
「ここまで楽しかったことはないかもしれない」
イスラエルはユーロバスケット第3戦でフランスを撃破した。FIBAランク4位のフランスは、ルディ・ゴベアやビクター・ウェンバニャマが参加していなくても、ガーション・ヤブセレやザッカリー・リザシェイ、ビラル・クリバリーとタレントは多い。対するイスラエルはFIBAランク39位で、デニ・アブディヤのチームだ。
試合開始から8分で18-8とフランスがリード。イスラエルはそこから押し返し、第3クォーターは一進一退の攻防を続けていたが、試合終盤に入る時点で選手層で上回るフランスが有利かと思われた。
その予想をイスラエルは覆す。残り8分にアブディヤの3ポイントシュートで60-59と逆転。続くポゼッションでは相手のターンオーバーから速攻に持ち込み、バスケット・カウントをもぎ取り、ヤム・マダールも3ポイントシュートで続いて66-59と一気に突き放す。残り4分を切ったところで再びアブディヤとマダールの連続得点でリードは2桁に。第4クォーターを27-13と圧倒したイスラエルが、82-69で勝利した。
アブディヤは23得点8リバウンド2アシスト5スティール、マダールは17得点を記録。2人とも第4クォーターに10得点を挙げている。スタッツはこの2人が目立つが、勝利のカギはチームディフェンスとそこからのトランジションだ。ゾーンディフェンスでペイントエリアから相手を締め出し、ボールに複数人でプレッシャーをかけて窮屈な3ポイントシュートを打たせた。フランスの3ポイントシュートは32本中8本(25.0%)しか決まらず、オフェンスリバウンドは13-9と上回ったものの、セカンドチャンスからの得点では9-17と逆にイスラエルに圧倒された。
グループDでは3試合を終えた時点でポーランドが3勝、フランスとイスラエルが2勝、スロベニアとベルギーが1勝を挙げている。ポーランドは次のフランス戦に勝てば5戦全勝でグループ突破がほぼ確実になるが、ここでフランスが一矢報いれば1位から5位まで大混戦となる。イスラエルは次のベルギー戦に勝てばグループ突破が決まるが、最終戦でルカ・ドンチッチを擁するスロベニアまで破れば上位での通過となり、決勝トーナメントでの躍進も期待できる。

「僕ら全員がポジティブなエネルギーを出せた」
試合後の会見でアブディヤは「連戦には慣れていないから大変だよ。でも、最高に楽しめている」と晴れやかな笑顔を見せた。「昨日は厳しい敗戦を喫した。勝たなければいけない試合を落として、正直少し落ち込んだよ。でも、今日目を覚ました時には気持ちが切り替わっていた。連戦で疲れはあるけど、言い訳をするんじゃなくコートに立ち、自分たちが最高のチームであることを証明する。その挑戦を楽しんでいるんだ。もしかすると選手としてここまで楽しかったことはないかもしれない」
そしてアブディヤは、チームでの勝利を強調する意味でトメル・ギナトの働きを挙げた。ギナトは30歳のベテランで代表キャプテンだが、最初の2試合で調子が上がらずにこの試合ではスタメンを外れていた。その彼が誰よりもチームプレーに徹して勝利に貢献した。
「彼はこのチームのリーダーだ。チームを引っ張るために彼が話す言葉から僕は多くを学んでいる」とアブディヤは言う。
「今日の彼はスタメンから外れた。多くの選手はモチベーションを落としてしまうだろうけど、彼はすごく前向きだったし、昨日の不振がなかったかのように素晴らしいプレーをした。チームを盛り立てる彼の姿を見て僕は幸せだった。それはトメルだけじゃない。このチームの全員がそういう気持ちでここに来て、代表が勝つためなら何でもするつもりでいる。僕ら全員がポジティブなエネルギーを出せた。それが本当にうれしいんだ」