特別指定選手として加入した2019-20シーズン以来、順調なステップアップを続けている小酒部泰暉だが、昨シーズンは新しい壁にも直面した。後編ではプロ転向後より強化を進め、今やリーグ屈指の武器となったディフェンスの話についても聞いた。
ディフェンスはやっぱり気持ち
──話題を少し変えますが、小酒部選手はいろいろなところで「ディフェンスは気持ち」と言っていますよね。ただ、取材者の立場としては気持ち以外にももっといろいろな要素があるのでは、と考えたりもします。例えばポジショニング、チームルールの徹底、駆け引き……。それでも小酒部選手が一番フォーカスしているのは「目の前の相手をやっつける」という気持ちになりますか?
チームルールの中でアグレッシブにプレッシャーをかけて、「絶対にやられない」っていう気持ちを持って……。とにかく自分がマークについている人にはやられたくない、という気持ちはいつも持っています。あまりテクニックは気にしたことがないですかね。一般の方から「気持ちだけでできるわけないじゃん」みたいなことを言われたこともありますけど(笑)。
──安藤周人選手、ザック・バランスキー選手にも「小酒部選手のディフェンスで気持ち以外に優れている点はありますか?」と聞いたんですが、お二人とも「オサはやっぱり気持ちなんじゃないですか」とおっしゃっていました。
個人のワークアウトでディフェンスメニューをものすごくたくさんやっているわけでもないですしね。1人で全部を守れるわけではないですから、まずは自分が守る選手、スペースをどれだけ苦しめるかというか……難しいですね、説明するのは。
──プロ2年目に取材した際は、ある点取り屋の名前を挙げて「止められる気がしません」とお話しされていましたが、リーグを代表するディフェンダーに成長された今はもう「誰でも来いよ」くらいの感覚ですか? 今でも「守るのが難しいな」と思う選手はいますか?
……難しいと思う選手はあまりいないかもしれない(笑)。楽しいですよね。レベルの高い選手とマッチアップするのは楽しいです。平均得点20点超えの外国籍選手にもつきたいです。そこは自分の仕事だと思ってるんで、負けたくないという感じですかね。
──ちなみにマッチアップが楽しい選手はいますか?
楽しい……楽しい……誰だろうな。普通にみんな楽しいので、この選手というのはいないかもしれないですね。
──千葉ジェッツの原修太選手がポッドキャストで、アワードのベストディフェンダーに小酒部選手を投票したと話していましたが、「試合中に笑っている感じが嫌だ」とも言っていました。ディフェンス力はもとより、笑みを浮かべながら、文字通りマッチアップを楽しんでいる雰囲気が相手にプレッシャーを与えるところがあるのかもしれないですね。
どうですかね。自分ではわからないですけど……。ただ他のチームの選手やファンからは嫌われているんだろうなとは思っています(笑)。
自分らしさを出せずに終わった大一番
──ご自身にとってキャリア初のファイナルとなった天皇杯決勝の試合後、「雰囲気に圧倒されて、試合前の気持ちの入れ方が難しかった」と話されていました。チャンピオンシップで千葉Jという負けられない相手と戦うにあたって、この経験は生かされましたか?
シュートの確率が上がってきていなかったので、不安を抱えながらCS(チャンピオンシップ)に入ってしまいました。相手は試合の出だしからかなり勢いがあって、スリーの確率もすごく高くて、それに対して少し後手に回っちゃった部分はあったので、気持ち的に乗り切れていませんでしたね。戦う気持ちは準備できていたけれど、身体が追いついていなかったという感じでした。
──不安要素がブレーキになってしまって、身体が積極的になれなかった。
ああ、そういうことです。
──試合後、どんな気持ちになったか覚えていますか?
悔しさはもちろんありましたけど、なんだかあっけなく終わっちゃった感がありました。自分たちの力を出しきれずに終わってしまったという感じですかね。難しい感情でしたね。あの時は。
──これまでのキャリアで似たような感情を味わったことはありますか?
やっぱり天皇杯決勝ですね。いつも通りのパフォーマンスができなくて、空回りしている感がありました。いつもと同じような思考ができていなかったのかな、と。自分らしさを出せずに終わってしまったのが天皇杯決勝とCSでした。
──CSの数日後に撮影されたクラブの公式YouTubeコンテンツで、大倉颯太選手は「全然寝られません」とおっしゃっていましたが、小酒部選手はどうでしたか?
寝られました(笑)。基本その日の夜にはもういつも切り替えられるんで。家に帰ったら結構忘れちゃう感じですかね。
──悔しさを原動力に動く、というタイプではないんですね。
悔しさはけっこうすぐに消えます。「次はこうしてみよう」とか、そっちのほうに意識がすぐ変わるっていう感じですかね。自分で何が足りないのかを見つめ直して、それを次のシーズンにぶつけようという気持ちでした。
「開幕戦は緊張してしまうかも(笑)」
──今シーズンはどんなものを追い求めていくシーズンになりそうですか?
オフェンスです。ディフェンスは前提にあるとして、オフェンスをシーズンを通してしっかり積極的にやっていきます。コーチと話し合って個人としての目標を決めて、そこに向かってやっていきたいなって思ってます。
──現時点ですでに出している指標はありますか?
3ポイントは成功率40%、2ポイントは成功率55%です。今年は去年よりビッグマンが外に出るシチュエーションが増えると思うので、ストレッチしたところを自分がアタックしていくプレーも積極的にやっていきたいなと思っています。
──本拠地となるTOYOTA ARENA TOKYOにはもう入られましたか?
はい。不思議でしたよ。「ここでやるんだ」って。ワクワクですね、あのアリーナは。どこにもないような雰囲気というか。自分はあまり緊張しないタイプですけど、開幕戦はけっこう緊張してしまうかもしれません(笑)。
──相手は去年優勝した宇都宮ブレックスです。どんな戦いを見せたいですか。
とりあえずは開幕、しかも新アリーナなので勝ちたいですよね。本当に楽しみです。アルバルカーズ(ファン)のみなさんがあのアリーナを埋めてくれたら本当に頼もしいので、ぜひたくさんの人に来てもらいたいです。