シュートを確率良く決め、18分半の出場で13得点4アシストと安定のプレーを見せる
ワールドカップ2023に向けた最終調整となる『SoftBank CUP 2023東京大会』がスタートし、男子日本代表は初戦となる15日のアンゴラ代表戦を75-65で勝利した。キャプテンを務めるポイントガードの富樫勇樹は、トム・ホーバス体制になってから長らく先発が定位置だったが、この試合ではベンチスタートだった。
富樫は千葉ジェッツでもずっと不動の先発を務めており、いつもと違うタイミングでゲームに入ることは決して簡単なことではない。しかし、この試合の富樫は3ポイントシュート4本中2本成功など確率よくシュートを沈め、13得点4アシストとベテランらしい安定したプレーを披露した。渡邊雄太が捻挫による負傷退場、故障明けのジョシュ・ホーキンソンもプレータイムを制限中とビッグマンが苦しい状況ではあるが、チーム全体としても確実に底上げができていることを証明する勝利だった。
ただ、そういったポシティブな部分以上に、富樫は序盤の出遅れを気にしていた。ドイツ、フィンランド、オーストラリアといった本大会で対戦する列強相手に、一度でも2桁のビハインドを許すと致命傷になりかねないことを分かっているからだ。
「前半に一時、10点ぐらい開いた場面があったと思います。トムさんのバスケットは3ポイントシュートを重視していて、実際にこの時も3ポイントを連続で決めて1分くらいで追いつきました。でも、ドイツなど強豪相手に一気に挽回できるかと言ったら簡単ではないです。(序盤にリードを許しそのまま敗戦した)前回のワールドカップ初戦のトルコ戦のことを僕もかなり覚えているので、入りは大事にしていきたいです」
ホーバスは、この試合で先発ガードコンビに河村勇輝と富永啓生を選択した理由として、2人の相性の良さと得点力アップ、そして序盤から早いテンポを作りたいからと明かす。「河村と富永はケミストリーがすごくあります。それに、ここまで得点が足りなかったので、この試合は(総得点)80点以上のペースを作りたかったです。この2人は本当にいいコンビです」
「どの選手と一緒に出て、どういう展開かに応じて自分のプレーを考えていきたい」
もちろん指揮官は引き続き、富樫にも絶大な信頼を寄せている。その上で、河村と富永のようなケミストリーを作れる相棒を模索しているとこだ。「勇樹とマコ(比江島慎)、勇樹と原(修太)か、勇樹と西田(優大)。勇樹が出る時の2番は、激しいディフェンダーの方がいいかなという考え方が今はあります。まだ決まっていないですが、ワールドカップまでにそこは絶対に決めたいと思います」
一方、富樫本人はベンチスタートにも違和感はないと語る。「大切なのはラインアップで、トムさんはどの選手をどの選手と組ませるのかをすごく重要視していると思います。スタートでも控えでも、コートに出た時にそのメンバーで仕事ができればと思います」。
そして「トムさんは河村選手、富永選手の2人を一緒に出すことにメリットをすごく感じていると思います」と語り、自身は臨機応変に対応していくのみと考えている。「僕は、比江島選手や原選手だったり、馬場(雄大)選手といった組み合わせになると思います。どの選手と一緒にプレーし、どういう試合展開なのかに応じて自分のプレーを考えていきたいと思います」
ただ、どんな状況になっても変わらないこともある。「3ポイントシュートは代表合宿が始まってから、すごくタッチ良く確率良く入っています。そこは積極的に常に狙っていきたいなと思います」
日本のトップ2の得点源として期待されていた渡邊、ホーキンソンの2人は、コンディション面からいって当初の想定通りのフル稼働は厳しい状況となっている。また、貴重なリムプロテクターだった渡邉飛勇の故障離脱もあり、守備面での負担も増えるだろう。だからこそ、ここに来て富樫にはスコアラーとしての役割がより求められる状況となっている。そして富樫はその期待に応えるための準備を着実に進めている。