ニコラ・ブーチェビッチ

「みんながやり遂げたことに誇りを持っている」

ニコラ・ブーチェビッチはNBAでの14シーズン目を終えた。2020-21シーズン途中の加入から、消耗の激しいセンターでありながらほとんど休むことなくフル稼働を続けてきたが、彼とデマー・デローザン、ザック・ラビーンのブルズは結局のところ何も勝ち取ることなく解体され、彼だけがチームに残った。今シーズンも彼はプロフェッショナルとしてすべての試合で全力を尽くし、前半戦はキャリア最高とも言えるパフォーマンスを見せたが、シーズン後半に息切れを起こし、試合には出続けていてもペイントエリアの支配力を保てなかった。

プレーイン・トーナメントでヒートに敗れてあっさりとシーズンが終わり、2100万ドル(約32億円)の契約最終年を残してはいるが、ブルズでの彼の役割は終わろうとしている。

「シーズン前半の出来は素晴らしかったけど、トレードデッドラインでメンタル的に少し影響を受けてしまい、プレーに波があった。でも、若い選手たちが支え合い、勝利への強い意欲を持って試合に臨む姿勢が僕にとってのエネルギーになったし、彼らを助ける役割は楽しかった。ペースが上がって走らなきゃいけない場面が増えて大変だったけど、まだ僕は走れる(笑)」とブーチェビッチは語る。

「プレーインでまた負けたのは残念だけど、このチームのみんながやり遂げたことに誇りを持っている。世間の評価を上回り、シーズン終盤に強い時期を作ることができた」

しかし、現実は厳しい。ブルズはレギュラーシーズンを15勝5敗で締めくくったが、タンクしているかプレーオフに向けた調整に入った相手に勝っていただけで、プレーオフへの生き残りを懸けた勝負になるとヒートに手も足も出ずに完敗を喫した。

「経験値が不足している」とブーチェビッチは言う。「自分たちのプレースタイルに相手を巻き込んで勝てた試合もあるけど、そうじゃない時でも効率良く得点を奪い、相手の思い通りの展開にさせない方法を学ばなきゃいけない。プレーインでの戦いぶりは明らかに僕らのベストじゃなかったし、改善すべき点は多い。でもそれを知るために、ああいったポストシーズンの試合を経験する必要もある」

「僕を組み込むかどうかはフロントが決めること」

遅きに逸した感はあるが、ブルズの『ビッグ3』は完全に解体され、若手中心の新たなスタイルで再始動した。この数カ月での成長は認められるが、ジョシュ・ギディーにしてもコービー・ホワイトにしても、リーグを代表する若きスター選手としてブルズの強豪復活を成し遂げるエースになれるかと言えば、それほどの器ではない。ブルズにビクター・ウェンバニャマはいないし、今回のドラフトでもクーパー・フラッグの1巡目指名権を引き当てることはないだろう。

アルトゥラス・カルニショバス球団代表は、新シーズンに向けたチーム編成について「まだ何も決まっておらず、ドラフトでもトレードでもあらゆる手段でチームを強化する」と語る。ブーチェビッチはシーズンが終わった段階ではまだフロントと何の話もしておらず、今後は何も決まっていないと言う。

その上で去就についてどう考えているかと問われてこう答えた。「さっきも言ったように、年々成長していく若いメンバーとプレーするのは楽しいと思っている。一夜にして強いチームが生まれるはずはなく、改善に改善を繰り返してチームを変えていくしかない。そのプロセスに僕を組み込むかどうかはフロントが決めることだ」

ブルズの今オフはあまり楽しいものにはならないだろう。フロントは確固たる信念がないまま『ビッグ3』を作り、見守り、場当たり的に解体した。ブルズの今後は不透明なまま、ブーチェビッチは2024-25シーズンを終えた。