
シーズン終盤の活躍「常に準備はしていました」
前節、川崎ブレイブサンダースはアウェーでサンロッカーズ渋谷と対戦した。ゲーム1を82-68と快勝し、ゲーム2は敗れたものの64-66と、同一カード連勝まであと一歩だった。地区最下位ではあるが、ここ5試合ではチャンピオンシップ進出の島根スサノオマジックに1勝1敗、横浜ビー・コルセアーズとの神奈川ダービーに勝利するなど3勝2敗と勝ち越している。
シーズン終盤に来て上昇気流に乗っているチームで存在感を見せているのがベテランの鎌田裕也だ。ここまでプレータイムに恵まれなかったが、この5試合はしっかりと出番を確保。持ち味であるフィジカルの強さを生かしたゴール下でのディフェンスに加え、島根とのゲーム1では終盤に貴重な3ポイントシュートも沈めた。
SR渋谷との連戦では、サッシャ・キリヤ・ジョーンズの故障離脱を受け、控えビッグマンとして2試合合計で30分以上もコートに立った。「常に準備はしていました。今回はサッシャの部分をカバーする意味でも頑張らないといけないです」と鎌田は言う。
今シーズンの川崎は、Bリーグ9年目で初の勝率5割を切って低迷している。結果が出ていない以上、チームには何らかの変化を加えるべきで、鎌田と外国籍2人を同時起用するビッグラインナップを試すことも一つの選択肢だったはずだ
だが、長らく鎌田にはチャンスが与えられなかった。チームが勝っているならまだしも、負けが続く中でも出番を与えらないのはメンタル的に厳しいものだ。それでも鎌田は「このポシジョンは、どのチームでも出ることが厳しくて、そこは割り切っていました」と話す。
「常に準備をして、呼ばれたらハードワークをすることを心がけています。マイナスな気持ちにならず、常にチームファーストでやっていました」
今シーズンの川崎は、ロネン・ギンズブルグのヘッドコーチ就任1年目で「勝てないとベースをどうにか作ることにフォーカスします。自分が入るようなオプションは二の次だと思うので……。タイミングが難しいと思います」とチーム事情への配慮を見せた。

「終盤になってチームバスケットが体現できている」
結果が出なくても腐らずにチームを支えていく。そこには「これが自分の仕事です」という鎌田のプライドがある。「出られなくても練習でゴリゴリのバチバチにやる。コンタクトをバチバチ当てて、マッチアップした相手が『練習の方が試合より辛い』と思うくらいにやる。腐るとかではなくてチームのために常にハードワークを続けるだけでした」
ケガ人など様々な要素が絡んでいるにせよ、今の鎌田がプレータイムを得て活躍できているのは、日々の積み重ねの賜物だ。鎌田個人だけでなくチーム全体としても、今の川崎はようやく成果が見えつつある。
鎌田もこのように手応えを語る。「変革のシーズンでメンバーが大きく入れ替わり、簡単にはいかないと分かっていましたが、あまりにもマイナスの部分が顕著に出てしまいました。それでもそれぞれがチームのためにできることをやろうと、1プレーごとに考えながらやり続けてきた結果、やっとこの終盤になってチームバスケットが体現できていると思います」
シーズンは残り5試合、鎌田は「ファンの皆さんのために一つでも多く勝ちを届けたい」と意気込む。そして、今後を見据えて川崎の伝統であるディフェンスを立て直すと誓った。
「今シーズンは早い展開を目指すことでオフェンスに注力しがちですが、昔から川崎はディフェンスファースト、チームルールを徹底してやってきました。やりたいことがハマっている時のディフェンスは堅いので、そこをどれだけ継続できるのか。ベースをもっと上げていくことにフォーカスしていきたいです」
失意のシーズンにはなったが、今の勢いのまま終えることができれば、それは必ず来シーズンに向けての弾みとなる。