「100%やっているという感覚がまだない」
新潟アルビレックスBBはサンロッカーズ渋谷との第2戦を、延長の末に勝利した。
SR渋谷は外国籍選手をチャールズ・ジャクソンからライアン・ケリーへ変更。「今日はケリー選手がスタートだったので、インサイドではウチに分があると思った。そこを強調するプランでいきました」という庄司和広ヘッドコーチの目論見通り、ラモント・ハミルトンが29得点、ニック・パーキンズが34得点を挙げ、インサイド攻めを徹底したことが功を奏した。
だが、インサイド攻め一辺倒ではすぐに対応されてしまう。その中で老獪なゲームメークを見せたのが五十嵐圭だ。パスを散らしつつ自らもアタックし、16得点8アシストで勝利に貢献した。
この試合、新潟は開始直後に今村佳太が足を負傷してプレーを続けられなかった。リーグ最高勝率のSR渋谷を相手にこうしたアクシデントを乗り越えての1勝には大きな価値があるはずだが、五十嵐は「特に前半、得点力のある渋谷に対してディフェンスで我慢強く戦うことができたのは自信になった」と語るも、「そこまで意識はしていない」と勝利の価値は対等のようだ。
五十嵐が淡々と語るのには理由がある。それは、まだチームの絶対的なスタイルが構築されていないことに起因する。「渋谷がというより、まず自分たち。特にオフェンスの部分でやるべきことがまだ明確になっていなく、100%やっているという感覚がまだないので。まだまだ伸びしろがあるかもしれないし、このままズルズル行ってしまうかもしれない」
第2戦で見せたインサイド中心の攻めは、あくまで『プラン』であって『スタイル』ではないということだろう。実際、初戦はピック&ロールを中心とした展開が多かった。
過去3シーズン、新潟はダバンテ・ガードナーを中心にチーム作りを続けてきたが、今オフにガードナーがシーホース三河に移籍したことで、チームは新たなスタイルを構築する必要に迫られた。「ガードナーを中心に作っていたチームが3年目になってうまくできるようになった。今年は同じことをやってもうまくいかないと分かっていながら、なかなか違ったものをまだ見いだせていないです」
中地区3位も「相手に助けられての5勝」
自分たちのスタイルを模索しながらの戦いではあるが、少なくとも第2戦では攻守ともにSR渋谷を上回る戦いぶりを見せた。「フリースローが入っていたらもう少し楽に……」と、五十嵐が苦笑いを浮かべたように、40本中24本成功のフリースローがもう少し決まっていれば、延長にもつれることもなかったはずだ。
新潟はここまで5勝を挙げているが、延長にもつれたSR渋谷戦を除き、残りの4試合はすべて失点を69以下に抑えた上での勝利となっている。五十嵐もその点に着目し、守備の充実が今後のカギを握ると感じている。
「オフェンスは調子の良し悪しがありますが、ディフェンスに関してはとにかく守るというのは変わりません。上位チームに勝っているのも、ロースコアに持ち込んでディフェンスで我慢強く戦った結果で、今日もディフェンスで我慢しながらプレーできたのが勝利に繋がりました」
開幕5連敗を喫したものの、その後は5勝4敗と白星が先行している。五十嵐は再び苦笑いを受かべつつ、「相手に助けられての5勝だと思っています」と、この結果を受け止めている。
「自分たちがやり切っての勝利という感覚が全くないですし、勝った試合で内容が良かったかと言われたらそういうわけでもない。何が良かったかと言われたらディフェンスですね。今日もそうですけど、それを続けていく中でオフェンスで見えてくるものがあれば今後は違った展開になっていくかと」
昨シーズンまではリーグトップクラスのオフェンス力を有し、ディフェンスが課題となっていた。だが今は課題であったディフェンスに手応えをつかみ始め、チームは上向きつつある。五十嵐が言うように、オフェンスで確固たるスタイルができあがれば、2シーズン続けての中地区優勝も決して夢物語ではない。