得点を狙う積極性で『日本らしいバスケ』のキーマンに
バスケットボール日本代表は、『FIBA女子アジアカップ2025』で前回大会に続き2位に終わった。あと一歩で優勝を逃した悔いは残るが、一方で格下相手に苦戦した最悪のスタートから持ち直しての準優勝だった。
そんなチームの進化を象徴する存在となったのが19歳の田中こころだった。今回がA代表での国際大会デビューとなった若きポイントガードは、大会序盤はドライブで果敢に仕掛ける姿勢が鳴りを潜め、グループフェイズの3試合で16ものターンオーバーを記録した。
しかし、「このままアジアカップを終われるかというプライドがありました」と生粋の負けん気の強さを発揮。さらに「ポイントカードだからとアシストファーストではなく、自分がポイントゲッターになることで日本らしいバスケットができる」と、シュートを貪欲に狙うことで不調から抜け出した。
決勝トーナメントではニュージーランド戦で17得点4アシストを挙げる。準決勝の中国戦、ショットクロックのないところで苦し紛れに放った3ポイントシュートが決まるファーストプレーで一気に流れをつかみ、「勝つことしか考えていなかった」という第1クォーターだけで21得点を荒稼ぎし、試合全体で27得点5アシストと勝利の立役者となった。
この勢いは決勝まで続き、オーストラリア戦でも前半で19得点を記録。後半に入って得点が失速したのは悔いが残るが、21得点9アシスト6リバウンドと攻守に奮闘した。このオーストラリア戦では、相手の厳しいマークを逆手に取って9アシストを記録し、ターンオーバーは1つのみ。第4クォーター序盤の宮澤夕貴、髙田真希の3連続3ポイントシュートはすべて田中のアシストで、プレーメーカーとしてもステップアップした。
「チームメートとスタッフに助けられたアジアカップ」
決勝トーナメントに入ってからの際立ったプレーにより、大会ベストファイブに選出された。大きな栄誉だが、「うれしいですけど、自分だけの力ではないです。みんなが私にボールを集めてくれて、スタッフが『思い切って攻めていいよ』と言ってくれました。私の賞というより全員で取った賞です」と語る。
このように田中は、自身が不振から脱却できたのは周囲にサポートがあってこそだったと強調する。「周りのチームメート、スタッフに助けられたアジアカップでした。髙田さんや渡嘉敷さんがしっかりスクリーンを当ててくれたことで、自分は得点を挙げられました。何回かプレーがうまくいかなくてヘッドダウンした時、宮澤さんが、『こころ大丈夫だよ』と言ってくれたことで気持ちを切り替えることができました」
「どれだけ失敗してもベテランの選手たちが私にパスをくれて、信頼してもらえていると思えました。そのおかげで思い切ってプレーできましたし、みんながくれたパスを絶対に決めてやる、アシストもしたいとプレーしていました」
コーリー・ゲインズヘッドコーチは、「彼女が経験していることはプライスレスの価値があります。こういった経験を経てもっと彼女は伸びていきます」と、今大会の経験が田中のさらなる成長に繋がると語る。女子日本代表の『ダイヤの原石』は、初のA代表の舞台で非凡な得点力を証明した。これからどんな輝きを放っていくのか楽しみだ。