「中学の時は自分たちの代で全国制覇ができなかった」

U18日清食品リーグが創設され、東海ブロックリーグ1年目となる2022年から、稲垣愛コーチ全国制覇を果たした四日市メリノール学院中だけでなく高校のチームも指導することになった。徹底的に鍛えた脚力を用いた高速ローテーションで高さの不利を打ち消し、素早くトランジションに持ち込むのが四日市メリノール学院のスタイルだ。

そのバスケを40分間継続するポイントの一つが選手層で、プレーする選手が固定されがちな高校バスケでも、稲垣コーチは選手交代を繰り返して常にフレッシュな選手をプレーさせるバスケを目指す。特にブロックリーグでは多くの選手に出場機会を与え、使える戦力を増やしていった。

こうしてチーム強化に努めた4年目、U18日清食品ブロックリーグ2025のグループDを全勝で制した。そして入替戦では八雲学園と日本航空北海道を倒し、初のトップリーグ昇格を決めた

入替戦の相手はいずれも留学生を擁するチーム。特に世代No.1の能力を誇るテウ アダマを擁する八雲学園戦には入念な準備を整えたが、アダマは体調不良で欠場となった。それでも1年生の留学生、ンジャイ マム ジャーラの187cmの高さと、こちらもチーム全員が走る八雲学園に立ち上がりは押されたが、すぐに自慢のディフェンスから立て直し、99-45の大勝を収めた。

「八雲学園と戦うことになって、留学生のアダマ選手を止める練習をずっとやってきたので、対戦できなかったのは残念です」と言うのは、1年生から主力としてプレーする伊藤千寛だ。

「やられる部分もあると思うのですが、自分のほうが足はあるので、ディフェンスは何とか守りきって速いプレーで取り返すイメージでした」と伊藤は言う。

伊藤は同学年の中嶋とわと同じく四日市メリノール学院中の出身で、高校に上がった時点で稲垣コーチのディフェンスを理解しているメリットから、すぐに主力として起用された。この春に3年生になる彼女が迎えた『勝負の年』、チームにとってもトップリーグは大きなチャンスになる。

「1年生のインターハイでベスト8を経験させてもらって、去年はインターハイで大阪薫英女学院に負けた時も、ウインターカップで精華女子に負けた時も、自分たちの成長が感じられました。少しずつ実力をつけてきて3年生になります。私たちは全国制覇という夢を持って高校に上がりました。中学の時は自分たちの代で全国制覇ができなかったので、高校では自分たちの代で絶対に全国制覇を達成したいです」

「縁の下の力持ち、って感じの選手になりたい」

四日市メリノール学院が全国大会に出場するだけではなく、そこで勝ち上がっていくには、留学生相手にどう戦うかがポイントとなり、そこでは伊藤の働きが非常に重要となる。

「自分は全国に出るセンターでは小さいほうと言うか、一番小さいと思います」。そう語る伊藤の身長は172cmしかない。「留学生を全部止めるのは無理でも、一回でも多く止めて大きい相手に対しても自分のプレーができるように。小さいセンターだからこそできるプレーが魅力だと思うので、そこを出せるように頑張っていきたいです」

単純な高さ勝負、パワー勝負を挑むのでは体格での不利は否めない。それでも試合中、高速ローテーションでズレを作らせない四日市メリノール学院のディフェンスの中心には伊藤がいて、最後尾から常に『声』で味方のポジションを修正する指示を飛ばしている。

自分自身もチームにとって危険なスペースを先んじて埋めて、身体を張るべき部分ではきっちり張る。華麗なプレーをするわけではないが、いつも集中していてイージーなミスがなく、基本に忠実なプレーでチームを支える。「縁の下の力持ち、って感じの選手になりたいので、そう言ってもらえるのはうれしいです」と伊藤は笑った。

そして稲垣コーチも、U18日清食品リーグ5年目で初めて挑むトップリーグに意欲を燃やしている。「いろんな子を使って成長に繋げたい、それが強化に繋がるというスタンスは変わらずいきます。フレッシュな子たちをどんどん使って、15枚使えるのが理想。トップリーグは選手にとってすごく良い経験になるから、なるべく多く使って場慣れさせてあげたい。やっぱり新興勢力だから、ウチはその辺が強豪校とは全然違います」

飛躍の年にすべき、2026年。少なくとも素晴らしいスタートを切ることはできた。稲垣コーチは言う。「今年は東海新人で桜花学園に勝って優勝できました。それで全国ベスト8が目標では相手にも失礼だと思います。選手たちは優勝したい、全国制覇したいと言っているので、そこに向かって頑張ります」