タイリース・ハリバートン

「シューズを履いた時からずっと勝利を疑わなかった」

タイリース・ハリバートンのゲームウィナーでペイサーズが劇的な逆転勝利を飾るのは、今回のプレーオフでこれが4度目になる。

最初はバックスとの第5戦、延長の残り1秒でヤニス・アデトクンボをスピードで振り切って逆転のダブルクラッチを沈めた。次はキャバリアーズとの第2戦、オフェンスリバウンドをもぎ取ってからボールを外に持ち出し、残り1秒でタイ・ジェロームをかわしてのステップバックスリーを決めている。ニックスとの第1戦では17点ビハインドの残り6分半から逆襲に転じ、同点ブザービーターを決めてオーバータイムに持ち込み、勝利を収めた。

そして現地6月5日、NBAファイナルの初戦、残り11秒でシェイ・ギルジャス・アレクサンダーのジャンプシュートが落ちると、タイムアウトの残っていないペイサーズはそのまま攻めに転じる。ハリバートンは彼を抑えるために起用されたケイソン・ウォレスに対して右へのドライブでわずかなスペースを作り、ジャンプシュートを決めた。111-110、残り0.3秒にして初めて手にしたリードでペイサーズが大事な初戦を制した。

1回なら偶然で片付けられる。しかし、2回目があれば3回目もある気がするし、実際に3回目を決めればそれは実力だ。では4回目は何と表現すればいいのか? 試合後の会見でそう問われたハリバートンは朗らかな笑顔とともに「どうなんだろう、分からないよ」と答えた。

「僕に分かるのは、このチームが粘り強く試合に集中し、劣勢に屈しないことだ。これまでずっと、点差を離された時は少しずつ縮めていこうとチームで話してきた」

最後のシュートで逆転するまで、ずっとビハインドを背負う中で、「どの時点で勝てると思った?」と問われたハリバートンは「素晴らしい質問だね」と笑い、こう続けた。

「バスから降りた時、シューズを履いた時からずっと、勝利を疑わなかった。僕たちはチームの実力に自信を持っている。お互いに支え合い、試合終了のブザーが鳴るまで『負けた』とは全く思わない。それだけの自信があるし、それが僕たちがここまで来れている理由だろうね」

「シューズを履いた時」と彼が言うのは、この試合がお披露目となった自身のシグネチャーシューズだ。NBAファイナルという大舞台で彼は自分のシューズを履いて劇的なゲームウィナーを決め、会見でも誇らしげにシューズを並べた。

「今日みたいなバスケで勝っていくのは難しい」

1回目は偶然で片付けられる──。それを変えていくのがペイサーズとハリバートンの挑戦だ。「昨シーズンはカンファレンスファイナル進出という結果を出したのに、負けたら『幸運だっただけ』とか『本来そこにいる資格はない』とか悪口を言われて、みんな腹を立てた。オフの間もずっと怒りを感じていたよ。今シーズンの序盤に調子が上がらないと、また否定的な話ばかり出て来た。それを受け止めて、跳ね返す。それが僕たちのエネルギーの源になっている」

ハリバートンのクラッチ力は、それを4度示したことで証明され、『過大評価』というレッテルはもう剥がされた。だが、ペイサーズはまだ違う。サンダーに勝ったのはまだ1回で、それでは偶然で片付けられてしまう。これをあと3回示すのが彼らのミッションだ。

「サンダーはあまり負けたことがないから、次の試合でどんなリアクションがあるかは覚悟しておかないといけない」とハリバートンは表情を引き締めた。

「はっきり言って、今日みたいなバスケで勝っていくのは難しい。ターンオーバーが多すぎるし、ディフェンスもリバウンドも改善が必要だ。ここまで来ればどう勝つかは問題ではなく、勝てばそれでOKだから、今日は内容がどうあれ勝利を喜びたい。でも、明日からはもっと頑張らなきゃいけない」