャンピオンシップ出場が消滅したことで、消化試合となった今後はモチベーションを高く維持して戦うのは難しいはず。では、これからは何のために戦うのか。古川は言う。
「ファンの方に楽しんでもらいたいので、無駄な試合なんて一つもありません。CS(チャンピオンシップ)に出られなかったからやらないとか、来シーズンの契約がどうなのかというのは一切関係ないので、責任を持って一選手として全力で戦うのは当たり前です」
古川は常にファンの支えを感じている。今節の秋田ノーザンハピネッツ戦は5シーズン過ごした古巣への凱旋試合となった。「ハピネッツ時代の僕の名前が入ったグッズを掲げてくれる人も見えていて、ファンに支えられているなというのは、あらためて実感しました」。この感覚があるからこそ試合に真摯に向き合えることができ、38歳になった今も最大限のパフォーマンスを発揮できるように準備を怠らない。それは第26節のサンロッカーズ渋谷戦でキャリアハイの30得点に次ぐ27得点を記録したことが証明している。

「もっと良くしていきたい思いのほうがでかいです」
責任感を持って試合に臨む古川はチームの課題を挙げる。「チームが常にベストでいられるように全力でやることが大事で、今の課題にしっかり向き合ってやっていくことが必要です。(勝利の)数字だけでいえば良くなってますが、もっと良くしていける部分もあると思いますし、できると僕は思うので、良くなってきたなという感覚よりも、もっと良くしていきたい思いのほうがでかいですね」
今の京都は安定感に欠けている。秋田戦もゲーム1は第4クォーター途中まで競る試合をしたが、結果は敗戦。かと思えば、ゲーム2は最大17点差開いたビハインドを一気にひっくり返し、23点差で勝利している。
「しょーもない失敗だったり、なんでこうなるのかな?ということや、上手くチームとしてまとまっていないシーンが見られる部分はあります。上手くいかなかった時にどのように自分たちが試合運びをしていたのか、上手くいっている時はどうだったのか、いろいろと踏まえて波を小さくしていきたいです。波がなくて常に良い状況でいることができれば良いですが、100%完璧ということはなかなか難しい。じゃあ、どうやっていくのかということを、目の前の一つひとつの試合を大事にしながらやっていきたいと思っています」
安定感を増すためにも若手の成長は必要である。「もちろん若い選手がいろいろスキルアップすることに対して、僕が持っているもので手助けができればもちろん全力でやっていきます」。そう語る古川だが大前提は「自らがコートに立って結果を出すこと」と続ける。
常に目の前の試合に対して100%の準備をして、努力を惜しまない姿勢を見せる古川は、立ち止まらず応援してくれるファンのために戦い続ける。コートに立ち、結果を求め続ける彼の背中は今の京都にとって選手が進むべき確かな道標となっている。