佐々木隆成

「メルトダウンしているようにしか見えない」

三遠ネオフェニックスはホーム最終節でシーホース三河相手に痛恨の連敗を喫した。この2試合いずれも三河の強度の高いプレーで序盤から主導権を握られ、後半に追い上げるものの最後は再び崩れる同じ展開を繰り返した。

この結果、中地区優勝をホームのファンの前で決めることができず、さらにアクシデントで中止となった滋賀レイクス戦の再試合がなくなったことで、負け数は同じ10でも勝率で宇都宮ブレックスに抜かれて全体2位に落ちてしまった。

今シーズンの三遠はリーグ新記録の22連勝を達成するなど序盤から無類の強さを誇っていたが、3月末に京都ハンナリーズ相手に同一カード連敗。4月には16日のファイティングイーグルス名古屋戦と三河との連戦で3連敗と勢いに翳りが見えている。

シーズン終盤での失速は、1年前の嫌な記憶を呼び起こさせるものだ。昨シーズンの三遠は開幕から快進撃を続け、中地区優勝でリーグ初年度以来のチャンピオンシップ出場を果たしたが、レギュラーシーズン最後に失速してチャンピオンシップを迎えると、クォーターファイナルで広島ドラゴンフライズに敗れた。

レギュラーシーズン60試合の長丁場になれば浮き沈みはあるもので、今回の連敗はたまたま調子の悪いタイミングだったと見ることもできる。しかし、三遠の大野篤史ヘッドコーチは、「メルトダウンしているようにしか見えない。何も変えずにこのまま行くより、変えたことが間違っていた方がいい。その方が後悔しないです」とテコ入れの必要性を語る。

指揮官は選手たちに次のメッセージを送ったと明かす。「選手たちは私生活も仲が良いです。この仲の良さを仕事でも生かす時で、言いにくいことでも信頼関係があれば言えるはず。良い時は誰でも口を開くことができます。悪い時こそ伝えよう。何か変えないとこのまま進んでタイムアップになります。いろいろな意見が出てきました。過ぎたことを後悔しても取り戻せませんが、今から変えられることに関してはどんどん悩もうと伝えました。彼らの声をこれからの試合、チャンピオンシップに向けて表現できるようにやっていきたいです」

エースとして、キャプテンとして三遠を引っ張る佐々木隆成は、「今までずっと応援してくれていたブースターの方たちの前で地区優勝を決めたいと思っていましたが、叶いませんでした。ただ、僕たちの目標はチャンピオンシップで勝つことで、今からどう向かっていくのか考えながらやっていきたい」と振り返る。

佐々木隆成

「たかがバスケットという気持ちで楽しむことも大事」

その上で、チームに求められる変化について「今までやってきたことが間違ってないことは勝率が証明しています。良いところを継続していって、変えるべきところを変えていく。去年のチャンピオンシップでああいう負け方をして学んだことは多くあります」と続ける。

今の佐々木が重要視しているのはメンタル面だ。「いろいろと戦術面もあると思いますが、チャンピオンシップはノリと勢いも大事かなと思っています。22連勝していた良い時はチームの雰囲気も良かったです。それは雰囲気を良くしようと取り組んでいたわけではなく、一人ひとりが楽しみながらバスケをしていた結果として雰囲気が良かった。それが最近なくなってきている感じはします」

この勢いこそが、昨シーズンのチャンピオンシップ敗退で得た大きな教訓だと佐々木は語る。「昨シーズンは考えすぎてしまいました。広島はレギュラーシーズン7位から僕たちに勝って勢いをつけて優勝まで行きましたが、その要素が僕たちには足りませんでした」

『ノリ』という言葉からは軽いイメージを持たれるかもしれないが、佐々木を筆頭に三遠のメンバー全員が日々ストイックにバスケに向き合っており、だからこそ2年連続でリーグ屈指の好成績を残している。

「僕たちはこの仕事に命を懸けていて、真剣に向き合っています」と佐々木も言い切るが、その上でゆとりを持つことも大事と考えている。「誤解を恐れずに言うと、たかがバスケットという気持ちで楽しんでやることも大事だと思っています」

ここに来ての失速は嫌な流れであるが、一方で三遠は少なくとも残り5試合を3勝2敗で乗り切れば自力でクォーターファイナル、セミファイナルのホームコートアドバンテージを獲得できることに変わりはない。大舞台で強さを発揮できるチームになるため、三遠がここからの5試合でどんなプレーを見せるのかは、優勝争いにも大きな影響を及ぼすはずだ。