「苦しいと思うより、楽しんで終わりたいと思った」
今シーズン限りで引退したトヨタ自動車アンテロープスの三好南穂が、4月21日に引退会見を開いた。
三好は昨シーズンが終わった段階で引退を考えていたというが、もう1シーズン現役を続けた理由の一つに桜花学園の恩師である井上真一のアドバイスがあったことも大きかったと明かした。
「井上先生には昨シーズンが終わる時に相談して、先生も『もう一年やってみたらどうだ』とアドバイスをいただきました。そこで先生に言われたことも背中を押されたところがあって、ラストかもしれないけどもう1シーズンやると伝えました」
結果的にWリーグを連覇して自身の花道を飾ったが、引退を決めた一番の理由は心身ともにトップレベルを維持することの難しさに直面したからだったという。「膝を痛めていたり、年齢を重ねていく分、パフォーマンスの維持が難しいと感じました。一年間をトップレベルでやり切ることが大変なことは分かっていましたが、その大変なことを乗り越えるメンタルが限界かなと思いました」
また、大変な思いをすればするほど、バスケットを純粋に楽しめなくなってしまう。だからこそ三好はバスケットボールが嫌いになる前に引退の選択をした。「昨シーズンは苦しいと感じることが多かったシーズンでした。長くやってきたバスケット人生で最後が苦しいと思うより、楽しんで終わりたいと思ったので、ラスト1年という覚悟を持って今シーズンに挑みました」
年齢からくる衰えを実感し、コンディションを維持することの難しさに耐えかねて、引退を決断する選手は多い。だが、今シーズンの三好は3ポイントシュート成功率(51.95%)、フリースロー成功率(91.89%)の2冠に輝くなど、衰えを全く感じさないパフォーマンスを見せた。そのため、三好も「それこそ気持ち的に吹っ切れたじゃないですけど、自分が思いのほか良くて。もう一年やれるかなと1月、2月くらいは考えました」と、現役続行の選択が一瞬よぎったことを明かした。
ファンへの思いから、異例のシーズン中の引退発表を決断
三好はシーズン中に自身のSNSで今シーズン限りでの引退を発表した。通常であれば、シーズンが終了したタイミングで公表する選手が多いが、三好には確固たる理由があってシーズン中での発表を決断した。「私はシーズンが終わったら引退すると3月には決めていました。オリンピックを経験させてもらったり、優勝させてもらったり、注目をしてもらえたので、終わった後にあれが最後の試合だったんだと寂しい思いをさせてしまうより、先に皆さんに伝えて、見てもらいたいと思って発表させていただきました」
三好の引退発表効果もあり、Wリーグファイナル第2戦にはリーグ史上最多となる7151人もの観客が詰めかけた。三好は「私の名前が入ったタオルだったり、ボードにお疲れ様って書いてくださる人もいて、先に発表して良かったと思いました。優勝できて報われたじゃないですけど、もう一年みんなと一緒にやってきて良かった」と言い、シーズン中の発表も含めた自身の決断が間違っていなかったと実感した。
引退したばかりで今後の活動についてはほとんど決まっていないという。ただ、バスケにかかわる活動はしていきたいと語った三好は最後にファンに向けてこのようなメッセージを送った。
「たくさんの応援ありがとうございました。皆さんの応援で苦しい時も乗り越えられましたし、こんなに楽しいバスケット人生を過ごすことができて感謝しています。バスケットで成長させてもらったので、これからもバスケットにかかわって皆さんに貢献できたらと思っています。選手ではないですけど、今後も三好南穂を暖かく見守ってくれたらうれしいです」
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