東藤なな子

「速い展開に持っていく中でスピードを出す」

バスケットボール女子日本代表が、7月3日と4日とデンマーク相手に行う三井不動産カップ 2025(東京大会)を前にメディア公開練習を行った。合宿には15名が参加しており、7月13日から始まるFIBA女子アジアカップ2025の最終メンバー12名に向けたサバイバルレースは佳境に入っている。

コーリー・ゲインズ新ヘッドコーチの下、日本代表はポジションレスのスタイルを目指している。所属チームとは違う役割を与えられる選手もおり、その代表格が東藤なな子だ。フィジカルの強さを生かしたディフェンスと切れ味鋭いドライブを武器とする東藤は、代表でも屈指の実力を持つウイングとして東京、パリと2大会連続でオリンピックに出場しているが、ゲインズ体制になってポイントガードでもプレーしている。6月7日と8日に行われたチャイニーズ・タイペイとの強化試合では、ボール運びの役割をこなしていたのが印象的だった。

「最初に言われた時、楽しみだと思いました」と東藤は手応えを語る。「今まではずっとシューティングガード、フォワードとしてやってきたのが、今はポイントガードとして起用される場面も多いです。自分の強みを忘れず、迷わずに新しいことに挑戦できている感じです」

また、ポイントガードとして意識している点をこう語る。「コーリーのバスケットはスピード重視のパッシングゲームです。ゲームメイクというより速い展開に持っていく中で持ち味であるスピードを出せていけたらと思います」

東藤なな子

「外に広がるバスケットだからこそ中に切り込む」

大変なコンバートではあるが、今の東藤が感じているのは新たな役割を得たことによるプラス効果だ。「自分自身がシュートにいくチャンスも作りやすいですし、起点となることで普段よりボールを触る機会が増えることへの楽しさを感じています。今までやってこなかったポイントガードをやることでプレーの幅や考え方が広がります。フォワードで出た時でもポイントガードで得た経験が使えると思います」

プレー面に加え、メンタル面でも変化が生まれている。24歳の東藤は現在のメンバーでも下から3番目の若手だが、今回の合宿に参加している15名において、5人制で東京、パリの両オリンピックに出場しているのは髙田真希、宮澤夕貴と東藤の3人しかいない。「これまでの経験を伝えていかなければいけない立場になりました」と、自分と同世代の若手が増えた今の代表において、リーダーシップを発揮する意識が強い。

7月3日、4日のデンマーク戦は、アジアカップに向けた最後のアピールの機会となる。東藤は「1番、2番、3番とどのポジションでプレーしても、代表は外に広がるバスケットだからこそ中に切り込んでいける選手としてアグレッシブにアタックする。3ポイントシュートも狙って得点力を見せられたら」と意気込みを語る。

これまで日本代表での東藤は、Wリーグで平均2桁得点を挙げてきたオフェンス能力を披露する機会が多くなかった。だが、ゲインズ体制になってボール絡む機会が増えたことで、「得意なプレーを出せる機会が増えました」と、攻守両面で活躍できる2ウェイ選手として頼もしさを増している。