「トムさんのバスケットに関してはルーキーに近い」

バスケットボール男子日本代表は、8月に行われる『FIBAアジアカップ2025』に向けた強化合宿を18名でスタートさせ、今週末に行われるオランダ代表との強化試合と、本大会のロスター枠である12名のメンバー入りへ向けたサバイバルレースが始まっている。

パリオリンピックを経て、今の日本代表は世代交代の時期に突入しており、トム・ホーバスヘッドコーチも若手を積極的に起用する意向を示している。今回の合宿には、NCAAでプレーする5人の大学生など20代前半の選手が多く招集されている中、25歳の佐土原遼は代表での居場所を確立すべく奮闘している。

今シーズン、佐土原はファイティングイーグルス名古屋で58試合に出場、平均12.8得点、3.6リバウンドを記録。192cmの彼より一回り大きい外国籍選手とマッチアップしても当たり負けしないフィジカルの強さが特徴だ。それを生かした攻守におけるパワフルなプレーに加え、3ポイントシュート成功率35.7%と外からも得点できる多彩さで、リーグ随一のウイングとして大活躍を見せた。

Bリーグで傑出した実績を残した佐土原だが、「自分の立ち位置は年齢で言うと中堅どころ。引っ張っていかないといけないですが、トムさんのバスケットに関してはルーキーに近いです」と語る。

2月に行われたアジアカップ予選のモンゴル戦でフル代表デビューを果たし、14分半の出場で6得点4リバウンド2アシストと爪痕を残したが、達成感はなかった。「バイウィーク中で活動期間は2週間と短く、トムさんのバスケットを熟知するのは難しかったです。基礎ができておらず、考えながらプレーすることでワンテンポ、ツーテンポと遅れてしまい、アピールに繋がりませんでした。モンゴル戦では戦術が多少インプットされたことで、身体と頭が連動してパフォーマンスを発揮することができましたが、個人的にはもっとやれるし、全く満足していませんでした」

消化不良に終わった代表デビュー戦と比べ「今回のディベロップメントキャンプで、トムさんのバスケットを一つひとつ説明してもらいながらやる機会を初めて得られたのは良かったです」と手応えは得ているが、「まだ、自分をアピールしきれていない部分があります。今の自分は下っ端という気持ちを忘れないようにしたいです」と気を引き締めている。

「FEとキングスを代表する気持ちでやっています」

「新参者なので、下から突き上げていく気持ちでやっています」と、ハングリー精神を見せるその姿勢は、メディア公開日でも最後のシュート練習でホーバスに質問する行動に表れている。

「自分はどちらかと言うとビッグマンからのポジションアップでウイングに転向したこともあって、外からシュートを打てますが、打つまでの動作が遅く、スムーズに打てていない。勝久ジェフリーさん(男子日本代表アシスタントコーチ)や、現役時代は素晴らしいシューターだったトムさんに見てもらって改善に取り組んでいます。『シュートは入る』と言ってもらえていますが、回転が足りないところを良くしていきたいです。大きくフォームを変えるのではなく、微調整をしているところです」

冒頭で触れたように今回の合宿メンバーは、佐土原より年下の選手の方が多い。だからこそ「どんどん若いメンバーが増えていて、アジアカップの12名に残らなければ」という危機感を持っている。

それと同時に、「今は新しいバスケを学べるというポジティブな気持ちで、落とされたらまたBリーグで実力を証明すればいい。選ばれたいという思いはすごく強いですが、追い込まれているわけではないです」と良いメンタリティを維持している。

こう思えるのも、高校時代は全国での実績がないところから東海大で中心選手の座をつかんだ経験が生きている。Bリーグでもステップアップを続けて今の地位を得た。「これまでも1年で一気に上がれたことはありません。徐々に頭角を表した結果として、花を咲かせるのが自分です。今回、まずはこうやって合宿に参加できていることだけで感謝しています。その上でロサンゼルスオリンピックは実力がついた年齢での開催となるので、一歩一歩段階を上っていければロスにも可能性がある。もし今回選ばれなくても焦りません」

この合宿中、佐土原は琉球ゴールデンキングスへの移籍が発表された。「FE名古屋には本当に感謝しています。FEでの2年間がなければ今この場に立てていません。そしてキングスはトップクラスのチームで、加入した理由の一つは優勝リング獲得です。ただ、今はFEとキングスともにA代表に入っている選手は他にいないので、FEとキングスを代表する気持ちでやっています」

まずは週末のオランダ戦で出場機会を勝ち取り、初めてじっくりとホーバスのスタイルを学んできた成果を見せてくれることに期待したい。